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青空99%  作者: 赤松
4/5

激熱展開真っ最中。

 ビリビリビリッ

 と、目の前には大型テレビぐらいのスタンガンが、俺の頭、デジタル時計を直視し、着々と腹立つ速度で向かってきている。

「まずは頭をスタンガンで感電させ、後で頭から全身に水を被ってもらいます。あとはまたスタンガンでビリビリ、と。」

 その執事の一言一言に、俺による何気ない殺意が込められていることが感じられた。サイコパス過ぎること言ってるこの執事。

 そしてそのスタンガンの持ち手を必死に右肩に乗せ、引き攣った顔で俺の頭ををビリビリってやろうとしてるのが、ムカつくほど可愛らしい姫様って人。

 人って呼ぶのも嫌気がさすほどヤバい事をしている。この人達。

 そして俺もヤバい。何でこんな状況で人の事観察してるんだよ。どうしよう俺死ぬじゃん。

 椅子に座って、足首から首元まで縄できっっっちり結びつけられてる俺の体は、動こうとも動いてくれない、ギギっと頼りない音を立てるのみだ。

 ああ、誰か助けに来てくんないかな。

「ふ、、、ふんっお前、今更誰か来ないかな、って願ってるだろっ、それは、ふうふう、無謀な、考えっだ。」

 姫様は息の篭った声を必死に絞り出している。このスタンガン、こんなに重いのか?

 ———俺は正直諦めている。

 転生するなら、、、ファンタジーがいいな。都市とかトラウマになっちゃったかも。

 冒険者になって、ギルドを作って、お金を稼いで、お酒を飲んで、ゴブリンと戦って、、、。

 そんな平凡なファンタジー世界を、俺は謳歌したい。そう理想を語っていると、

「姫様、もうぼーんと、投げてしまう勢いでいいのでやってしまいましょう。」

「やろうとしてる!でも、、、重いんだよこれぇ、」

 この二人の会話が怖くてたまらない。ぼーんってなんだよぼーんて。

 俺のカメラははっきり横に流れる電力を映している。それは徐々に近くなり、

 ———あ、死ぬやんこれ

 まって、ちょっとまって、。

 本当にちょっと待って欲しい。迫り来るスタンガンに意味なき要求を出す。周りを見渡したいが、頭を動かすと、時計の端が電流に当たって一発アウトなので何処も向けない。

「あと少し、、、っあと少し」

 いやあと少しじゃん———


「お、にいちゃーん!!こんにちはー!!」

 

 窓張りのガラスが盛大に割れ、ぶちまけられるのを俺は見た。そして主人公の様に空中にガッツポーズのまま、そこに映っていたのは、

 ———俺の実の妹。ラクピーだった。

「ら、ラクピー!?」

 俺は呆気なく大声で放つ。

 ラクピーー!俺の愛しの妹、、、シスコンになってしまうな。だが、

 本当にありがとう!!救いに来てくれたのか!

「はあい!?なんだおめー!?」

「邪魔者が来ましたね。」

 この二人の発言はどうでもいいんだ、助けが来た!助けが来たんだ!

「お兄ちゃんが死にそうだから助けに来たよー!お姉ちゃん達———早めにくたばりやがれゴミが!!!」

 その発言を最後に、ラクピーは地面に着地する。

「ゴミが!?今ゴミっていいましたのこいつ!?」

「相手はやる気の様です。ぶち殺しましょう」

 ああ、これが俺の妹の悪いところなんだが、ラクピーは感情が強くなってる時は、凄い口調が変わるんだ。悪口の幅も広がる。、、、執事の発言も見逃せない。

「てめえら何勝手に俺の兄貴殺そうとしてんだよ面貸せやゴラァ!!」

 と、ラクピーは相変わらずの言動で桃色のライトセーバーを右手にぎゅっと握り、

 俺の方に一直線に向かってくる。

「お兄ちゃん!今解放するよ!———糞てめえらは引っ込んどけ!」

 解放、と言う言葉を聞き俺は解放された気分になる。まだされてないのに。

「おらっ!」

 ライトセーバーからは中々鳴らない、チャキンっという音で俺を結びつけていた縄は、胸から引き裂かれた様に分かれた。

 ふわあっと舞う数々の縄の先端が、俺に勝ちを謳った。

「待て!やめろ小童!!」

 姫様はそう一直線に俺の方に走り出す。

 申し訳ないが、俺は全力で逃げる。

 だが、何処へ逃げようとしているのか自分でも分からない。唯、ラクピーの後をついて行っているだけだ。

 ———ちょっとまてよ。

 ここの先、、、なんもなくないか!?

 なんて晴天!"窓がない"からはっきり見える!

「あそこから飛び降りようお兄ちゃん!行けるよね!」

 飛び降りる!?

 ラクピーに中々の力で手を引かれる。

 妹に手を引かれたなら———行くしかないか。

 俺の本能が叫ぶ!そのまま行けと!

 それにしても処刑場は大きい。今全力で走って、目的地も見えているのに、手の届かない場所に感じる。でも走るしかない。走れ俺!!

「待て!行くな!おい!頼む!」

「姫様!その先は危険です!」

「だめだ!行かないと、また、失敗になる!もう失望されたくないんだ!!」

「っですが!!」

 背中からこんな会話が聞こえる。微かな罪悪感が俺の心の中に湧き出てくる。だがそれは、一瞬だけの出来事だった。

「行くよ!お兄ちゃん!」


 ———飛んだ。


 足が踏み場を無くし、赤子の様にジタバタ動く。何もかも安定していない。

「凄いよ兄ちゃん!すっごーい景色が綺麗!」

「、、、景色、か。」

 地平線の先まで続きそうなビル群が、俺の掌の中にあるのでは、と思わせる程見渡せる。

 ———こんなに綺麗だったんだ。

 飽きる程見てきたこの景色は、俺の心を魅了する程、透き通っていたんだと、今更教えられた。もっと落ち着いた場面でこの感情を味わいたかった。と微かな後悔が頭をよぎるが、そんなことはどうでもいい、と振り払う。

 ビルのガラスは雲一つない青空を反射して、絶体絶命の俺らに、今、こんな空だぞ、と見せつけている様だった。

 完璧に魅了されちゃったかもしんない。この空に。

 そんな時、感じたんだ。

 青空達が、こんなクソッタレな世界の救いだと。

「お兄ちゃん!いい感じの所悪いけどもうちょっとで地面だよ!どうする?」

 、、、え?

 なんも考えないまま飛び降りたの?

 足先からビリッとした痛さが、波紋の如く広がる。

 どうしよう。俺は下へとんでもない速さでスクロールしていく視界に危機感を抱く。気づけば、地上の店の看板の文字が分かるぐらいには落ちてきてる。簡単にいうと絶体絶命だ。

「えっあっどうしよう!?えっちぬの俺」

「大丈夫だよー!知らんけど」

 我が妹!知らんけどじゃない!責任とれ!!

 あ、地上の人達にはなんと思われているのだろう。撮影とかされてんのかな。だめだ。変なことしか考えれない。青空に魅了されていた俺の心は何処かへ飛んで行った。

 そう頭ん中がぐちゃぐちゃの時。

『ロリコン指揮官!!!』

 安心感のある声が、重なってそう呼ばれた。俺をこんな名前で呼ぶ奴らは、あいつらしかいない。

 二度目の救世主が、来た。

最後まで読んだくれて本当に有難うございます!

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