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新たな装甲征儀

 時は少し戻り、南陽学園の校門前。寮へ戻ろうとする学園生徒達の前に怪しい人影が現れた。全員が黒いマントを纏い、フードを目深に被っている。

「おい、あれって…。」

 誰かが気がつく。彼らは中国系征儀伝だと。

「確か、誘拐予告をしたはずだよな…?どうしてこんな所に…。」

 ざわめきが広がる。確信はないが、彼らが中国系征儀伝なら危ない。直ぐに逃げなくてはと言う考えが起こる。生徒達が少しずつ学園の校内に後戻りを始めた。


 だが、先程まで一言も喋らなかった相手が口を開く。

「お前らの魔石を貰いにきた。」

 次の瞬間、緑色の光を淡く発光させ、中国系征儀伝が生徒達に襲い掛かった。悲鳴が上がる中、中国系征儀伝に向って一筋の光が走った。急襲に驚くも、急遽進路を変更し、地面に降りる。光線の飛んできた方向を見上げた。

「やっぱり兄ぃの言った事は正しかったです。皆さん。準備は言いですか?」

 倉本家の屋敷で姿が見えなかった筈の慶斗、彼の姿がそこにあった。それだけではない。玲奈や類、凪沙を始めとした警護部のメンバーが屋上にいたのだ。

「先生の指示に従い、速やかに学園内へ避難して下さい!」

 玲奈の声が響き渡り、生徒に指示を出す。その間にも襲い掛かろうとする中国系征儀伝。

【モルディス】

 それに襲い掛かったのは、類のサメ型魔獣。鋭い牙の並んだ口で威嚇し、尾鰭で薙ぎ払う。生徒達の逃げ道を作り出していった。

「なぜ朱雀慶斗がここにいる。」

「兄ぃがあなた達の考えを読んだのです。僕や兄ぃは留美と関係がありますが、あなた方と留美には全く関係がありません。それなのに、あれだけ犯行日時までの期間が長く、大きな宣伝もしていた。兄ぃは、誘拐は囮、本当の目的はこの学園の襲撃だって気がついたんです。なぜここを狙うのかは知りませんが、兄ぃの予測は当たりました。僕らはこの学園を守る為に戦います。」

 魔獣に乗り、地上まで降りてくる。他のメンバーも彼に続いた。

「三年生のお二方と、凪沙、中里先輩は魔獣で攻撃を。僕と玲奈さんはアルマライズで行きます。」

【【アルマライズ・セグ】】

 二本の刀で切りかかる。玲奈も二挺の銃を装備した。これは、昨日龍夜が学園を発つ前に教えた作戦である。狭い空間内での戦闘では、援護型の凪沙の武器では分が悪い。また、三年生はアルマライズを未だ扱えない。類のモルディスなら中国系征儀伝のスピードに追いつき、質量戦を仕掛けられる。と言う要因から、この4人は魔獣での攻撃を行うのだった。

【バレ・デ・イーロ】

 氷の弾丸を大量発射する凪沙の魔獣。中国系征儀伝はそれを手足を使って砕く。身体能力の強化により魔獣の攻撃に耐えられる相手は、じわじわと慶斗たちの魔力切れを待っているのだ。

「せいぃっ!」

 慶斗が刀を構えながら突っ込んでいく。殺しはしない、峰打ちにするつもりだ。だが、中国系征儀伝はそんな甘い考えなど、持ってはいない。容赦なく慶斗に拳やキックを繰り出す。慶斗もなるべく急所は狙わないようにして刀を振るうのだが、身体強化を施した敵は素手で刀を握ってしまう。

「甘いな。殺そうとしない考え自体が甘い。お前の魔石は我々の欲する物でもある。奪わせてもらうぞ。」

「そんな事、させません!」

 瞳を真紅に染め上げる慶斗。魔力を大量に開放し、刀から魔力攻撃を行う。少々消費を強いられる技だが、緊急回避として使用できる利点がある。吹き飛んだ敵をそのままに、刀を地面に刺して一度に大量の魔力を注ぎ込んだ。

 大地が振動する。魔力爆弾と言っても過言ではないその衝撃は、小規模の地震を起こした。地面がひび割れ、中国系征儀伝がバランスを崩す。

「皆さん、今の間に攻撃を!」

 慶斗の作ったチャンスに乗じ、魔獣に上級征儀の発動を促す。玲奈も銃弾を雨あられと撃ち放った。

【召喚】

 生身では耐え切れないと感じたのか、中国系も幻獣を呼び出して盾を張る。

【エクスジェンシア!】

 慶斗もエンジェルを呼び出した。

「相手が身体強化能力を使えないように、攻撃にラグを作らないでください!」

 わざと攻撃のタイミングをずらす事で、連続で攻撃を放つ。かなり協調性が必要なのだが、同じ警護部で学んだ彼らなら無理な事ではないだろう。光や氷、雷、風と様々な属性の攻撃が連続で降りかかる。中国系征儀伝は防御呪文を唱える以外出来なかった。

 しかし、慶斗はともかく他のメンバーには限界が見え始めているのも事実。特に女子メンバーの疲れが顕著だった。それに対して、魔力保持量の多い慶斗、魔獣による攻撃を多用する類はそれなりに余力がある。

「朱雀弟よ、力を合わせるべきぢゃ。」

 隣に類がやって来る。どうやら、合成魔獣を示唆しているらしい。確かにギリシア系の慶斗と、スペイン系の類なら可能である。だが、慶斗は首を横に振った。

「いいえ。相手の数は多いです。攻撃力を上げるより、このまま人数で攻めた方がいいんです。」

 彼の言う事はもっともだ。5人程度とは言え、相手はいまだ詳しい能力が分からない中国系征儀伝だ。しかも自分たちは若輩で、征儀の扱いも長い期間やっているわけではない。それならばこの状況を続けた方が得策と言う物だ。


【主の命令です。全てを無形と化す変革の光を見せよ。エスクード・デ・ブライヤー!】

 巨大な光の弾が吐き出され、上空で爆発した。幻獣に降り注ぐ光の筋は、容赦なく幻獣たちにダメージを与えていく。幻獣の数体が消え、二人ほどを戦闘不能に追いやったのだが、慶斗にも限界が来ていた。

「万策尽きたようだな。こちらの番だ。」

 幻獣を消し、身体強化を施す中国系征儀伝。一気に突っ込んでくる。

【アルマライズ】

 ガキンと金属同士のぶつかる音がする。慶斗が見上げると、類が己の双剣で攻撃を防いでいた。

「朱雀弟よ、まだ戦えるか?」

「はい…」

【アルマライズ】

 白い刀を取り出し、次々と襲い掛かる相手に対応する。後ろからも魔力弾、矢などの援護攻撃も降ってくる。だが、その攻撃を掻い潜り、相手も攻撃を仕掛けてきた。

「はぁっ!」

「無駄だ!」

 素手で再び慶斗の刀を掴み、無理矢理奪い、後方へ投げてしまった。今の慶斗には、二つ目の刀を作る程の魔力は残されていない。

「朱雀弟!」

「余所見をするな!」

 類が慶斗のピンチに気をとられ、己の武器までも取られてしまった。前衛二人がいなくなった事で、援護攻撃をしていた二人は丸腰状態になってしまう。玲奈が諦めずに魔力弾を打ち込むのだが、魔力の残量が少ない為か威力に欠けている。このままでは全滅は必須だ…



【ライオ・デ・フェーゴ!】

【ボーラ・デ・メタル】

【アポール・デ・ビオレンシア】

 突然だった。中国系征儀伝に向って炎の渦、巨大な金属球が向っていく。突然の攻撃に一人がまともにそれを受けてしまった。

「待たせたな。やっと生徒の誘導が終わったんだ。ついでに腕の立つ奴も連れてきた。」

「Sランク。こんな事で負けるんじゃぁ兄貴には一生勝てやせんぜぃ!」

「うむ。今は共闘するべきだ。」

 学園から出てきたのは、慶斗たちの担任であるSクラス教師、クラス決定試験で戦った天馬鹿狩と一角獣誠也だった。三人とも装甲征儀は使えない物の、己の魔獣で攻撃を行っていた。

 ガクッと膝を付く慶斗。どうやら彼でも限界が来ているらしい。類が肩を貸してこの場を離れようとする。後ろでは魔力がまだまだ残っている三人組が、疲労気味の中国系征儀伝に攻撃を行っていた。

「天馬さん、一角獣さん。僕の言った呪文を使ってください。」

「うむ。」

 装甲征儀の基本概念を伝える慶斗。Sクラス並みの力を持つ彼なら使えるだろうと予想したのだ。

【主の命令だ。お前の力の一部を契約者へと渡せ。】

【主の命令でぃ。てめぇの力を契約者に渡せぃ。】

【【アルマライズ】】

 天馬の右手にパンチンググローブの様な皮革製の手袋が装着された。一角獣の足元には、金属製と思わしきタイヤのついたボードが。所謂スケートボードである。

「兄貴、乗ってくだせぇ!」

 一度頷くと、天馬は一角獣のボードに飛び乗る。右拳を構える天馬。そのまま中国系征儀伝に突っ込んで行くのだった。

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