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闇を斬る音は無し  作者: 織風 羊
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29/63

29 二から一

よろしくお願いします。



 エリオットは襲い掛かってくるキュウキに正面を向いたまま微動だにしない。

但し、左腕を相手に向かって前に出し、その掌は開かれている。

破岩術の構えである。


 キュウキが片腕を振り上げエリオットの眉間を目がけて、その爪を振り下ろそうとした時、エリオットの開かれた掌が結ばれる。

その瞬間、キュウキの動きが止まる。


 人間であれば、脂汗をかいて微動だに出来ない身体で、荒い息を吐いているところであろう。


 エリオットが冷ややかに笑みを浮かべると、


「ヤメロ」


 とキュウキがうめくように声を出す。

エリオットの笑みが消えると、結ばれていた拳が開かれる。


「死ね」


 その言葉と同時に、妖魔の身体が爆裂する。


 どこから来たのかその爆裂したキュウキの身体を飛び越えてエリオットの前にコントンが躍り出る。


 エリオットは、その攻撃を躱しながら、小型のクノーを放つが、コントンも上手く躱し、さらに太い爪を一振り浴びせ掛けようとする。


 その背後からロルカが水平に構えた破邪の剣を横殴りに入れる。


「ロルカ、危ない!」


 とエリオットの声がしたが、時、既に遅くコントンはロルカに振り向き、下から突き上げるようにして、その爪をロルカに入れる。


 またもや、エリオットのクノーが放たれ、それを避けるためにコントンが体制を崩す。


 コントンは素早く体制を整えようとしたが、その隙をついてロルカがもう一太刀入れようとする。


が、


「離れろ!ロルカ」


 と、もう一度、エリオットが叫ぶ。


 その声と同時に妖魔の足は土を蹴り、飛び散った土のかけらがロルカの目に入る。


 コントンはエリオットを警戒し、ロルカの背後に回り、ロルカを盾にしてエリオットを牽制しようとする。


 然し既にエリオットはロルカの背後に回ったコントンの背後に付き、後ろからクノーで脇腹を刺している。


 それと同時に、エリオットは頭上に破邪の剣を見る。


 ロルカも背後に回ろうとした妖魔の気配を感じ取り、コントンが背後に付いたと同時に、背を向けたまま、剣をコントンの首めがけて突き刺していた。


 コントンは身動きできず、前後から刺され、前のロルカと後ろのエリオットに挟まれたままだ。


 そして、ロルカはエリオットを背にしたまま言う。


「これで、二体づつだ」


「どうかな?」


 その時、コントンの腕が微妙に動いた。


「離れろ、ロルカ。こいつは、この程度では死なん」


 ロルカが大地を蹴り、急いでコントンから離れた時、コントンの爪がロルカ目掛けて襲い掛かった。


 同時にコントンから離れたエリオットが、


「ロルカ、伏せろ」


 それとほぼ同時にコントンの身体が大きな音を立てて破裂する。


 この時、エリオットが刺したクノーが自ら爆裂したかのように見えた。

が、違う。


 エリオットはコントンを一本のクノーで倒せないと判断し、脇腹に入れたクノーに念動力を仕込んでいた。エリオットが妖魔より飛び去り、仕込まれた念動力は行き場がなくなり爆裂したのである。


 エリオット独自の破岩術と言えば良いのだろうか。


 ロルカが上体を起こした時、既にエリオットは戦いの場所に背を向けて、ベルレーヌの方へと歩いていた。


 ロルカは今更のように、この小さな娘の力に驚愕の思いを抱く。

ありがとうございました。

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