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失踪Ξ パペル

今回で伏線をもう一つ回収

「学園を…去れ?」

「声の様子だと、薬の効果が切れているらしいな。」

「はい。それよりも質問に答えてください。どうして急に学園を去れなんて言う命令が?」

「そちらの状況は把握している。朱雀龍夜に正体を明かされたそうだな。しかも学園中に噂として広がっていると聞いている。」

「違います!あれは誤解なんです。彼らは私を…」

「薬の効果が出たか…。泉、これは上層部の命令だ。近々第二段階セカンド・フェイズに突入する。今の状況では活動が出来ないだろう。彼女・・を連れて我々と合流しろ。」

「はい。」

 電話はそれきり切られてしまった。無表情な顔の可憐がベッドに腰掛けていた。ベッドの上には錠剤が入ったビンが置いてある。可憐は机の中から別なビンを取り出した。それを一錠だけ飲み込む。強烈な痛みが彼女を襲うが、胸を押さえながら呼吸を整えようとする。やがて、痛みが引いてきたのか、立ち上がった。

「慶斗さん。本当はちゃんともう一度、お礼が言いたかったな。でも、ごめんね。コレでさよなら。もう会えないと思う。こんな私を信じてくれてありがとう。そして、裏切ってごめんなさい。」

 ペンを手にとる。紙に端正な文字で言葉を綴り始めた。それも終わったのか、自分の荷物をまとめ始める。元々持ち物が多くなく、10分程で終わってしまった。最後に、生徒手帳を手にとる。本来漆黒の輝きを放っていた彼女の魔石は、今では見る影も無くなっていた。鈍い黒と化した魔石は、太陽光を反射して緑色に見えなくも無い。可憐はそれをポケットに押し込んだ。トランクを引き摺り、部屋を後にするのだった。




 夏休みが始まる直前の事だった。朝の理事長室に三人の人影。この部屋の主、理事長と朱雀兄弟の二人だ。理事長のデスクには、一枚の紙と魔石の嵌っていない生徒手帳が置かれている。紙の方は可憐の直筆で書かれた退学届けだった。まるで機械が書いた様な文字で書かれている。

「朝起きたらこの紙があったと。」

「はい。可憐も既にいませんでした。申し訳ありません。僕が可憐の監視をするように言われていたのに…。」

「いや、特に問題は無い。注意人物が学園からいなくなった。少なくとも学園は安全になったと言う事だ。」

 理事長の言葉に、慶斗は顔を曇らせる。なぜなら、学園長自身も可憐を疑っていると宣言した様な物なのだから。そんな慶斗を見てか、龍夜が彼の肩に手を置いて話しかける。

「悪いな、慶斗。だが、泉が疑われている今、彼女から学園を去る事は、自分の正体が中国系征儀伝だと言っている様な物だ。疑うのはもっともだ。…そうだ理事長。泉がいなくなったので、また慶斗と一緒の部屋に戻してくれませんか?」

「そうだな、慶斗君。今日から龍夜君と同じ部屋に戻りなさい。」

「はい。分かりました。ではこれで失礼します。…理事長先生、可憐の残していった生徒手帳、しばらく預かっててもいいでしょうか?」

 少しの間悩んだ理事長だが、無言で頷いた。それを手に取り、大事そうに制服の裏ポケットに入れる。慶斗が理事長室を後にしようとすると、龍夜も後に続こうとするが…

「龍夜君、ちょっと残ってくれたまえ。」

 理事長に呼び止められるのだった。

 

「なんでしょう、理事長。」

 完全に慶斗が出て行った後、理事長はため息をついて話し始めた。

「朝一番に電話があったんだよ…。君が泉可憐と同じように疑っていた、例の保険医だが、今日を以ってこの学園を辞めたよ。行き先は言っていない。」

 龍夜の顔が険しくなる。疑っていた人物が揃って二人も学園を去っていったのだ。

「何か大きな事が起こる前兆…?」

「その可能性が高いと私は思っている。特にSクラスには警戒して欲しい。」

「はい。分かりました。」

「話はコレだけだ。」

 龍夜も理事長室を離れていくのだった。


 担任教師から改めて可憐の退学が伝えられる。唖然とする翔太と凪沙。凪沙は寂しそうな顔をしていた。

「折角新しいチャイナ服を作ったのに…」

 素直に別れを惜しんでいると言う訳では無さそうだったが…。かなりの確率で慶斗が犠牲になるだろう。

「さて、夏休みが直ぐそこまで迫っているわけだが…」

 可憐の退学を特に何とも思っていない教師を見て、再び慶斗は幻滅してしまうのだった。ふと誰もいなくなった隣の席を見るが、そこには無表情ないつもの顔、ましてや笑顔の顔は無かったのだった。



「さて、手駒は揃った。」

 とある一室で、十数人の部下の前に座る男が話を切り出す。彼の右手首には金属製の腕輪があり、それには緑色の魔石が埋め込まれていた。また、その彼の部下にも体のどこかいずれかに、同様の腕輪などが取り付けられていた。

「決起はいつでしょう?」

「この夏に神谷に布告をする。世界終焉へのカウントダウンが始まったとな。」

 士気をあげる中国系征儀伝達。その中に、少女の姿もあった。黒いローブのせいで分からないが、無表情のように見える。中国系征儀伝が動き出すまで、一ヶ月と少しの期間しか残されていなかった…。

さてさて。薬を飲んでいた少女は泉可憐でした。まだまだ伏線はあるので、色々予想してみてください。

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