好きってなに?
「な?だから三人で付き合わないか?」
私が何か悪いことでもしたのだろうか?
教室の目の前で朝からとても不快な話を聞かされた。
目の前にいるこの男に。
そして、その男の後ろには申し訳なさそうな桃花先輩がいた。
「寝言は寝て言ってください」
私はそれだけ告げ、教室に戻ろうとする。
「待ってくれ!」
腕をつかまれる。
「何のつもりですか?」
「い、いやこれは……と、とにかく真剣に話を……」
「馬鹿なのですか?何が悲しくて内縁の妻になる話を真剣に聞かなくてはいけないのですか?」
「い、いやこれが一番平和で……」
「平和?私は平和なんて望みません」
「なっ!?」
男は固まっていた。
それが絶対に正しいと思っていたのだろう。
「それにそれはあなただけの平和です。そんなエゴの塊いりません」
私は後ろにいる桃花先輩も睨みつける。
「先輩も同意なのですか?それが証明なのですか?」
「!?」
「あなたは先輩を二度裏切るのですか?」
その言葉に彼女は糸が切れたように泣き出し告げる。
「わ、私……怖かったの……彼に捨てられてしまえばどこにも居場所はないからって……光にはあなたがいるから…」
その言葉に私は強い怒りを覚えた。
その矛先は一人の男だった。
その男に強いビンタをくらわす。
「恥を知ってください!!彼女だった人を脅すなんて!」
「い、いや、俺は……」
私は桃花先輩の背中をなでる。
「もう大丈夫です。あなたは居場所を失ったりはしません」
「で、でも…」
「あなたの知っている光先輩はそんな人ですか?」
「!?」
「知っているはずです。先輩がどんな人か」
彼女はポケットからイチゴ飴を取り出して見つめている。
「うん…知ってる」
私は再度、男を見て告げる。
「あなたは道を外れた行いをしようとしていました。それが岐路で選んだ答えなのですね?」
「お、俺はただ、二人が好きで…」
「あなたは薄っぺらいんですよ」
「え、どういうことだ?」
「そのままですよ。あなたはただ、気に入った人を手放したくなくて、そのプライドを天秤にかけて両方を選んだ。そんな薄い人です」
男は目を大きく開き固まる。
「そ、そんなことは……」
男は言い返せなかった。
ただの事実に過ぎなかったのだから。
「もう一度考えてみてください。それが岐路に立ったものの答えなら、きっと間に合うはずですから」
「ち、違う!俺は!」
男は叫びながら近づく。
その目は混乱していて理性的ではなかった。
それに恐怖を感じた。
「こ、来ないでください」
男は呼びかけに応じず近づいてくる。
目をつぶり私は覚悟する。
「やめろ、チャラビー」
目の前にはあの人がいた。
大好きなあの人が。
「に、西木……」
「チャラビー師匠、あんたはやっちゃいけないことをした」
「……」
男はおびえた目で先輩を見ている。
「チャラビーはだれが好きなんだ?」
「……西木……好きってなんだ?」
それは重く響く。
それに先輩は覚悟を持って答える。
「そんなのは人それぞれだ!!」
「……なんだよそれ」
「なあ師匠。好きっていろんな形がある。そしていろんな好きがある。笑う顔。おいしそうに食べる姿。寝顔。真剣な顔。意地っ張りなところ。素直じゃないところ。でも根は優しいところ。強気は弱さを隠すためなところ、などなど!!」
「それは……」
全部、桃花先輩のことですか……
その返答に少し落ち込む。
だけど、誇らしかった。
そのまっすぐなあなたが。
「つまりだ。言葉で語ろうなんて言うのは無理だ。足りない。だけど、人は言葉で伝える以外にもいろいろできる。態度、行動、意思、気遣い、配慮、何でもいい」
「……」
男は黙っていた。
「チャラビー、それを見つけて表現する方法はチャラビー自身しか知らない。もし、人を本気で好きならきっと自然と行動で表せるさ」
「……そうか」
男は私と桃花先輩に向き合う。
「すまなかった。俺が間違っていた」
「喜一君……」
「謝罪は受け取りました。もういいです」
そして彼はこちらを向き真剣な目で告げる。
「俺は本堂喜一、あなたが好きだ」
「私は牧田恵理あなたが嫌いよ」
「そうか、よろしく」
「ええ、よろしく」
その手は汗ばんでいて気持ち悪かった。
「キモ……」
「ひゅう……」
本堂先輩は膝をついて意気消沈だった。
「喜一君!?ちょっと!?彼、繊細だから優しくしてあげて!」
「あなたはママですか?」
「ママ!?赤ちゃんプレイなんてやったことないわよ!?」
「いえ、そちらではありません」
その場はカオスだった。
だが、確かに少しはいつも通りなのだろう。
これからに比べれば。
読んでいただき、ありがとうございます。
気に入っていただけたら、ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです。




