09.魔王城前の戯れー01
09.魔王城前の戯れー01
「うちのひなたは最高だな」
「…そうだな」
晶が感心して、律樹がそれにうんうん頷いている。
「ほ~ら、純。早く出ておいでよ~?」
衣織が地面の穴の中にいる純に声を掛ける。
「ふぅー!!ひなたぁー!!マジ最高!!!」
穴から飛び出してきた純が私に思いきり抱きついてきた。
「うん、良かったねー…」
棒読み気味であしらう。
「ひなた、ありがとうー!!愛してる!!!」
ガン無視でよりぎゅっと抱きついてくる純。
純は全然私の話聞いてなさそうだなぁ…今日も。
「はいはい、そこのバカップルどもー。もういいから、これからのこと
考えようぜ~。」
呆れ顔で晶がこっちを見て言う。
「カップルじゃない」軽く否定し「…これからって、魔王城に
入るかどうかってこと?」
私たちのいる草原の奥の方にそれはあった。いつの間にかこんなところまで
来ていたことに今更気がついた。
「当然入るっしょ!!さっきのひなたの魔法の…なんだ?
トルネードクラッシャー?あれで魔王城壊して入ればいいじゃんー♪」
ワクワクしながら純が物騒な発言をする。
「魔王城を壊して入る勇者はさすがに聞いたことないなぁ…」
呆れたように言う私。
「バカ野郎!!そんなことしたら魔族どもを一斉に敵に回すことになるぞ!」
「…無駄な争いは避けるべきだな」
純に怒鳴る晶と呆れる律樹。
「とりあえず、魔王城周辺の魔族たちだけ倒して回るか?」
秋平が考えながら話す。
「様子見?いいんじゃないかな?それでも。」
私が頷こうとした時…
「ダメ!!!純とひなたがそんなことで納得するわけない!
きっと魔王城に入って暴れ回りたいはずだよ!!」
急に大声でそんなことを叫ぶ衣織。…はい?
「ちょっと衣織?!私、純と同列?!」
思わずツッコむが…
「え?なんで?? 純とひなたは一心同体じゃん!!」
キョトンとして悪気なさそうに言う衣織。
「意味わかんないこと言わないで?!?!」
思いきりツッコむ。
「でもひなた。純とは違うけど、君もよく純みたいなことしてるじゃない。」
悠が考えるようにして言う。
「いやいやいや?! 私は奇行してないでしょ?!」
慌てて否定するも…
「いや、ひなた。お前もかなりぶっ飛んでると、俺は思うけどな~?」
晶も参戦してくる。
「もー!! みんなヒドイーーー!!!」
大げさなリアクションで私はわざと駆け出していく。
「おい、ひなたーーー!!! 待てってーー!!!」
純が叫んで追いかけてき、その後ろから晶たちも追いかけて走ってくる。
夢中で駆けているといつの間にか魔王城の周辺まで来ていた。
辺りには魔族たちの姿が見え始める。
「八つ当たりしてくれるわーー!!!」
走りながら私は両手を広げて構えると
「多重詠唱…ホーリーランス!!」
周囲に多数の魔法陣が形成され、空中に無数の輝く聖なる槍が出現し、
魔族たちに向かって雨後の筍のように降り注いだ。
「…すげぇ」
呆然とその光景を見つめる晶。
「すごい、すごい!! ひなた、めちゃくちゃカッコイイ!!」
はしゃぐ衣織。
「…こんな魔法、初めて見た」
驚いて呆然と見つめる悠。
「さっすがひなた!! 俺の嫁は最高だぜ~!!」
興奮して走り回る純。
「…いや、しかし…あの二人がくっつくのはさすがに想像できないんだが。」
残りの魔族たちを殲滅しながら呟く律樹。
「俺も」
律樹の傍で魔族を倒しながら同意する秋平。
晶たちがそんなことを話しながら残りの魔族たちを倒して回っていく。




