#1 殺し屋が多すぎて食事もできないぜ
千人目の殺し屋はフォークで頭部を刺して殺した。すでに息絶えている。
俺はミートボールを刺すつもりだったのだが、急にナイフを持った殺し屋が襲いかかってきた。だから、サッとかわしてテーブルを叩きつけてぶっ刺した。
「死ねっ! スカンタン!!」
新たに入店してきた黒ずくめの男が俺の名前を叫びながらマシンガンで連射してきた。俺は死体をどかす勢いでテーブルを楯にした。大理石で出来ているから、そう簡単には壊れない。
「隙あーーーり!!」
しかし、隠れている最中に裏口から新しい巨漢の殺し屋がやってきた。そいつは槍を持っていて、俺を突き刺そうとした。 フォークで槍を地面に突き刺し、引っこ抜いて殺し屋に送り返した。しかし、巨漢は思ったほど身軽でヒラリとかわすと、そのまま突進してきた。
フォークの先を頭頂部に突き刺した。巨漢はバカうるさい悲鳴を上げ、俺は奴の身体を持ち上げた。
「出てきたっ!!」
黒ずくめはすかさずマシンガンを連射した。俺はしゃがむと同時に巨漢を投げた。
「ふぐっ?! ぎゃはっ?!」
黒ずくめらしき悲鳴が上がり、テーブルだけせはなくぶら下がっているワイングラスや天井に銃弾があたった。そして、静かになったタイミングでテーブルから出た。 入り口が巨漢で塞がっていた。その足元には黒ずくめと思われる革靴とマシンガンが落ちていた。 俺は弾が残っているのを確認し装填させた。
「いたぞ!」
「殺せ! 殺せ!」
だが、またしても裏口から複数人の殺し屋部隊集結していた。俺は奪ったマシンガンでそいつらを蹴散らしていった。 全員即死させた後、奴らが持っている武器を持てるだけ回収して店を出た。
全く久しぶりのミートボールスパゲティはミートボール一個で終わっちゃった。
*
俺の名前はスカンタン。殺し屋だ。この四十年の人生の中でどれだけ人を殺したのかは皆目検討がつかない。ついたあだ名は『疫病神』。
普通『死神』とかカッコイイ感じに名付けられると思うだろ?
俺は同業者に嫌われているんだ。百パーセント依頼を達成するし、ミスはしない。それに警察が大勢いても蹴散らすことができる。暗殺料も他の奴らに比べて安いからバンバン依頼が来る。
だから、殺し屋委員会は俺を賞金首にした。俺以外の奴らの仕事を守るために。 かけられた懸賞金は百億。それに人類最強とうたわれるほどの実力を持つ俺を殺せば有り得ないほどの名誉も得ることができる。 だから、世界中の殺し屋や組織が俺の首を取ろうと襲いかかってくる。朝から晩まで。寝る暇もない。
最後にまともな人としての生活をしたのはいつなのかも覚えていない。新品のオーダースーツが奴らの血肉でべったりくっついていた。 早くこの生活から抜け出さないと。そのためには殺し屋委員会の本部に行かないといけない。そこのボスに直談判して俺の賞金をなくしてもらうんだ。
もしうまくいかなかったら殺して俺がボスになればいい。まぁ、うまくたどり着けたらの話だけど。 殺し屋委員会の本部は島にある。だから、船に乗らないといけない。その船はどこにでもある船ではなく、ある秘密の場所にある港でしか現れないのだ。
その場所を俺は知っているので向かっている訳だが、うっとうしいほど殺し屋が襲いかかるせいで全く進まない。 こうして道路を歩いているだけでも数十人殺した。まだまだ増えるだろう。
秘密の港に向かうには電車に乗らなくてはいけない。その最寄りの駅が不幸にも徒歩二十分かかる。バスに乗ろうとした事があるが、乗客全員が人形で自爆型の殺し屋に何度も爆破されてひどい目にあった。 だから、徒歩で向かう。駅に着くまでの二十分は途方もなく長かった。