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相性

 とりあえず基本的な事項から確認する二人。同じギリシア系のため、ユニルスが使えないのは明白である。だが、同じ系統同士の為、攻撃の相乗効果が狙える可能性があった。その上、慶斗の光属性はアシストにも強く、夢の炎属性は攻撃に特化した属性である。

「僕は夢のアシストをしようと思います。」

「私はどうすればいい?」

「とりあえず攻撃してください。僕が様子を見計らいながらアシストしますから。」

 慶斗の聞く話によれば、夢の扱える技は基本的な技のみ。上級征儀はフィナーレの技しか使えないのこと。おのずと使える戦術も限られてくる。しかし、クラスアップ試験で見せたあの能力の高さを見れば、力押しが効くのは確実だろう。魔力保持量の多さは定かではないが、トラーマの呪文でフィールドを焼き尽くすほどだ。常人の上を行くと考えても良いだろう。その上、無詠唱で呪文を発動できるのだ。かなり無敵に近い存在と言えるだろう。もしかすると、龍夜でも苦戦する程の相手かもしれない。

「とりあえず実践練習でもしてみましょう。」

「はい、けー君先生!」


 結果は二人の圧勝だった。相手は三年の二人。今は二人仲良く観戦席の隅で慰めあいながら座り込んでいるのだった。夢は上級生との試合に勝てた事が嬉しかったのか、ピョンピョン跳ねて喜んでいる。見た目は慶斗と同じだろうが、どこか幼げに見えてしまうのであった。だが、本人に歳を聞いた所で覚えていない可能性もあるだろう。そして、慶斗自身も女性に歳を聞くのは失礼だと思っているので聞かないのであった…。

「今日のご飯は何がいい?けー君。」

「何でも良いですよ。それに、僕だって作りますよ?」

「いいのいいの。けー君が喜んでくれるなら、私頑張っちゃう!」

 拳を体の前で握って張り切りポーズをとる夢。半ば嬉しそうに照れる慶斗。事情を知る龍夜や玲奈はニコニコしてるし、翔太はポカンとしている。凪沙だけはニヤニヤしながら二人に静かに近付いていく。

「新婚さんみたいだねぇ?慶斗っちに夢たん。」

 慶斗はあたふたして“そんな事無いです!からかわないでくださいです!”などと言っているし、夢に至っては頬に手を当てて首をフリフリ。“そんな新婚さんだなんて、お風呂にする?ご飯にする?それとも私?だなんて…。”どうやら一人で妄想の世界に突入しているようであった。そんな様子を見て納得したように頷くと、今度は龍夜と玲奈の方へと向っていった。どうやら、ただ冷やかしがしたかっただけらしい。向こうの方でも玲奈が赤面してるし、龍夜は明後日の方向を向いていた。

「今日は解散!」

 直後、龍夜の解散宣言が出されたのだった…。



「~♪」

「夢、本当に手伝わなくても良いんですか?一応僕も兄ぃと住んでた頃は料理してましたよ?」

「けー君、私の作る料理、嫌い?」

 目をウルウルさせて聞いてくるのだが、留美によって耐性の出来ている慶斗にはあまり効果がなかった。

「嫌いではありませんよ。でも、夢にだけ負担を掛けては行けないと思っただけです。」

「ありがと、けー君…。」

 ギュッと慶斗に抱きつく夢。やはり耐性は出来ている慶斗なので、特に驚くことはなかったが…。あまりにも反応の薄かった為か、夢はムスッとし始めた。

「けー君、女の子に抱きつかれても何とも思わないんだ。ふ~ん、そうなんだ。」

「ただ慣れてるだけです。」

「慣れるほど抱きつかれるんだ。けー君モテモテだね。」

 “あぅ、そんな事は無いのです…。”と言う慶斗だが、夢は更にギュッと津よく抱きしめた。

「私ね、本当は少し怖いんだ。記憶が無くて自分が何者かも分からないし、身の拠り所も知らない。だけど、けー君の隣ならなんだか安心できるの。お願い、私の事、嫌いにならないで!」

 ぎこちないながらも、夢の頭を撫でる慶斗。元気はつらつと言った感じの夢と思っていたが、内心はこんなにも寂しかったのだと気付く。自分がそれを少しでも癒せるのなら、真正面から受け止めたいと思った慶斗だった。


「夢、なんだか焦げ臭くありませんか?」

「あっ!?」

 鍋から黒い煙が昇っていたのはご愛嬌…。



「ごちそうさまです。夢、おいしかったですよ。」

「ごめんね。今度からは焦がさない様に気をつけるね…」

 黒い煙を吐き出した料理は炭化とはいかない物の、最早食べられる状態ではなかった。しょうがないので、別な有り合わせで夕食を済ませた二人。謝る夢に、気にしてないと言った振りの慶斗。

「お風呂沸いたら夢が先に入ってください。」

「私の入ったお湯でエッチな事考えるんだ。いやらしぃ~」

 “そんな事しませんっ!それなら僕が先に入ります。”と叫ぶ慶斗。

「冗談だよ、けー君。だけど、けー君が先に入って何をするつもりなのかなぁ?」

 またもや茶化し始める夢。慶斗はまたもや赤面している。

「僕、今日はお風呂に入りません。先でも後でも夢に誤解されてしまいます…」

 かなり落ち込んだ様で、床に座り込んで“の”の字を書きはじめてしまった。それを見て苦笑する夢。慶斗の背中から体を預けるように乗りかかる。首に腕を回してそっと囁いた。

「先も後も駄目なら、一緒に入る?」

「だだだだ、駄目ですよ!そんな事!」

「冗談だよ、けー君。じゃ、私お風呂入って来るから~」

 赤面する慶斗を残して、夢は去っていくのであった…。

「これでは、僕の精神が持たないのです…」

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