05.盗賊のアジト-01
05.盗賊のアジト-01
「ここにいるみたいだね…」
私と純たちは茂みの中からそっと盗賊団のアジトを窺う。
少し開けた場所の中央に建物と、その周辺に見張りの盗賊が
何人もいるのが見える。
「さて、どうやって乗り込むか…」
晶たちが悩ましそうに話していると…
「お邪魔しまーす!」
純が軽快な足取りで真正面から乗り込んでいった。
「お邪魔しないでー?!」
私が思わず慌ててツッコんで止めようとするもあっという間に
盗賊たちの元へといった純。
「な、なんだてめぇは?!」
盗賊たちがどよめく。
「はっはー!!勇者眞壁純、華麗に推参~♪」
純が盗賊たちの前でなんだか変なポーズをとったかと思うと聖剣を取り出し、
盗賊たちをいとも簡単に倒してしまった。
やっぱりさすがは勇者…なのかな。
「さあ、お宝探しに行くぞー!」
ダンジョンにでも行くように意気揚々と盗賊のアジトへと乗り込む純の後を
呆れ顔でついていく私と晶たち。
盗賊のアジトへ入ると建物の中からわらわらと盗賊たちが現れた。
中に一人、何から風貌の違う人がいる。…親玉かな?
「おい、お前ら。俺の子分を可愛がってくれたようじゃねぇか~?
あぁ?」
「お頭、こいつら例の勇者一行ですぜ!捕まえりゃいい金になりますぜ、
へへっ…!」
お頭と呼ばれる人がこちらに余裕そうな笑みを浮かべると、そこに盗賊の
一人が近寄りニヤニヤしながら話しかける。
「ほぉ?…よく見りゃ、これまた随分と良さそうな上玉も
いるじゃねぇか?」
盗賊のお頭が私を見て下卑た笑みを浮かべている。…うわ、気持ち悪い。
「お嬢ちゃん~? 大人しく俺らに捕まりな~?
な~に、悪くはしねぇよ。まあ、ちょ~っと、我慢してもらうかも
しれねぇけどなぁ~?」
他の盗賊たちが次々に下卑た笑みを浮かべ、じわじわとこっちに
近づいてくる。…いや、来ないで、ほんと…気持ち悪い。
「は?お前らいい加減にしろよ? ひなたに指一本でも触れたら
その腕叩き斬ってやるからな?!」
純が私をかばうように前に出て、聖剣を盗賊たちに向けて牽制する。
「その威勢がどこまで続くか見ものだな?おい、お前ら、来い!」
お頭が合図をするとあちらこちらから次々に盗賊たちが集まり始める。
あっという間に大勢の盗賊に囲まれた…。
「この中でもその女を守りながら戦えるのか?兄ちゃん。
試してやるよ~」
お頭と盗賊たちが一斉に私たちへと攻撃を仕掛けてくる。
私と純たちはそれぞれの武器を構えて迫りくる盗賊たちを迎撃するが、
数が多く、なかなか攻めきれない…。
「大人しく俺たちのものになりな、お嬢ちゃん」
お頭が私の腕を掴んで下卑た笑みを浮かべる。
「っ?!?!」
それを機に一斉に盗賊たちが私を捕まえようと襲ってきた。
「ひなたー!!!」
純が叫んで向かおうとするが他の盗賊たちに囲まれて思うように向かえない。
あぁ…あぁ…もう知らない!!やってられない!!
両手を前に突き出し、魔法を詠唱する。
「青き氷刃よ…立ち塞がりし全ての敵を穿て…」
足元に魔法陣が浮かび上がり、冷気の帯が螺旋を描いて吹き出し始める。
私の周囲の空中に無数の氷の刃が形成されていく。
「アイシクルストライク(氷柱流星群)!!」
無数の氷の刃が盗賊たちへと一斉に放たれる。
「うわぁあああ!!!!」
盗賊たちが叫びながら慌てて逃げ惑う。ほとんどの者が床へと倒れ込んだ。
お頭も例外ではなく、床に倒れ込んで震えながらこちらを見上げている。
「ヒュ~♪さっすがうちの期待のエース♪」
純が口笛を吹いて私をニヤリと見つめる。
「さすがひなただ」
晶たちも感心してこちらを見ている。
盗賊たちとお頭はすっかり私の魔法に恐怖を覚えて震えあがり、
倒れたまま起き上がれないでいる。




