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馬鹿↓ イディオータ

「こちらスネーク、基、玄武だ。そちらの状況を伝えよ。」

「こちらタートル、基、亀倉。順調に対象ターゲットを追跡中。」

 その日の放課後、二人はとある二人を追跡していた。玄武は慶斗を、亀倉は翔太だ。本当に闇討ちをかけるらしい。夕暮れも終わりかけ、暗闇が迫る頃、それぞれは二人を追っていたのだった。

「俺が追っているのは女子だが?」

「噂に寄れば、俺達の追跡を逃れる為の変装らしいぞ。はっ、俺達に掛かればそんな変装なんて意味を成さないがな!」

 とりあえず、元気のいい馬鹿二人だ。慶斗は夕食の買い物に向っているし、翔太も自分の寮に進む道を進んでいる。そして、作戦は決行された…。




「朱雀慶斗、覚悟ー!」

 後ろから鉄パイプを持って駆け出す玄武。闇討ち宣言をしておきながら、最後が馬鹿丸出しである。今日の夕食の献立を考えていた慶斗は、その声にはっと振り向いた。突っ走ってくる人影。

「中国系征儀伝?」

【アルマライズ!】

 白銀の刀を取り出し、鉄パイプを受け止めた。この二ヶ月で、剣術も少しは練習していた慶斗。ある程度なら攻撃を受け流すことができるのだ。

「俺の!俺のハーレム計画のために散れ~!」

 しかし、玄武も馬鹿力で慶斗を押し切ろうとする。普段からそこまで力が有ると言う慶斗ではないので、少しづつ押され始めた。可憐の様に、アルマライズの上で電撃攻撃ができる訳ではないので、力と力の勝負だった。因みに、慶斗がさり気なく可憐にその技の事を聞いたが、“潜在能力、あなたには無理”と返されて知ったのだ。元々アルマライズには契約者のスキル向上の効果もあるが、力を増すことはできない。この戦いは慶斗が不利だった。

「朱雀先輩の作った技か。だが、力負けするようではSクラスの名折れだな!」

「なんで中国系征儀伝は他の征儀伝を襲うんですか!」

「そんなの知るか~!」

 無茶苦茶に鉄パイプを振り回してくる玄武。必死に弾き返していく慶斗。しかし、下から振り上げられたパイプが慶斗の刀を飛ばしてしまった。

「はっはっはっ!ボコボコにされてDクラスまで堕ちると良い!俺が新たなSクラスだ!」

 鉄パイプを構えて走ってくる玄武。慶斗は丸腰。

【アルマライズ・セグ】

 突然慶斗が唱えた呪文。慶斗の左手に光が収縮し、先程よりも短めの刀が握られた。脇差と言った所だろうか。それを以って鉄パイプを受け止めた。

「なっ、さっき弾いたはずなのに!?」

「二本目の刀です。殺されるわけにはいかないのです。」

 刀身が短くなった分、振り回す速さが速くなる。今度は玄武の押される番だった。

「ちょ、待て!このチート野郎が!」

「兄ぃが晩御飯を待ってるんです。速くけりを付けなくてはならないのです。」

 自分の身より、龍夜の夕食が大切な慶斗であった。勢いに押されて、後退する玄武。そこに白銀の刀が飛んで来た。あまりの事に目を瞑る玄武。直ぐ目の前まで迫っていた。このままでは顔面に当たって死ぬだろう。

【エクスジェンシア!】

 しかし、慶斗の召喚呪文で刀は消え、その代わりにエンジェルドラゴンが現れた。アルマライズは魔獣の力の一部。大元となる魔獣を召喚すれば、武器は消えるのも当然だった。しかし、当の玄武は失禁している。内股になりながら立ち上がった。

「中国系征儀伝に対しては、魔獣の攻撃が許可されています。」

「ま、待て!俺はその、何とか征儀伝じゃない!ただのスペイン系だって!」

【主の命令です。光の弾で対象を打ち抜け。バレ・デ・ブライヤー!】

 大量の光弾が玄武を襲う。彼は自身の魔獣を召喚する暇もなくその攻撃を受けるのだった。後に残るのは、プスプスと音を立てながら焦げている玄武の姿だけ。全てを無形にするあの上級征儀を使わなかったのが、不幸中の幸いだろうか?

「警察に連絡して、僕は兄ぃの夕食を作らなくちゃなのです。」

 携帯をポケットから取り出し、足早にその場を立ち去る慶斗だった。



 場所は変わって、翔太を追い続けるタートルこと、亀倉。彼は玄武ほど甘くはなく、音を立てなければ大声を上げて襲い掛かることもしなかった。闇討ちの理由がもっとまともな内容だったら、どれだけ良かったことか。

【エクスジェンシア】

 寮の手前、亀倉が己の魔獣を召喚する。続いて呪文を詠唱、翔太の前に炎が灯った。炎の壁が現れ、翔太の逃げ場を無くしてしまう。

「誰だ!」

「青龍翔太、お前をSランクから引き摺り下ろさせてもらう。」

 茂みから出てきた翔太。こうやって、決戦のフィールドを用意する所は玄武とは違う。…目的は同じなのだが…。

「誰だか知らないが、返り討ちにしてやる。」

【エクスジェンシア】

 蝙蝠の魔獣を召喚する。やはり暑いのか、翔太は魔獣に乗って上空へ飛んだ。

【主の命令だ。疾風の針で対象を貫け!アグン・デ・トルメンタ!】

 上空から針を雨あられと放つ。いつもよりより広範囲を攻める為に、飛ばす向きを様々にする。シールドを張る亀倉。攻撃範囲の密度が低いせいか、何とか防御を成功させる。

【アジェット・デ・トルメンタ!】

 突進攻撃をする翔太。実を言えば、翔太は類から魔獣の攻撃力に関する指導を受けていた為、突進攻撃に関しては威力が底上げされているのだ。再びバリアを張る亀倉。しかし、それは蝙蝠の突進攻撃によって砕かれてしまった。

【バレ・デ・トルメンタ!】

 大量の疾風弾が降り注ぐ。バリアを張るまでも無く、無残にも攻撃を受けてしまった亀倉。魔獣も消えてしまい、戦闘不能の状態。

「さぁて、何が目的だったのかキッチリ教えてもらおうか?」

 手をポキポキと鳴らしながら、翔太が亀倉に歩み寄った。ヒィィィィと騒ぐ亀倉。逃げようと試みるのだが、その前に翔太に掴みかかられてしまった。嫌な笑顔をしながら翔太が問いただし始めるのだった…。



「なんだよ、つまらない理由…」

 30分後、プスプスと湯気を上げている亀倉を尻目に、翔太は自分の部屋へと戻っていくのであった。



「あ、翔太。」

「おぉ、慶斗。買い物帰りか?」

「はい。今日の夕食は兄ぃの大好きな物を作ろうと思いまして。」

「龍夜先輩の好きなのって、お前の女装…、なんでもないや。先輩にも宜しく言ってくれ。」

「はい。」

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