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青空99%  作者: 赤松
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指揮官ー!助け方分かんないから頑張って着地してぇー!頑張ってぇー!」

 二度目の救世主が来た!と舞い上がっていた俺の心は、塵となり消えた。

 nayの頼りない上に大きい声量でそう言われた。この状況で頑張ってと、言われても。

 、もうダメだこれ。

 ———あ、当たる。

 ゴツッ

 グロくも気持ち悪くもない、微妙な音で、


 ———俺の人生は、終わった。


「本っっ当に意味わかんない死に方したねー、アニメだったらいい展開だったんだけどなー」

「あー、そうっすねー。」

 俺と、目の前にいるろり、少女は、平凡なビルの屋上に座っている。俺は正座して少女を見つめ、その少女は百均の椅子に座って俺を見下すが如く見下ろしている。

「えーと、これはどういう状況、?ですか。」

 俺は死んだ。

 それは分かる。地面に衝突する瞬間、まるで胸を焼かれる痛感よりも酷いものだった。そんな辛い一瞬を乗り越え、瞬きの間に、こんな状況にワープしている。

 しかしこうして見下ろされていても、謎に悪い気はしなかった。だって彼女は、

 ———頭がスピーカーになった、異形頭だったからだ。

 つまり俺の仲間だ。親近感と複雑な気持ちが襲ってくる。右肩を通るストラップでギターを支え、腕やら足は全てメカで包装されていた。例えれば甲骨動物みたいな、いや、メカ少女に似たと言った方がいいな。そのスピーカーからはやけに楽しげで雑音の入った言語が吐き出される。

「どういう状況っかー、今送り出しRTAしてるから3分で終わらせようね!取り敢えず君は死んでー同じ世界に召喚された訳だけど、前とは違って立場が違うの!貴方にはー、」

 

「この世界の黒幕になってほしい!」

 

 

 ———この世界の、黒幕?

 予想より斜め上のもっと上の斜めの回答が返ってきた。そもそも予想もできなかったのだが。

「黒幕、というより、悪役かな?いやどっちでも合ってるかも。」

 少女はメタル製の手をスピーカーの顎部分に当てながら言う。

「ちょっちょっと待ってください、黒幕になれってどういう事ですか?」

「うーん、この世界の黒幕は、君の人生で追い求めてきた、あれだよ?謎災害の黒幕!それを君が請け負うの!そゆことそゆことー」

 謎災害の黒幕を、俺が請け負う?

 おかしいおかしい、謎災害の真実を追い求める為、今まで努力して準備している黒幕討伐までの譜面はどうなるんだ?全部無駄になるのか?

「ゆうて黒幕っつってもー、唯普通に生活すればいいだけなんだから、大丈夫大丈夫!」

 何も大丈夫じゃないよ。

 名前も知らないけどぶん殴りたいこの人。

「取り敢えず、聞きたい事が多すぎて、黒幕って、正義のみんなから狙われる、というか、最終的に抹消されちゃうって事ですよね?請け負うって言ってましたが、今迄の謎災害の黒幕って———」

 はいはい、と適当な少女の相槌で俺の質問は遮られた。再開しようと息を吸ったが、

「分かりやーすく説明するとね?今までの謎災害の黒幕ってのはね?用意されてなかったのよ。みんな不自然だーとか、黒幕がーとか言ってるけど、全て、名前のないなにか。私たちにも分かんないんだ。でも、この世界は我儘だからね、なにかって言葉じゃ終わらせてくれないの。この世界には悪役がいるって。それが貴方の役。いやあー、立派な仕事してるわ自分、今まで異世界転生の送迎しかしてなかったけど、まさか黒幕を押し付ける事になるとは!うへへっ」

 この人は、自分が完璧に説明できてると思っているのか?俺はなるほどわからん状態だぞ。

「、、、じゃあ、神じゃないって事ですか。この世界の黒幕。」

 後悔、絶望。

 少女の話を聞いて、咄嗟に出てきた質問だった。

 今まで信じて追い詰めてきた者が、今淡々と投げ出された。

 なにか、?ふざけているのか、なにかって。

 沸々と怒りが湧いてくる。別に、これだけに怒ってる訳じゃないんだ。

 この世界の黒幕になれ?

 それがまずおかしい。

 俺は正義にいたい。いつだって、正義の人と堂々話せる立場にいたい。

「んー、君の考えてる事は分かるよ?黒幕になったら、誰かに恨まれ、殺されたりするんじゃ無いか、って。今までみたいに正義として生きたいって。」

 俺の気持ちをそのまま代弁してくれた。その通りだ。黒幕になれなんて、どんな賄賂があろうがなりたく無い。

「———でもね?この黒幕は、空想でよく見るもんじゃないよ。最っ高に、"楽しい黒幕"なんだから。ほら!行ってらっしゃいー!」

「楽しい黒幕ってなんですかー!!!」

 胸部を、ドンっと押された。それは僅かな力だった筈なのに、俺の体はまだ空中に滞在している。それよか高度はさらに高くなっている。

 俺は少女にビルから突き落とされながら叫んだ。

 黒幕って、なんだ?

 そして結局、あの質問には答えてくれなかった。

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