表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青空99%  作者: 赤松
1/5

ゴットゴットゴットゴット!!!

「すごい!!ナンが走ってるー!」

「ああー、そうだな」

 誰かが心臓を高取らせながらそう言い、誰かが答える。

 面積100キロ以上、一つの国とも言っても過言じゃ無い一つの星の巨大都市———ゲート

 地平線の先まで広がるビル群の各ビルには、

 

 この"世界を表す悲劇が刻まれていた。"

 

 もしこの世界がずっと青空だろうと、世界は闇の方向に進んでいくのだろう。

 と、とある高層ビルの最上階で、裏の組織の悪役の如く明後日の方向を見つめている、ある時計の男性は感じる。

 解明すると———

 キリンッ ザザザゴゴバリバリバババガッシャーン、、、

 突然。

 ありったけの大騒音をたて、

 ビルの上半身が崩れ落ちた。

 それはそれは物凄く褒めたいほど端正にビルの中央真横に切り裂かれていたのである。

 キリンッと音を立てたのは、ビルを崩壊させる工程の一つであり、亀裂は勿体無いほど黄金に輝いていた。

 そして間も立たずビルは地面に倒れ込む。まるで月が切られたような、大騒音と共に。

「あああー!!ナン達がつぶれちゃったー!」

 そう喚いているとある少女———ラクピー

 は、先程までビル群が挟む道路で駆け回っていた前と後ろに対2本足を生やすナンと言うナンを失くし、勝手に悲しがっていた。

 その謎の生命物体を説明すると、

 ナンを上から見るとしよう。上半身の横に二つ並ぶ、機械製の腕が生えており、それは下半身も同様である。

 たまーに筋肉がついていたり、図体(生地)の大きさは個体差だったりする。もしこんなのが大群で襲ってきたら、その現場は修羅場と化すだろう。

 ラクピーという少女の容姿、長いポニーテールが彼女のチャームポイントであり、その髪は派手にロールになっていた。髪色は水色に白のインナーカラーが愛おしい顔を脇立たせている。

 不真面目とまでは行かない、なにかのサインが入った腰までのジャケットに、白いシャツ、下は膝下まである黒を基調にしたスカートを纏わせていた。

 天然らしく、年齢は二桁にも行かない少女の言葉遣いとは裏腹に、見た目はチャラい、と言うか、そう言う見た目だ。

 

 確か、ナンは六体ほどいた。

 大きいバランスボール程までのサイズのナンが、気持ち悪くポポポポ、と気泡音なのか、鳴き声を放ちとんでも無い速さで都市を駆け抜けていた。

 なんだが気持ち悪く感じるが、これがこの世、ゲートの日常だ。

 そして、ビルが切られるのも、ナンやら車やらが腕足を生やし走り出すのも、、、

 

 

 

 

 

 

 ————全部、神のせいなんだ

 

 

 

 

 

 

 この世には、神が存在する。

 宗教に纏わる話とかではなく、現実の話である。

 神が存在する事については何も言い出しも手出しもしない、特に問題は無いからだ。願いを叶えてくれると言うのは童話等だけの話で、神様はいつも私達を見守ってくれてる、とかは幼児でも信じるか信じないかのラインを超えたり引いたりしている。

 つまりで言うと、神と言うのは、大人しかったのだろう。

 

 前までは———

 

 時代は多少遡る。

 現在は2160年。

 遡った先は2098年

 あともう少しで2100年を迎える準備を人類がし始めた時。

 特に重要視されていなかった神という存在が、"彼"の中で一気に目の前に来た。

 

 神は 暴れまくった。

 

 何ぜ神が暴れ始めたのかは当時誰にも分からない。全く不明だと言うのに、事態はリアルタイムで進んでゆく。

 だがそれは当たり前だった。


 ———神だと、そう思っているのは"彼"だけだったからだ。

 

 1回目は隕石突入だった。

 巨大都市、ゲートという星は平常に過ごしていたのに、急に、不自然な程丸く速い隕石が、ゲートの中のまた一つの巨大都市に落下した。

 月に目立ったクレーターが開くようなどデカい隕石で、人類のに二十分の一の人口が減ったと様々な所で報道され謳われていた。

 当時、この事についてはとても重い災害、と言われていたが、実際はそうでは無い。

 と密かに彼は感じていた。

 隕石災害当時から10年ほど経ち、2109年頃。

 

 2回目はビルが破壊された。

 先程見たビルの崩壊とほぼ同様であり、ある時にビルに亀裂が入った。それから人が散々になるまで暇という時間も当然ない。

 ガラスの音と割れる鉄、道路のコンクリートが衝撃に負け、様々な破損が伴い、大騒音をたてながら容赦なくビルの上半身は地面に転ぶ。

 健康に悪そうで濁った気体が、ビル崩壊辺りに波紋のように広がり、崩壊ビルを中心に1キロ先まで都市中に大気ガスが漂う様な障害を見せた。

 また人類の人口が更に減り、

 始めの隕石が落ちてくる直前は4億人程だった物の、ビル崩壊当時には3億9千万とすり減っていた。

 そこで人類はやっと思い始める。

 流石におかしい、と

 先ほど言った様に隕石は悲しい災害として言い残されていたが、ビルに関しては余りにも不自然過ぎる。

 普通はビルが勝手に切れて倒れたりなんてしない。

 そしてやっと政府が動いた。

 応急処置にすぎないが、政府は取り敢えずこの謎の災害を謎災害と名をつける。

 そこから、立て続けに起こる謎の災害の真実を追い止めるために、小さくも、ゲート各地に並ぶ研究所やら、謎災害専門の警察連合が設立された。

 

 研究所が主にやることは、研究所ではビルや隕石の物質を調べたり、何か手掛かりが無いか探しまくる。警察は、またこの謎災害が起こってしまった場合死人を抑える為、簡単に言えば街を救うヒーロ代わり、と言うわけだったり、今でも残る隕石が落ちた巨大都市の掃除だ。

 あとは戦闘部門など、"ああいうの"が起きた時に武力行使を中心に解決するものもある。

 地味かと当時思う人は多かったが、後に馴染んでくる。

 

 政府が動き、新しい組織が設立されたと言って油断している暇はなく、謎災害の立て続きは2回では終わらない。

 3回目は物体人格授(サーチ)だった。

先ほど言った、ああいうのだ。

 文字だけではとても説明できない、いや、光景を見ても分からないかもしれない。それ程、カオスな物だった。

 解明すると、各地飲食店、服装店等にあるナン、トンカツ、マネキン、木の人形、自販機に収まらず、様々な物が腕、足を生やして都市を駆け回ったり、人間を襲ったりする事件が2130年頃に報道された。

 こうしてマスコミが事件現場に突っ込み大怪我をして帰ってくる事も少なく無かったのも事実だ。

 カオスな物体達のその姿はまさに倍速で動く虫の様で気持ち悪く、夜に見たらご自慢のホラー映画になる程カオスで意味不だった。

 勿論、物体に人格が授けられ暴走するなんて誰も予知できない事だ。それが原因なのか、政府の対策が遅れ、その間に合計57件ものの物体人格授事件が起こった。今までに無い事件の拡散力で、その影響は広まるばかりだった。

 

 それで結局。まともな対策など出来なかったんだ。

 

 ———此処で、今の話になる。

 2130年ごろから30年程経った今。ビルが崩れたり、物体が暴れたりするのは当たり前になってきた。

 隕石の衝突が、一度しかなかった事は安心する。

 余りに手に負えない謎災害の量に、人類は常に追い詰められていた。

 それで、何故これが神のせいだと考察し始めたのか。

 

 これは、大分長い話になるが、聞いてくれ。

 2回目のビル切断謎災害を見た一人の警察連合に属す、   "時計の男性"、彼は思った。

 謎災害の黒幕、神なんじゃね?

 と。

 うん、おかしい。

 それは男性本人も分かるし、こんなヘンテコな考察が報道でもされたら批判が当たり前の様に大量発生するのは窺える。

 だが、そう思ったのは彼の人生体験談からだった。

 解明すると、

 その時計の男性の母は酷く宗教を信じる人だった。

 ああ、神よ。

 そう彼の母はデイリー任務かのように呟き祈っていた。夕焼け色に染まった朝日を通すレースのカーテンに向けて。

 母子家庭だった彼の家庭環境はとんでもなく悪かった。

 母はいつも他の家の人に勧誘をする事ばかりで、彼に構ってくれる人物は居なかったからだ。

 そうして彼の人生は幼い頃から、神、と言う存在が釘打ちつけられて、いつでも自然に脳の隅っこに存在していた。

 彼にとってはとても神なんて信じれなくて、ただその思いは立ち尽くしているだけだったが。

 しかしながら彼にとっての神という存在は、大分身近だったのだ。

 だから、こんなヘンテコな考えが浮かんできた。

 母が言ってたこの言葉。

 

 神様は選択を間違えない———と世間に謳われています、ですが貴方にも道を間違える機会はいずれ来る——その時は、私達がしかと受け止めます——-

 

 あの言葉だけは、心に残っている。

 まるで神が選択を間違える事を先越したような言動だった。

 それで、感じた、

 神だって選択を間違う時ぐらいあるんじゃ無いか。それが、今なんじゃないか?

 心の中でヒーロー漫画の創作でもしているように浮かんでくるヘンテコな考察が、彼の心を地味に、落ち着かせ、興奮させていた。

 でもこう思う時もある。

 

 いや、選択間違え過ぎだな。

 間違えました、じゃ抑え切れないぐらいやばい事して無いか?神

 

 四方八方から違った考察が投げられる。だが結びつく事はなく、彼の心の中はいつでもムズムズしていた。

 

 まあ、こんなわけである。

 聞くに足らないワケだったかもしれないが、温めた目で見といてくれたら、彼はちょっと嬉しむと思う。

 

 そして彼は、謎災害警察連合に配属した。

 

 見た目は、"体以外人間離れした見た目"をしているが、人を見た目で判断しては行けない、というのは、そういう事だ。読み続ければ分かるだろう。

 もしかしたら、彼以外にもヘンテコな考察をしている奴がいるかもしれないし。

 

 

 

 そんな彼を主軸に入れた、大きく長い物語が、もう始まっている。

 ———以上、製作者からの長く短い説明でした。

 これからの、"時計の男性"の破茶滅茶ストーリーをお楽しみに。

 

 

 1話ゴッドゴッドゴッドゴット!!!

 (俺、今日からここに行くのかあ、)

 俺はビル群を背景に、とある高層ビルを見上げる。

(俺みたいな奴、、、時計の不審者とか思われるんかなぁ、)

 いや、そんな事は思ってはいけない。自信を持っていかなくては。

 俺は自分の頭をカタンっと叩く。何となく落ち着いた気がした。

 エレベーターに乗り、事前に教えられた階数のボタンを押す。1.2.3.と数字が上がっていくほど、緊張のレベルが上がっていったのを実感する。

 58 階、と機械じみた女性の声でエレベーターが言う。

 雑音が混ざるその声に、何故か安心した。

 

「おはようございます新入り警官!!朝も切られてましたねビル!掃除の命令が出てましたよ、初出勤ですが、早くもお仕事の時間です!安心してくれて大丈夫ですよ!色んな人がが色々と教えてくれます!あと戦闘部門のnay様も、」

 エレベーターから出た瞬間。

 急に挨拶された。というか役職もバレてるってどういう事だ?

確認できたのはエレベーターにでてすぐ右にいる女性だった。

テンパり過ぎて姿がうまく見えない。

 (やばい、どう反応すればわかんねえ、なんだ待ち伏せされてたのか?)

 黒色の渦巻きが心を回る。

 俺が来る事を事前に知らされてたようなお出迎えを受けた、まあ悪い気はしない。

 そうふと体を横に曲げてみると、鮮やかな日光と青空に打ち付けられた。

 完璧な早朝、それを朝日が教えてくれた。

 古くもなく新しくも無い質素な時計の針は正確に5時を刺している。

 まだ犠牲になっていない高層ビルの58階。警察連合が権利を持つ小さなオフィスがそこに存在していた。

 壁一体に広がる一定に線状に黒い仕切りのある窓が、広く広がるビル群と永遠の青空を照らしていた。雨も、曇りの気配もしず、完璧な青空を朝の人々に見せつけている。

「、、、あ、えっと、おはようございます。何すれば良いのか教えてもらってないんですケド、取り敢えず彼処のビルの所に行けばいいんですか、?」

 取り敢えず聞いた。どんな答えが返って来るのか分からない。せめて言葉のキャッチボールが出来れば良いのだが。

「はい新入り警官!我も戦闘部門の話は分かりません!勘で彼処のビルに行けば、戦闘部門の方々がいる筈です!おそらく!多分!我は伝達の仕事を担っているので、そこら辺は理解が浅いであります!オフィス内の他の方に聞いた方が安心かと!!」

 言葉のキャッチボールは不可だと俺の心が悟った。

 その警官の発言。1割安心、9割不安だった。

 そう無駄にやる気のある伝達警官の名はリーチ。

 その名前は、警察らしい制服の胸元にその者の名前が記された金属製の名札があり、それに記されていた。リーチは右手を掲げての軍隊敬礼をぴしっと行なっている。

 大分張った声で、大声を出す事は慣れている様だった。

 広くも無いオフィス内に、リーチの声が響き渡る。だが、見える限りの周りの人々は何も気にしていない様だった。それよか、耳を傾けてもいない様子だった事が見渡して分かる。

 

 ここで自分の小さな魂の声が頭によぎる。

 ———いまだに神の話は誰にも話していないのか?

 

 うん。まあ、笑われそうだから、と言うのは勿論の理由だが、俺なりに秘密にしたかったからな。自分だけで真実を探したい。神なのかどうなのかが知りたい。そんな理由も持ってたり。


 ———ふーん。

 、、、俺は一人で誰と話しているんだ。恥ずかしくなった。


「成程、分かった気がします、取り敢えずあそこのビルに向かえば良いんですね」

 俺は指の先端を指に絡まさせ、姿勢を小さくしていた。

 見た目の異様さと比べて大分色々と低姿勢であることを日々実感する。

「新入り警察官のお助けになられたなら光栄です!では行ってらっしゃいでございます!」

 リーチは敬礼の姿勢を崩さない。

「ふふーん、楽しい会話してるんだね、」

 ほのぼのした会話劇を繰り広げていると、もう一人の女性が輪に入ってくる。

 見るからにその女性は見たからに長身で、厚そうな布でできたベージュの洋風レトロ風のコートに、お洒落なのかは分からないが一部分かけたダイアのような形をしたボタンで胸元から膝下まであるコートを締めていた。

 黒髪のウルフカットに先端は赤に染められている。

 顔は一言に表すと、見目麗しかった。チャームポイントとなるだろうなまつ毛の長い若干の吊り目の目をしており、こめかみの部分は若干赤みがかっている。整った顔立ちをしていた。都市とは大分かけ離れた洋風の外観をしている。

「私は今から研究所へ行かなくちゃいけないんだ、

 チッ—あんな面倒な所に、、、私は探偵がしたいんだ、あんな地味な観察、もう二度としたく無いのにね」

 その女性の話、、、愚痴の内容を聞くに、彼女は研究所に属しているらしい。なぜ研究所の者が警察連合のオフィスに居るのか。理由は知り得ないが、研究所が苦手なんだな、と言うのは話の内容的に理解できる。

「ハッ!バレッツ研究仕官!日頃の研究お疲れ様です!これからも沢山努力してください!!」

「沢山努力してくださいー?、、、まあ心には留めておくよ、、、通勤中に謎災害だけは起きないでほしいんだけどね、まあそこのあんたもお気をつけて」

 あ、俺に反応してくれた。

 バレッツ研究仕官という何か偉そうな雰囲気を察させるような名前をしたバレッツは、タバコのパイプとオイルライターをポケットから取り出し、煙を沸き立たせながらエレベーターに乗り、下に降りて行った。大分シュールな光景だった。

 それと、此処は禁煙なんだが。

白い質素な壁に貼られた禁煙のマークとバレッツを交互に見つめていると。

「なあなあお二人ー謎災害って名前そろそろ変えないのかねー、なんかダサくね?」

 なにやら機械じみた声が俺の鼓膜を震わせた。

 ああ、どんどん新参者が出現してくる。

 俺とリーチの横にいたのは———

 ロボットだった。

 精密に言うと、工場で永遠と同じ工程を繰り返してそうなあれだ。

 双眼鏡のような形の頭で、一応人間に似た体をしている、なんでも反射できそうな程きらめいた金属の銀色に、ちょっと可愛い存在感のない尻部分。作り込まれた関節、体の各部分がが人間のように動くように造られたであろうパーツが彼、ロボットを動かしている。

 某海外SF映画に本当に出てきそうな見た目だった。

 それと、さっきの声は明らかに機械じみた声だったが、言葉遣いが明らかに人間というものを感じさせている。言語だけを聞いたのなら、何も違和感を持たないだろう。

「えと、貴方は、?」

 俺はそう問う。勤務の時間まで余裕も無いのに、どんどん情報が詰まっていくもんだから、質問が自然と喉を通ってきてしまう。

 俺は警察連合に属し初めての出勤日、ここにくるのは全くの初めてで、当たり前だが今日は新しい出会いが多い。

「ああー?俺かー、ただのロボットだよ!普通の人間だと思って接してもらって良いから、取り敢えず謎災害ってダサイ名前変えて貰うように上に言っといてくれお二方」

 カチャカチャと体から音がする。名についての発言はしなかった。

「ああー、ちょっとえと、ゆ、勇気が、」

 俺大分内気な様子を見せ、言った通り勇気のなさそうに振る舞う。

 俺は人に話しかけたり質問するのが苦手だ。謎災害って名前ダサいので変えてください、なんて口が裂けても言えない。

 しょうがないからロボットと呼ぶが、ロボットは兎に角この謎災害って名前が嫌いらしい。

「ああー?まあ良いや、んでぇその兄ちゃん、

 ——俺と同類なやつか?」

「ええっ」

 俺個人に話しかけられた。兄ちゃん、と呼ばれ情けない声を漏らしてしまった。

 ———まあ、同類だと思われるのもしょうがないか。

 理由は、

 頭という頭がデジタル時計であるからだ。

 学校の黒板に貼り付けられて様な、それだ。

 縁が黒色で、灰色のバックにドットで時間が記されている。その下には赤、緑、黄色の小さい長方形型のボタンが横並びに付いている。タイマーとか時間を設定するためのボタンだろう。

 簡単に言えば、異形頭という奴だ。

「あ、まあ、そうかもしれない、です」

 当然だが、俺は自分の身分は知り得ている。警察とか戦闘部門とかそういう者ではなく、自分がデジタル時計を頭にかぶる変質者だと思われていることについてだ。いや、決めつけも良く無い。仲間ってことにされてロボットが喜んでたらどうする、!

「いやあ、でも、気持ち悪いっすよね」

 (うわあ!なんで俺はこんなすぐ内気になる!戦闘部門とかかっこいいって思って入ったんだろ!?自分の見た目なんて気にしてる余裕ねえだろ!)

 また俺の中の魂が叫ぶ。

「はあ?お前がキモかったら俺のほうが百倍キメェよ!お前新入りなんだよな?俺は唯のマスコミ追い出し係だけど、まあ頑張ろうぜ!」

 ロボットのさりげない言葉で、俺の心はスッと軽くなった。胸につけられた錘が落ちた感覚だった。

 そう言いロボットは、コーヒーを作るサーバーに紙コップを持って行っていた。飛行しているような正確な足取りで、流石the機械。と言える物だった。

 謎災害という名前を変えてほしい、と言う話。街中を歩いていると、実は意外と感じている人が、、、少ないらしい。正直これで何十年も保って来ているのだから、どうでも良いと思う人が多いのだろう。

 正直自分もそう思う。こういう話は一旦おいておく。

「あ、じゃあ俺遅刻しちゃうんで、行きます」

 色々あったが、俺はこれからの生活に胸を弾ませている。俺は戦闘部門に所属した。つまり、沢山戦えると言うことだ!かっこいいんだこれが。

「頑張ってきてください!新人警官!」

 

 

 

「うわっ!」

 俺が現場に向かうまでの途中。小さな小さな謎災害が起こった。

 石ころが震え始め、微塵切りにされていく。

 まあ、それだけなのだが。

 驚きはしたが、数秒も経てば冷静になる。大丈夫、これが日常なんだから。

 これで終わったかと思いきや、

「ナンナンナンナン!!ポポポポポ!」

 ————終わった。

 俺は思った。

 顔がなくても分かる。

 謎災害が起こってる。まじの方で。

 四足歩行になった大きいナンが、一直線にこちらに向かってくる。

 一匹だけじゃ無い、群のようだった。後ろにはマネキンが5体程、二足歩行で全力で走っており、自販機が四足歩行で、二足歩行のマネキンと同等の位置に立ち、思うがままにぶっ飛ばしていた。

 

 

 

 こうしてみると明らかに光景がおかしい。

 右から、二足歩行で走るマネキンに、四足歩行で駆ける自販機、ナン、デジタル時計の異形頭。

 これでも必死に俺は生きているし、これからの日常となるだろう。

 (やばいやばいやばい俺やっとかっこいい所に行けたのに死ぬのか!?てかこれ引かれたら死なのか?)

 死、と言うワードが何回も頭によぎる。取り敢えず気にしないで行きたい、こんな事を考えてしまうと、息切れが早くなってしまう。

 気づけば崩壊ビルとは全くの反対方向に足が動いている。

 でもしょうがない。こんな状況なんだから。

 俺の時計が風の抵抗で悲鳴を上げ斜め上を向く。視界がビルの頂上を写した。

 今の時刻を周りに人に知らせる様に走る。大分恥ずかしい。

 気づけばナンの大群との距離は地味に近くなり、絶体絶命という言葉が似合うようになってきた。距離は4メートル程か。

 (カメラだけじゃ逃げ道分かんねえよ!あーもう投げようかな——目見えなくなるか)

 と愚痴をこぼす。

 時計、という事は目、鼻、口、耳が存在しないという事だ。この四つの部品はとても貴重で彼が欲しいものでもある。一応、耳と目と口はあるが、鼻というものは無い。何も食べないし何も嗅がない。俺にとっては鼻と言うのは必須というわけでは無かった。

 目は首元に携えてあるカメラである。脳とカメラを何たらかんたらしてるらしいが、簡単にいうと今時のハイテク技術を使用しているらしい。

 耳は時計に馴染むような色合いの補聴器がカメラにキーホルダーのように結び付けられている。これもまた脳と連結したとか。今時の研究者の実力が知れる。

 口は人間で言う心臓部分に配置されている。服を被ると気付きにくいが、大きい一口が入るぐらいの大きさの穴ががっぽり空いている。つまり食事や会話する際には、心臓から声がするという解釈は間違っていないと言う事だ。

 って

 ——あれ


 ————体感あと3メートル



 ————あと2メートル

 (やっべ終わった!このままだとすぐ死ぬモブみたいになる!)

 束の間に大群は近くに迫って来ている。

 おかしいな、こっちは全力で走ってんのに。

 謎の危機感を抱きながら全力で走る。

 ずっと前を向いた方が良いのは理解しているが、どうしても後ろの状況が気になってしまう。それは生きる者なら当たり前だろう?

 覚悟が決まった心で、後ろを振り返った。

 ナンたちの大群とは、目と鼻の先だった。

 なんか恋愛映画みたいだな。そんなこと言ってる暇は当然無いが。

「終わっ——」

 俺は今更武器を取り出した、青く光った電撃を放つハイテク銃だ。だがタイミングが明らかに遅い。

 ———クソ何してるんだよ馬鹿男!

 そう自分の失態を一瞬罵った。

 

 あれなんか、

 ——飛んでる

 ナンというナンが宙に飛び、俺の方向にヒップドロップする様に墜落してくる。

 (ふ、踏み潰される!)

 俺は、墜落用の下敷きとかした。

 (うおっ痛ってぇ!)

 足をナンに掴まれ頭部分をマネキンに抑えられる。ボコっと何かが凹む音がした。何故俺みたいな異形頭に痛覚を用意した!ふざけてんのか!

 ここまで痛みを味わっても問題はまだある、まだ上からナンが降ってきてない、

 ああ、これを他人事にでもしたい気分だ。

 トドメを指すつもりなのか。

 

「新人!」

 二文字だけなのに、すごく安心する声だった。救済の手が降りられた、気がする。

 声がした後1秒もなく、重低音が体に、辺りに響いた。

 まるで、地が力をためている様な音だった。

 助けのはずなのに、危機感を変に感じる。

 視界は謎に見えない。カメラが壊れたのか?いや、そんな壊れやすいものじゃ、、、

 

 ボボーン!

そのクソデカい何かの音と共に、俺のない筈の鼓膜が震える。

 (道路、割れてる!?というか、爆発してるのか?」

「、、、うん、前よりかはマシになった」

 うん、何がマシになったのだろう。

 道路は月のクレーターの様にがっぽりと大胆に穴が開けられており、ナンの大群はどこかに逃げて行ったのか、土埃で何も見えなかった。勿論、救済の手を下ろした、声からして男性の人の姿も。

「あ、ありがとうございます」

 上司に感謝する様な調子で行った。

「別にどうってことないが、ビルに話しかけてどうする?」

「あ、すみません、視界よく見えてないもんで」

 視界がまだ不十分で、その人物がどこにいるか分からず感謝した。カメラを手で払い、気を改める。だが視界は晴れない。

「お前、警察連合の奴か?」

「あ、はい」

 初対面の人と会話する時、毎回頭に、あ、をつけてしまう癖を今だに俺は治せていない。

「名前は?」

「ロボコンです」

 サラッと言った。そう、俺の名はロボコン。そう自己紹介するときに一言言われるのが、

「、、、なんだそのロリコンみたいな名前は」

 そう、これだ。もう慣れた。

「あ、ロボットコンピューターの略らしいです。もうロボットは卒業してますが。」

 俺なりに慣れた口調で言った。

「待ってくれ、状況を整理する。——-俺の名前は、、、特にないから適当に呼んでくれ」

 (あ、ラノベあるあるのやつだ!)

 

 君の名前は?もしかしたら、記憶喪失で分からないかも、

 この様な文章は飽きる程見てきた、何故かと言うと、ビルに紛れる本屋の文庫コーナーを漁っていれば、

 レベル一から何たらかんたらとか、転生したら最強みたいな、男女問わずロマンを感じる作品ばかり見てきたからだ。

 簡単にいうと、

 ———俺はオタクだった。

 好きなアニメはマイナーな物だらけで、共感者を探すも、ネットにしか湧いてこない。それに痛車も当たり前の様に乗りこなす、自分で言うが——完璧 尊敬出来るtheオタクだった。

 

 そう自分の武勇伝を心で語っていると、泥々しかった視界が滲む様に開けた。

 好きにしろと言われたのでこうするが、ラノベの男性と名付けようか。ラノベの男性の姿が見える。予想とは少し違った見た目だった。

 ウェーブのかかった短髪に先は赤色に染まっており、レトロなジャケットを着て気の抜けた黒色のズボンを足に纏っていた。

 目は黒曜石の様に艶やかで、まつ毛も長く、どこか女性の様な雰囲気を漂わせている。

 肌は全体的に隠されていて、手の指の先だけが露出する革製の手袋が、ロボコンの厨二心を地味に湧き出たせていた。

 そしてつい目がいってしまうものが一つある。

 それは彼の守護神の様に硬そうで、柔らかそうな鎖だった。

 それでさっきバァンっとやったのだろう。

「———ところでお前、なんで頭がデジタル時計なんだ?」

 その質問は唐突だった。

 いづれ聞かれるとは思っていたが、答えを準備してない。自分でもよく分からないからだ。

 間を持たせるのは嫌なので、取り敢えず口を動かす。

「あ、何というか、成り行きというか、」

 そうあやふやで説明してると、ラノベの男性は察した様に頷いた。

「、、、あんまり突っかからない様にしておく。あとお前、警察連合なら掃除の仕事とか朝あるんじゃないか?このままだと遅刻だぞ」

 ————忘れてた

 一気に血の気が引く。

 通勤するまで大分いろんなことが起きてしまった。色々と時間が掛かっているはずだ、早く行かなくては。

「ああそうですね!早く行かないと!あざっした!」

 次は工事業務の新入り社員みたいになってしまって気が暮れた。心の中の優先順位は勤務の方に向いていたので、崩壊したビルの方へ走る。

 

 

「ち、遅刻しましたぁ、」

 俺の出勤場所は、空飛ぶ列車が周りを駆け飛ぶ小さな未来都市の真ん中———ベータ+国際ビルの、屋上だ。

 +の意味はいまいち分からない。だがそれがどうでも良くなるほど、この都市は掘り立てのダイアモンドを眺めている様に、凛々しく、綺麗に感じた。こんな状況でもつい景色に目が奪われてしまう。

 いや、そんな事言ってる場合じゃない。どこに肺があるのかも分からないのに、俺は何で息切れしてるんだ?全力で走りすぎて前向けねえ、

「いやいや大丈夫大丈夫ぅ!一番先に来たのキミだからぁ!」 

 ん?

 俺は、衝撃の一言でデジタル時計に電撃が走ったかの様な感覚を覚えた。

 今って、出勤時間に20分は遅刻してるよな?

 頭の中の体内時計がそう言う。

 頭にちゃんとした時計があるが、鏡でも無ければ自分では見れない。

「俺が一番最初何ですか!?」

「そうだよぉ?戦闘部門の皆大遅刻メンバーが揃ってるからさぁー」

 大遅刻メンバーが揃った戦闘部門チーム、、、

 終わった。

 と言う気持ちも出て来るし、

 面白くなって来た!

 と興奮している気持ちも湧き出て来る。

 正しくは、面白くなって来た!の方が自分の人生に従順な感情なのかもしれない。単純にラノベっぽくておもろい。

 それに、遅刻しちゃってもあまり根に持たなくていい、と言う安心感もある。

「今、キミ喜んでるでしょぉ。」

 柔らかくしっとりとした声がした、その瞬間で、俺の視界はその彼女の方に向いた。


 時計だろうが、体の一部である以上感覚はある。

 明らかに、時計の下中心部分を触られている。

 つまり———顎クイ状態だ。

 それだけで心が揺さぶられる。本当に二次元に来た気分だった。

 それもそうなんだが、

 

 ———何てこの人は凛々しいんだ!

 

 そう思わせた張本人は、純粋な笑顔を俺に見せつけている。まるで見ているだけで心を浄化されている気分だ。

  ミルクの様に温かみのある白で、赤と青のインナーカラーが入った髪。

 胸元に白い糸が交差しているワンピースらしきデザインに、各部位の縁に目立たない程度の白いフリルが踊っている。服装は全体的に黒と白が基調だった。

 良いところに風が吹き、足の付け根から近い部分から足が露出して"それ"がよく見える。

 それ、と言うのは太もものベルトのことだ。勿論そう言うものでは無い。

 ———少しムチッとした太ももが、、、、辞めておこう。犯罪者になる。

 顎クイされては頭を回せないので、必死に心をぐちゃぐちゃにしてそう言う思考を黙らせた。ラノベやソシャゲで何度も通って来たそう言う道が、こう言うときに生かされてしまうのはどうにかしたい。

「———へへ、やっぱり今までの人とは違うなあ」

「ど、どんな所が、ですか」

 思わず声を漏らす。正常に返答してくれるのを静かに祈る。

 そうすると彼女は俺から手を離し、力が抜けた様にブラーンと腕を振る。

「どんな所って、、、こう言うことだよぉ、ちょっとオタクっぽい所とかぁ、異形頭なところとかぁ、意外と異性に弱いところとかぁ!」

 彼女の一言一言に、いい意味での馬鹿らしさが詰まっていた。最後の言葉で、彼女は右手で俺の時計をデコピンした、バンっと人間からは鳴る訳ない機械らしい音がなる。

 俺の心はとっくにピンク色に染まっていたのに、

 ——-邪魔が入って来てしまうとは。

 

 ————タイミングが悪いな。

 地面が、床が、鳴動し始める。

 その状態が十数秒続く。

「、、、今のは何だったんだろうねぇ」

 ——お?

 彼女の周りに星空のような景色を丸写しにした大きめの浮遊輪が、丁度いい程度に身体から離れ定着している。剣なのか、槍なのか分からないが、何も形を帯びていないそれらしい一見棒の様なものが一定に突き刺さっており、彼女の顔方面の突き刺さっていた何かは抜かれ、彼女の手の中にある。それは腰辺りに感覚を空けて彼女の周りに定着しており、彼女を守っている様だった。

 うまく説明できないけど、何だが凄くカッコいい、SFみたいだな。

 さっきはこんなの無かった。つまりこれは、彼女の警戒体制というものなのだろうか。

 ———じゃあ俺もなんかしないと!

 そう思い取り敢えず懐のハイテク銃を取り出した。

 それを何となくでビル群の中心にある、ハイタータワーと言う、車道が入り組み雪の結晶のような奇妙な形をしたタワーに向ける。別に撃つつもりは全くないが、取り敢えず何処かに焦点を当てなければと思った。


「ジハシハジハジハジハジハジハ!!ポポポポポ!ナナナナナナナマネマネマネマネ!」


 ———ああ、聞こえてしまった。

 遠くだろうと、しっかりと耳に入って来てしまうこの声。おそらく戦うことになってしまうのか。

 物体人格授というやつが起きてしまったのだろう。

 ジハという鳴き声は自販機。

 ナはナン。

 マネはマネキン。

 トラウマになる程聞いてしまったこの鳴き声達は、自然と頭の中で分別できるようになってしまっていた。

 ———この三銃士が揃うと、かなり厄介だ。

 マネキンは拳と足で武力行使してくるし、ナンはヒップドロップしてくるし、自販機はかなりの重量でもたれかかって来る。もしこんな攻撃を一気に受けてしまったら、ひとたまりも無くなる。それがさっきの俺だが。

「キヒヒッお楽しみの時間がやって来たみたいだよぉ?皆?」

 彼女は悪魔の様な顔と口調で俺の方、後ろに振り向く。それは直視するのに罪悪感を受けるほど見目麗しい見た目だった。、、、ん?

 ———皆?

 皆、と指す者が何処にいるのか分からないが、勘で後ろをゆっくり振り返る。

  そうすると、俺のカメラは三人の人を写していた。そして何故か全員見覚えがある。

  「よ、またあったな」

  「どーも、また会ったね」

 また、と見覚えのある二人に重ねて言われた。自分でもそう言い返したい。

 右手の方には先程の命の恩人、ラノベの男性がいた。微かな風に洒落た黒と赤のインナーカラーの髪を揺らしている。

 左手の方には洋風なコートで身を隠すバレッツ、とか言ってた研究仕官、?だった。

 そこで突っ込みたいことを凝縮して心から言い放つ。

 ———何でここに居んの?

 正直これしか出てこない。

 ラノベの男性は鎖を扱ってた所からまあ戦闘すんのかなあと多少の考察はしていたが、流石に身元を隠してこのタイミングで急に来るとは想定外だ。

 バレッツ研究仕官は、もう論外と言うほど予想外だ。

 まず、研究って言ってるんだし戦闘とはかけ離れた存在だと思っていた。それに、かなり厚そうで重そうなコートを着て戦えるのか?まあそう言うのは好きだけど。

 疑問、と刻んだヨーヨーが、何本も心の中で釣り合い、離れ、また釣り合いを繰り返していた。

「さっきは身元を隠してすまなかった。俺は香和。見た通り鎖使いだ。」

 そんなファンタジーに似て簡潔に自己紹介を終わらせた香和は隣のバレッツを気にかけている様に瞬きで誤魔化しながら見つめている。

「———ああ!、私は知ってると思うけどバレッツ研究仕官。色々あって"今"戦闘部門に所属したよ、、、何使いなのかは実戦でね?」

”今”?

 バレッツは思い出した様に自己紹介を始め、おちゃらけた様子でそう言い並べた。

「えー、このバレッツ?って子は私は知らないなぁ、」

 と香和と俺を交互に見つめる顎クイの彼女。

「俺も知らない、ほっといたら良いんじゃないか?」

 ラノベの男性が同意する。

 勿論、俺も知らない。

 存在は認知してるが、戦闘部門としての仲間としては認知していない。

 今所属したなんて、屁理屈とかにしか受け取れない。

「ちょっと!そんな邪険に扱わないでくれよ!一応資料は通してあるからさー」

 とバレッツは、待ってました!と言わんばかりの速さで革製の鞄から複雑そうに文字が並べられた紙を4枚ほど地に並べ、風で飛んで行かない様に両手の指をピースの形にし紙の下を抑える。

 ふふん、と名を名乗らない彼女はその資料を一瞥した。

 それも束の間で、

「———よし!部員が増えただけで十分だぁ!君、バレッツ君を私、ネイが戦闘部門に歓迎するぅ!」

 やっと名を名乗った。俺を躊躇なく顎クイしてくれた彼女、ネイが。

 ネイは懐の小さなポケットから横に細く長いハンコを取り出し、バレッツの床に敷いた書類全てに向け、流れ作業の様にドドドドと押していく。

 そのハンコには細かく、nayと幅広く配置された彼女の名が刻まれていた。ここでネイ、がnayと英語なのを初めて知った。

 そのハンコは束の間に青く光だし、焦げた跡を残し紙にしがみついた。これがどんな技術なのかは知り得ない。

「ハハっ!ありがとう!これから宜しく頼むよ!」

 どうしよう、事態の進み方について行けない。

 心なしか俺の頭のデジタル時計の時間が3分ぐらい先にズレてる気がする。

「うーん、それはそうなんだけどぉ、何でバレッツ君は急に戦闘部門に入って来たのぉ?理由はぁ?気になっちゃうなぁ」

 と、nayは笑談の様に軽く、聞き調べの様に重く問いた。

「んー、"そこの時計君が気になったから"かなー、だつて!オフィスで見つけちゃったんだよ!頭をデジタル時計にした異様すぎて面白い彼を!名前も身分もよく分からないけど、どうしても惹かれる部分があったんだよね」

 オフィスであったバレッツとは、言葉遣いどころか性格も違っている様に思える。華奢で洒落た見た目にしては、中身は思春期も来てない少女の様だった。

 それに、もう意味がわからない。

 惹かれた?時計の俺に?

 どう考えてもおかしい。

 俺は元ロボットなんだぞ?生まれて気づいたらロボットにされてて、何も感じず生きて気づけば解放されデジタル時計を被る異形頭になってたヘンテコ人生を歩んできた俺に惹かれるなんて、言っちゃうけどもう人外だ。ああ、思い返したくもない。

 黒い渦巻きが心を纏う。


「マネマネ!ヘンナニンゲンミツケタマネ!コロスマネ!」

 

 そんな時、マネキンの姿が俺の視界にボールの大きさで映る。

 マネキンは場の静寂を破り、こちらに突っ込んでくるじゃないかと言わんばかりに猫の様に猪突猛進の体制を揃えている。

「と、取り敢えずこの話は後にしよう、ほら早く行くぞロリコ、ロボコン」

 頭の中をスッキリ出来てない状態で戦闘に突入してしまった。俺としては大変ピンチだ。それとロリコンって言おうとしたな今。

「さっ!戦いの始まりとしましょうか!」

 nayの合図の様なその言葉で、バレッツは頷き、俺も習い流れに任せて頷く。

「それじゃあ、指揮よろしくねぇ?新入り君」

 ——-うん?

 想定の事態が進む順序から大きく外れた一声が入る。

 指揮、ってなんだ?

「し、指揮?」

全て終わった気分」で問う。

「えぇ?話聞いてないのぉ?戦闘部門に入る時、契約書みたいなやつに、指揮が何たらかんたらぁみたいなの書いてたっしょ?」

 待ってくれ、

 見覚えが無さすぎる。

 本当に、無い。

 そもそも契約書みたいなのって何?

 PCでなんか色々と手続きして戦闘部門入ったのは分かるけど———あ、そう言えば。

 俺が手続きしてた時、酒を持ってたような。

 俺は頭がデジタル時計なので人間では無い。俺みたいな17歳でも法律は多分干渉しない、と自分の勘としての知識がそう言っていた。

 その年齢と関係あるのか、俺は酒に弱いタイプで、紙コップ一杯分だけでもへこたれる程だった。

 これをAIに相談したら、

 『ここまで弱い人は初めてです。』

 みたいな意味わかんない事言われたし。

 いや、今はそんな事を考えてる場合じゃ無い。

 自分を叩きたい気分に陥り、邪魔な考えを遥か遠くに吹っ飛ばす。そして予想を簡潔にまとめる。

 多分酒に酔っちゃって、しっかりと読んだつもりだったんだろうが、頭に入っていなかったんだろう。

 これは唯の直感だ。でも、自分の今までの経験からそれは真実だと囁かれる。そう絶望に浸っている時。

「まあぁー、後で説明しておくよぉ、ところで、君の名前は?」

 色々と察してくれた。

 あと、どう考えても名前を聞くタイミングじゃ無い。マネキンがすぐそこまで迫って来てしまうと言うのに。

「ロ、ロボコンです」

 引きながらも答える。誤解されない様に祈る。

、、、これがフラグになるなんて思いもしなかった。

「ロリコンね!ロリコン指揮官!即興で指揮よろしくぅー」

 ———はい、速攻フラグ回収。

 待て待て待て待て待て!!!

 ロリコン指揮官はヤバいって!裏でなんかやっちゃうタイプだって!そんな不純粋な奴じゃ無いぞ俺は!?

 誤解を解かなくては、開き締めが出来ない穴と同様の口をアワアワと動かしたつもりで立ち尽くしてしまう。俺なりに中々の危機感を感じた。

「さあロリコン指揮官!私、nayはどう戦えばいいでしょーかぁ!ご指示を!」

 頼むからその名前で呼ばないでくれ!急に敬語に変わらないでくれ!こっちが上の立場みたいになってプレッシャーがかかるんだ!


 でも———

 

 指揮官って言われんの、すっげえドキドキする。

 指揮官なんて、ソシャゲとかでしか言われた事ないよ俺、!

 俺、そんなカッコいい名前で呼ばれる機会が来るなんて、正直実感が湧かない。

 

 折角。たか指揮官なんてカッコよく呼んでくれたんだ。それに応えなければ!



第2話に続く。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ