04.純はエリアボス?
04.純はエリアボス?
純たちとともに街道を進み、その先の森へと足を踏み入れていく。
鬱蒼とした木々の間を進んでいく。
なぜか急に純が唐突にある木へ駆け出して登り始めた。
「おい、アホ…お前はなんで急に木に登ってんだよ…」
呆れ顔で純を見て晶がため息をついた。
「いや、あれ見てって!あそこにツノの生えた兎みたいなのいるじゃん!
むっちゃファンタジーっぽくね? 捕まえてみんなに見せてやるよ~♪」
木の上の方を指差した純は意気揚々とさらに木を登っていく。
純の登っていくその木の先を見やると、確かにそこには木の枝に
ちょこんと座っているツノの生えた可愛らしい兎のようなものがいた。
…しかしどこか見覚えがあるような。
「…ホーンラビット。…毒持ち」ふと思い出してぽつりと呟く。
「えぇ?!毒持ちだって?!」
晶たちが私の言葉に驚いてこっちを振り向くと、
慌てて純を見て晶が「おい、バカ!早く降りてこい!!」と叫んだ。
「え~?マジ、毒持ちなの?俄然欲しくなったわ~」
より喜々として木の上へと登っていく純。
「純~? 毒くらうと結構くるよ~?精神的に。」
「へへっ、さあ、大人しく俺に捕まれよ~?可愛い兎ちゃん♪」
私の言葉を聞いてか聞かずかホーンラビットに手を伸ばす純。
「聞いてないね…うん、今日も通常運転だ、純は。」
呆れ顔で純を見つけてため息を漏らす私。
「あいつはまた…ほんと懲りないな」
晶が頭を横に振って呆れ顔をする。
「…ホーンラビットは特性上、群れで行動している。
あれがいるなら、仲間も近くにいる可能性が高いだろうな…。」
律樹が無表情で純を見つめながら淡々と口にする。
律樹の言葉に私は辺りを見回してみると、複数の近くの茂みでガサガサと
何かの動く音が聞こえ始める。
「純~!!近くに複数体いるよー!!」
叫んで純に教える。
「おっ、マジで? なら親分いるかもな?
よーし、そいつ捕まえよう♪」
木の上のホーンラビットを捕まえて手に掴み、意気揚々と言う純。
「むしろ…他のホーンラビットがお怒りモードになりそうな光景だなぁ…」
純のその姿に呆れと嫌な予感を抱いていると、突然、近くの茂みに隠れていた
複数のホーンラビットたちが一斉に木の上の純へと飛びかかっていった。
「あ~ぁ…ほらぁ…」
あっという間に純のいる木の上へ到達したホーンラビットたちは
そのまま一斉攻撃を順に仕掛ける。
「ぎゃぁあああ!!! 俺がここのボスだぞー!!従え者共ーー!!!」
ホーンラビットたちの攻撃を受けながら純がまた変な言葉を発している…。
「あー、うん…純がここのエリアボスだったのか~そっか~」
なんだかやる気ない感じで言いつつも純のおふざけに乗っかる私。
「おい…あいつがエリアボスなら、俺たちはさしずめその下っ端か?」
呆れ笑いをしながら晶がおふざけに乗ってきた。
「そだね~。取り巻きじゃない?」
お茶目に言ってさらにおふざけする私。
「…なら、取り巻きらしく、俺らはボスを助けにでもいくか?」
律樹も微かに微笑んでお茶目に言って便乗する。
「そだねぇ~…」
やる気なさそうに純を見上げる私。
「しかし…あんな可愛いのに、やるのか?」
秋平がホーンラビットたちを見つめて躊躇うように言う。
「…可愛いは正義。」
悠がなぜかさり気なくそれに便乗する。
「もー!うちの男どもはー! いいから純を助けに行くよー!!」
ため息をつくと衣織は純の元へと駆けていった。
「あっ…でも、怒りモードだと毒針飛ばしてくるかも…」
と私が言ったのもつかの間、純がホーンラビットたちの毒針の嵐に見舞われる。
「うぎゃぁあああ!!毒針は卑怯だろ、このやろう!!!」
「そもそも純がホーンラビットを捕まえちゃうからじゃない…」
叫んで暴れる純を見てため息をつく私。
結局、私と晶たちの総攻撃によりホーンラビットたちは全て倒された。
事なきを得た(?)純が木から何とか降りてきてやれやれといった様子で
近くの切り株に座り込み…
「ふぅ、今回も無事、俺たちの勝利だな!みんな、お疲れー!」
「なに、やりきったみたいな顔してるのかな?!
やらなくてもいいことを増やしたのは純だよね?!」
思わずツッコむ私。
「それはそれ、これはこれ!勝ったんだからいーじゃん~。
それに、俺の活躍のおかげで少しは緊張がほぐれたんじゃない~?」
「…純~♪ 毒、くらってみる?」
お茶目に言う純に、にこりと微笑んで詠唱を開始する。
「いやいやいやいや!!冗談だってー!!
マジでごめんてーひなたぁ~~~!!!」
慌てて立ち上がってペコペコ謝罪する純。
「あはは、でも本当にお疲れ様、みんな」
衣織が笑って言う。
そんな冗談を交えた後、ホーンラビットの戦利品を回収して
私と純たちはさらに森の奥地へと向かった。




