回想からの、ロボコンまあまあの危機。
あれ?今思い返してみれば、今迄はロリコンって呼ばれてて?さっきは?え、シスコン?なんだよやめてよシスコンとロリコン二刀流させないでよもう。
《回想》
赤子が、無防備に泣いている。閉ざされた弱々しいその瞳には、僥倖を願う気配もなかった。
空疎に等しい籠の中で強風に揺らされて。
学園の中に放置されていたその弱々しい命が、西へ向かおうとする一つの命を救った。
2145年。12月中旬。
天枢学系超学園———制裁委員会専用処刑場。
「———殺せ!おい、命令だ!"星呼"!」
名前だけでも麗しく感じる、星呼という名が呼ばれたと同時に、地獄に等しく鼓膜に突き刺さるような怒号が処刑場に響く。
「は、はい———お父様。」
犯人は目と鼻の先———では無かったのだ。無かったのに、感じれるはずの無い、無と諦めの感情が完璧に伝わってきてしまう。このレバーを引くだけで、相手はどうなるだろうか。間違いなく人間が見るべきでは無い様が披露されてしまう。
———そう、人間が見るべきでは無い。同類が殺されているところを見て、喜ぶものなど狂人に限るだろうから。
だが、星呼は?
2100年以降に発明された、人間と等しい感情と脳の構造を持つ自立型AI。それか星呼そのものである。
人間に等しい感情を持っている、人間と判断できるほど等しい構造をした脳も所持している。でも、AIという事実は変わらないだろう?
AIにとって人間は同類では無い———当たり前だ。
だから、このレバーを真顔で引いて見せられるし、その犯人に対して罵倒を喰らわせながら引くこともできるのだ。
(何度やっても、何度やっても、人を殺すのは、、、怖い。)
執事を思わせる服装で体を纏う、闇を持たない真っ黒の髪を臀部まで続かせる女性。今、彼女はレバーの前で立ち尽くしていた。
体感3秒。実際10秒。の地獄に立たされた彼女は、いかにも人間らしく涙目になってみせる。
自分の手で、人を殺すのだ。ほら、このレバーを引くだけでゲートの人口が一人減る。犯罪者だろうが、ゲートの治安を引き裂く者だろうが、家族、親友がきっと居た。その人達は、絶望するのか、それ否か?もし自分がこの犯罪者を殺して見せて、本人の親友や家族に偶々巡り合ってしまったらどうする?どんな顔を向ければいい?
人間でも考えないような否定的な情念が拡散されて行く。到底、AIからは考えれない脳内だ。
「必ず、果たします。」
機械的な、速やかな処刑を。
彼女がレバーを握ったところで、父上からの怒号はようやく止まる。
———引いた。
「、、、死んだ。」
乾いて、乾き切って、蚊の飛ぶ音よりも小さい声で。
「、、、次はもう少し速やかな処刑を期待してるよ。星呼ちゃん。」
現場にいた橋田さん。処刑場の最高責任者。いかにもという見た目だと当時は想像していたが、意外に都会に馴染む格好をしている。勿論、髪も染めているし。なんだが自由な雰囲気を纏っていて、時に羨ましくなる。
「は、はい。すみませんでした。」
、、、今はまだ廃棄されていない。それだけでも幸せだと思おう。
処刑場では心は真っ暗だったというのに、処刑が幕を下げた後は嫌に心がスカッとする。こういう自分が嫌いだと、彼女は自虐するような言葉を自身の心にぶつけた。これが、星呼にとっての日常だ。
学園の廊下を足音を消して歩いている時。
———赤子の声がしてくるのだ。自分の足音が無音に等しいのが原因なのか、周りに人がいないからなのか。甲高くありながら弱々しい鳴き声が鼓膜を刺すようにはっきりと聞こえてくる。
———もし星呼の周りに人間がいたら、星呼の行動にはこう思うだろう。
AIなのだから、AIらしい規則的な行動をしてほしいと。
誰も、窓から外に出ろなんて命令していない。
(赤子!?こんな寒い中で、、、死んでしまう!)
星呼は飛び出した。逃走ルートにも非常ルートにも選ばれていなかった平凡な窓から。
当たり前だが、星呼を止めてくれる者はいない。周りに人間がいないから。
星呼という女性は今、学園から飛び出し、誰かに絶対的に従うべきAIという立場からも抜け出した。この瞬間だけは、自由になれる。
付けられた肺が悲鳴を上げる程走り走り、やっと"そこ"にたどり着いた。
(赤子、、!可愛らしい!)
星呼は初に目にした赤ちゃんという存在に歓喜して、腰に手を添えて高い高ーいをしてみせる。その動作は誰かに教わったわけではなく、自動的に入っていた脳のプログラムからきた行動だ。、、、彼女の場合は、例外かもしれないが。
「あひゃ、あひゃひゃ。」
「うわっ可愛いー!」
掲げられた赤子は可愛らしく声を絞って、星呼に義務付けられた敬語という存在を奪って見せた。
完璧に可愛いである。星呼は心の中で可愛い可愛いと謳い、抱きしめてもみせる。
「監視カメラが何を捉えたと思えば、、、廃棄予定AIの勝手な行動ですか。」
星呼の心臓は、キンっと軋んで、痛んだ。
、、、もう、思い返さない方がいいだろうが、回想というものはやるだけやったら止まらないものだ。誰か止めてくれないだろうか。
「おい、おーい!!寝てる場合じゃ無いんだぞ!?」
「ハッ!!」
星呼は目をかっぴらいた。
「あいや、そんなに驚かなくても———じゃ無いじゃ無い、お父様に叱責されるかもしれないんだぞ!?アイツが逃げたせいで!立て続けにここ近くのビルがどぉーんと倒れたし、もうどうすればいいんだ!」
「姫様、、、ご安心ください!ロボコン様の懐に、GPSを装着していましたので。」
「おお!マジ!?」
姫という身分から抜け出した自由な言葉遣いで、姫様はガッツポーズをしてみせる。
星呼はポケットから取り出した端末でロボコンに付けられたGPSを辿る。
「ビル屋上、、、一体何を?」
「場所分かったか!時間がない、激おこぷんぷん丸のお父様に怒られないようにちゃちゃっと捕まえるぞ!」
「———本当は?」
「捕まえて帰ってきてもどうせ怒られるんだし、、、ここからちょっと逃げ出そうと思う!」
姫様の可愛らしい悪戯顔。昔から何も変わっていない。
「、、、同感です。」
どうも。赤松です。この作品以外のお話です。
気分転換に、ちょっとした短編を上げてみようかなと思っています。よろしくお願いします!




