「ユカリの本当の身体」その2
「か、かみごろし?」
謎の言葉に首を傾ける。
「そう、神を殺せば一番得意とする神の権能を奪える、例えば・・・アリアンロッドの【時魔法】とか」
その名前を聞いた瞬間、私は神への冒涜を犯す提案を酷く拒んだ。
「だ、駄目だよ!神様を殺してまでそんな権能、いらないよ」
「“私が”いるの」
「な、何の為にそんな・・・」
私は説得しようとしたがユイさんの淀む眼が深く黒ずみ“負の感情”が剥き出す。
「神座に居座り高みの見物で大切な人を蛆虫程度で殺す神には地獄よりも恐ろしい死を与えてやる、神様はいつでも自分が上だと思ってるからバグから産まれた化け物の反応を見たい」
理由を言い終えるととユイさんは地図を渡して来た。
「もし興味があるなら受け取って、そしてこの下らない物語の真実を教えてあげる」
私は憎悪に満ちたユイさんの手紙を好奇心が勝って受け取ってしまった。
ユイさんは私の手を掴み手錠を壊して研究所最奥へ誘われた。
手を引くその手はどこまでも冷たく、とても生きてる人間とは思えなかった。
☆★☆★ ???
中に入るとそこは真っ暗で明かりが無い、私は指で炎魔法を
灯して進むとそこにはテーブルの上に一冊の手で抱えられるほどの大きさで分厚い本が鎮座していた。
「これに?」
私はユイさんに聞くと強く頷いた。
私は懐に隠していたロウソクを皿に置いて火を灯してからその本を手に取り、表紙を見た。
【終わりなき英雄譚〜】
見たことも聞いたことのない書物を開くとそこには・・・“私”が何度も何度も死んでお決まり文句とも言える“彼女は英雄になった”と最後の文書で終わっている。
どれも英雄とは程遠く、人の死を馬鹿にしたムカつく内容ばかりだった。
「酷い・・・」
ポツリと呟く私にユイさんは共感してくれた。
「神様ってさ、自分の目的以外に手を差し伸べないしユカリちゃんの事は文書を見る限り嫌いだと一目瞭然、きっとユカリちゃんには目的の為に何度も死んでもらってるからこんな適当に終わらせてるんだと思う」
神様なんかとっくに信じてないけど更に嫌いになった。
「・・・でも・・・やっぱり神様を殺すなんて・・・私は同意出来ないや」
あんな物を見せられても尚、私は神様を殺すなんて気が起きない。
だって、そんな事したら神様と同じになるじゃん。
目的の為に殺すなんてそんなことしたくない、神様と同じなんてこっちから願い下げだよ。