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突然のアルマライズ

【【エクスジェンシア!】】

 慶斗のエンジェルドラゴンと、翔太の蝙蝠が出現する。先手を打ったのは翔太だった。

【主の命令だ。対象をふっ飛ばす竜巻を作れ、トルナ・デ・トルメンタ!】

 二本の竜巻が発生し、慶斗の方へと向う。

【エスクード・デ・ブライヤー】

 光の盾で防いだ慶斗。元々防御に秀でている慶斗のため、通常の呪文なら跳ね返せる力を持っていた。

【主の命令だ。疾風の刃で切り裂け。コルト・デ・トルメンタ!】

 再び翔太の攻撃。慶斗は先程の盾で防御に徹している。何故か学園に入学前の戦闘スタイルに戻っているのだ。しかも防御は全て第三文詠唱であり、度重なる翔太の攻撃によって疲労している。


「龍夜お兄様。慶斗お兄様はどうしたの?全く攻撃してないけど…」

「どうしたんだろうな…。最近は攻撃呪文もちゃんと使う様になったと思ってたんだが。…もしかしたら。」

 龍夜が何かに気が付く。その上、なにやらニヤッと笑っていた。それを不審に思ったのか、留美が龍夜に尋ねかける。

「簡単な事さ。慶斗はわざと負けようとしてるんだ。」

「えぇ!どうして!?」

「何故だろうねぇ?」

 わざとはぐらかす龍夜。しかし、彼は全てお見通しだった。“翔太は留美に好意を持っている”と。だが、無闇に彼女にばらしてしまうのも翔太に悪いと思っての“惚け”だったのだ。龍夜の推論どおり、先程慶斗と翔太の間ではこんな会話があった。

“慶斗、この模擬戦負けてくれないか?”

“どうしてですか?”

“何でもなんだ。頼む!もしこの条件飲んでくれるなら、夏休み明けに椎名にお前の女装を止めさせる様に言うからさ。”

“本当ですか!?分かりました。負ければいいんですね?”

 そんな理由で、慶斗は防御に徹すると言う戦法をとっているのだった。


【アルマライズ!】

 翔太が装甲征儀を使用する。高等呪文を使える事を見せて、自分の評価を上げるつもりらしい。先程の戦闘では龍夜がそれを使っていないので、初めて見るその呪文に驚いた留美。翔太の計画はうまくいったと言うことだろう。慶斗もやっと攻撃呪文を放った。しかし、第三文詠唱の上、意図的に的を外している。翔太はその攻撃を避けながら慶斗に接近した。一発だけ直線ルートで来たのだが、それは十文字槍で弾き返す。後五歩で慶斗の首筋に槍の刃が当てられる時…

「慶斗お兄様!負けたら承知しません。負けたら、慶斗お兄様が嫌がっていた“アレ”をするからね♪」

 その早口言葉が引き金となったらしい。

【アルマライズ・セグ!】

 慶斗の両手に白い刀と短刀を構えた慶斗。クロスさせて攻撃を防いだ。

「慶斗、お前何を?」

「すいません。でもこの模擬戦、僕が勝たないと駄目なんです。行きます!」

 慶斗の眼が一瞬だけ赤く光った。刀が発光し、翔太の槍を切ってしまう。それだけではなく、翔太は見えない力で押された様に吹き飛ばされたのだ。唖然とする翔太。今のは完全に物理的な攻撃ではない。魔法攻撃その物に感じた。これではまるで泉と同じ。慶斗も中国系征儀伝ではないか、と言う嫌な予感が翔太の頭を過った。チラッと龍夜を見やるのだが、彼は何か知っているらしい。特に驚いていなかった。

【エクスジェンシア!】

 しかし、余所見をしている場合ではなかった。刀を捨てた慶斗が魔獣を召還したのだ。既に赤く光る瞳は元の色に戻っており、魔力大量開放は終わっている事が伺える。エンジェルが翔太の前にそびえ上がるように召喚された。

【エクスジェンシア!】

 翔太も魔獣を召喚し、背中に乗って飛び上がった。慶斗が本気となった今、攻撃範囲の広い上級征儀を大量使用する彼と同じフィールドにいるのは危ない。自分に少しは分がある空中へと場所を変えた。

 だが、翔太は一つ忘れていた事がある。慶斗が今まで見せなかっただけの能力が。

「げっ、慶斗のドラゴンも飛べるのかよ!?」

 翼が付いているのだから、それ位は予測できたはずなのだが…。まぁ、空中での方向転換などでは翔太の方が勝っている。まだ勝機が無くなったと言う訳ではない。

【主の命令です。全てを無形と化す革新の光を見せよ。エクスプロ・デ・ブライヤー】

 翔太の予測通り、最初から上級征儀を撃ち放ってくるエンジェル。地上へ広範囲に渡って光の筋を落とす。翔太も魔獣に跨りながら光の筋を潜り抜けた。一、二発が当たってしまうが、大量に浴びてこそ意味のある攻撃の為、決め手とはならない。

【主の命令だ。疾風の翼で破壊の音を奏でろ。アジッタ・デ・トル…】

【トラーマ・デ・ブライヤー!】

 翔太の攻撃は強烈な光によって遮られた。光の正体は慶斗の魔獣、エンジェルから発せられたもの。“光の罠”とでも言うべきだろうか、強烈な光が翔太の視力を奪う。バランスを崩して墜落しそうになるが、何とか踏みとどまった。

「どこだ!?」

 視力が回復する頃には、慶斗と魔獣の姿が見えなくなっていた。

「ここだよ。」

 突然、翔太の右手側の空間が歪み、その中から魔獣が出てきた。その背中には慶斗の姿が。そう、罠が作用している間に光学迷彩で己の姿を消したのだった。

【ライオ・デ・ブライヤー!】

 光線が飛んで来る。急いで疾風の盾を張るのだが、あっという間にヒビが入り、そして砕けた。勢いが留まることを知らない光線は翔太の魔獣に炸裂する。序盤から攻撃を繰り出している為、翔太は弱い立場にある。いとも簡単に魔獣は消滅してしまった。重力に任せて落ちていく翔太。本来なら、風属性として風を操り地面に衝撃無しで着地できるのだが、今の彼はうまく魔力が練ることができないらしい。慶斗が駆けつけようとエンジェルを動かすが、機動力に劣る為、間に合わない。


【アルマ、…ライズ?】

 突然龍夜の隣で呪文詠唱が聞こえた。驚いて隣を見るのだが、旋風が龍夜を殴っただけで、誰も見えなかった。

「間に合ってよかったぁ~。」

 気が付けば、フィールドの真ん中で落下していたはずの翔太の襟首を捕まえて、空中に浮遊する留美の姿が。彼女の背中には巨大な純白の羽が生えている。まるで、彼女の使役する天使の羽の様だった。

「嘘だろ…?」

 顔に手を当てて、呆れ返った様に呟く龍夜だった。

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