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闇を斬る音は無し  作者: 織風 羊
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40/63

40 繁栄の街

よろしくお願いします。



 「鹿を放しましょうか」


 とエリオットがパステルナークに尋ねると、


「既に我らが辿り着いていることは奴らも承知しているだろう。このままで、この姿のままで進もう」


 パステルナークがそう答えると、


「承知しました」


 とエリオットが答える。


 白い鹿が美しい庭園の中のような道を通り中心街へ進むと、数多くの店が並び始め

街は活気に溢れていた。


 立派なツノを持つ鹿を二人の人間が乗って歩いて行く様を、街の人々は横目で見ている。


 男達は此の国の上等な服を着て、女達は宝石類などで着飾っていた。


 不意に小さな男の子が店から飛び出してエリオットに話しかける。


「姉さん、その鹿の毛並みも立派だけど、そのツノも凄いよ、金貨1枚でどうだい?」


 エリオットは、少年が飛び出してきた店の方を見る。


 店の扉の横では案の定、太った店主がこちらを見ている。


 立派な鹿、然し鹿にまたがる女の服は決して豪勢とは言えない。

いや、それどころか見窄らしい事この上ない。


 旅の途中で金銭も使い果たし、この王都へ辿り着いたと判断したのであろう。

安く見られたものだ、とエリオットは思う。


 神の使いと言われている白い鹿

然もこれだけ立派に枝分かれしたツノを持つものもそうは居ない。


「だめだ、金貨5枚だ」


 と少年に伝えると、少年は片手を広げて5本の指を店主に向ける。


 店主は一瞬渋い顔をしたが、少年に頷くとエリオットの方を見てニコリと微笑む。


「帰りに寄る。そう店主に伝えると良い」


 エリオットの言葉を聞いて、少年は安心した顔を見せ、骨と皮だけになって、それでもお腹だけは大きくなった身体で、店主の方へ小走りに去って行った。


「金貨100枚でも安いのではないか?」


 とロルカがエリオットに言うと、


「冗談を言っている場合ではない、戦いは既に始まっている」


 それはロルカも分かっていた。


 此の街の者達は皆、裕福な暮らしをしている。


 それは既に妖魔の手に落ちた者達であり、欲望と共にしか生きられない者達である。


 いつの世も貧富の差は妖魔達の囁きから始まる。


 人は、それに打ち勝てるほど強くはない。

ありがとうございました。

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