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明かされる可憐の真実

「学園長、青の魔石の持ち主が中国系征儀伝の始祖だと言う事は理解できました。ですが、わからないんです。今の中国系征儀伝の魔石は緑色である理由が…」

 慶斗がおずおずと手を挙げながら聞いてくる。


「それは此方から話をした方が良いでしょう。」

 話を切り出したのは謎の征儀伝の一人。フードを外すと、ほかの全員もフードを外すのだった。

「まずは自己紹介から。我々は、中国系征儀伝が起こす事件を追っている秘密組織のメンバーです。正式な名称は無いのですが、存在を知っている人物からは“対中チーム”などと呼ばれています。規則の為、メンバーの名前を教える事は出来なのですが、他言はしないようにお願いしますね。」

 一度茶目っ気たっぷりに笑った男は、話を続けた。


「では。中国系征儀伝について我々が調査を終えている所かつ、許容されている所までお話を。と言っても、この際ですから全て包み隠さずお話しましょう。まずは魔石の色から。これは力の受け渡しが出来ることが大きな理由。詳しく説明すれば、訓練をしなくても中国系の力が使える様になると言う事。例え、それが本来力を持たないただの人間であっても…」

 唖然とする慶斗たち。普通の人間を征儀伝に変えるなんて、ありえないのだ。

「驚くのは尤も。ですが、これには代償を払っているのです。それは、中国系の始祖の魔力。即ち、魔力の分配。直接体に始祖の魔力を注ぎ込むことにより、中国系征儀伝としての能力を無理矢理覚醒させる。」

 ここで、あの緑色の液体を思い出した。あれを飲んだ瞬間、スペイン系の征儀伝が中国系製儀伝の能力を発現させたのだ。あの液体がそれなら、納得がいく。

「どうやら何か覚えがあるようですね。きっとそれで正しいですよ。しかし、魔力を大量に分け与えた為、青い魔石が色褪せ、緑へと変化した。我々はこの様に予測している。こうやって急速に仲間を増やした中国系征儀伝は、先程の説明の通りの目的を遂行しようとしている。逃げたり、裏切りは出来ない。なぜなら、与えられた魔力の出し入れは自由自在。もし裏切られたのが知れれば、始祖が魔力を強制返還します。元々ただの人間だったなら、力を失うだけですが、もし、他の流派の征儀伝だった場合、魔力の暴走が起こり、魔石が耐えられなくなる。そして、最後には爆発する。この中でその光景を見た人がいるはずですが?」

 龍夜、慶斗、凪沙、玲奈の四人が気付く。あの強盗犯は最後、異常なまでの光を魔石から発して死んだのだ。

「今日学園を襲ってきたのは、元々人間だった者が多いようです。ただ今護送中ですが、護送先に着くまでには力を抜かれているでしょう。」

「抜かれた力は何処に?」

「勿論、中国系の始祖の所まで。その力は新たな中国系征儀伝を生むのに使われる。即ち、永遠のサイクルを繰り返すのです。」

 手駒の数には困らないことを示唆しているこの行動。このままでは向こう側がかなり有利だ。

「とりあえず今出来ることは、中国系征儀伝を片っ端から捕まえ、始祖の居場所を聞き出す事。是位しか出来ませんね。」

「一ヶ月後、その日に始祖が現れると言う事はないの?」

「それはないでしょう。なぜなら、“世界を終わらせて何がしたいのか”は理解しがたいですが、自分がわざわざ出向く危険を冒さないと言うのが我々の予想。きっと、自分の次に力の強い者を送ってくるでしょうね。」


 黙り込む全員。完全に中国系征儀伝が有利である。捕まえても、殺したとしても、次から次へと沸いて出てくる中国系征儀伝。始祖の居場所はわからず、期限は一ヶ月しか残されていない。相手は50人以上もの命を人質に撮っている状態。手出しが出来ないのが現状だった。




「ねぇ。」

 沈黙が続く中、凪沙が声を上げた。

「どうして黙ってたの、可憐?どうして中国系と戦ってるって言って、自分の無実を証明しなかったの?どうして急に学園を去ったの?コスプレの衣装が可憐の趣味じゃなかったの?」

 少し泣きそうな凪沙。しかし、可憐は無表情。感情が無いかと思われるほど冷淡に見えた。

「私が話をする番かしら。」

 名乗り出てきたのは、元保険医だった。ポケットから一つの液体ビンを取り出す。

「これが何かは、飲んだ事がある人なら分かるわよね?」

 その薬は、魔力を急速に回復させる代わりに、少々性格がおかしくなると言う効果を持つ謎の薬だ。

「それは分かりますけど…」

「泉さん、あなたの薬を見せてあげて。」

 無言で錠剤のビンを取り出した。それを受け取ると、皆に見せる様にする。

「この錠剤は、あなた達が飲んだ液薬の超強化版。魔力が回復する所か、魔力保持量を底上げする効果もあるの。だけどね…、この薬を一度飲むと、自我を失うのよ。暴走するって言う意味合いじゃなくて、感情が消される。泉さんみたいに…」

 自分の話をされてもなお、無表情な可憐。

「なんで…」

 慶斗がふと呟く。人を避けて、可憐の前に立った。

「なんで、なんでそんな薬を飲むんですか!?自分の感情を犠牲にしてまで、可憐は何を望むんですか!」

 元保険医が掴み掛かる慶斗を離そうとする。だが、スッと腕が伸ばされた。

「いい、私が話す。」

 

 ポケットから新たなビンを取り出すと、一錠だけ飲んだ。突然苦しみだす可憐。慶斗が慌てて抱きかかえた。呼吸も荒く、聞こえる動悸も激しい。だが、時間が経つに連れて、少しずつ安定していくのだった。

「慶斗さん。お久しぶり。」

 はっと顔を上げる慶斗。感情が込められた声。可憐の顔を見れば、笑っていた。

「可憐…?」

「そうだよ。本当の私。この状態で会うのは二回目だよね?」

 周囲の人間があまりの変わり様に驚いている。あそこまで無表情を貫き通していたはずの可憐が笑ったのだ。これには元保険医の話も信じるしかないだろう。

「勝手に学園を辞めてごめんね。でも上からの指示は絶対だったの。私の行動が、私自身を中国系征儀伝だと勘違いさせてしまったのが原因。慶斗さんが無実を証明しようとしてくれた時は嬉しかった。でもね、私に真実を語る権利はないし、語ってしまったら情報が漏れてしまう可能性もあったの。だから…」

 今語られる真実。ここに来てやっと、可憐の無実が証明された。

「可憐。もうあんな薬なんか飲むの止めてください。僕が助けます。一緒に戦います。だから、一人で頑張ろうなんて…」

 半泣きの慶斗が、涙ながらに訴える。しかし、可憐は無言で首を横に振るのだった。彼女の眼にも涙が浮かんでいる…

「ごめんね。私には薬を止められない。私の魔石、ほら、私って薬がないとこんなに弱いから…」

 生徒手帳のカードに納められていた可憐の魔石、その色は漆黒の輝きを失い、色褪せていた。暗緑色となった魔石からは、魔力の欠片も伺えそうに無い。

「それに、薬には依存性もあってね。私はこれから一生、あの薬を飲まなくちゃいけない運命なんだ。あ、慶斗さん達が飲んだのは、効能が薄められてるから、依存性はゼロだから大丈夫。心配しないで。」

 慶斗は泣くしかなかった。可憐に何も出来ない自分の不概無さ、自分自身を省みず、他人の事を心配する可憐の優しさ。何もかもが慶斗を悲しくさせた。

「泉君。そろそろ時間だ。」

「はい。分かりました。」

 慶斗から離れていく可憐。元保険医から薬のビンを受け取り、錠剤を口に含んだ。

「可憐、ここに戻ってきてくれる?」

「私には決定権が無い。」

 無表情な可憐が、振り向き様に答えた。

「何とか上とも掛け合ってみるよ。ただ、期待はしないでくれたまえ。」

・中国系征儀伝のまとめ

1 異常な身体能力の高さ

2 幻獣を召喚できる

3 魔石は緑色(始祖は青)

4 普通の人間でも薬を使えば一瞬にして中国系征儀伝になれる

5 元々征儀伝の場合、幻獣は魔獣のお化けの様な感じ

6 始祖は力の出し入れが可能(いくらでも手下を増やす事ができる)

7 純粋な中国系征儀伝は始祖一人のみ


・泉可憐について

1 中国征儀伝ではなく、本当にただのスペイン系征儀伝

2 ただし、特殊な薬を飲まなければ弱い

3 その薬によって感情が失われている

4 その薬の効果を打ち消す薬もあるが、それを服用すると激痛に苦しむ

5 征儀三重装甲などは、薬のおかげ

6 とある組織に属している


さてさて、泉可憐は中国系征儀伝ではありませんでした。中国系征儀伝が活動を始める中、これからどう話が進んでいくのでしょうか…

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