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闇を斬る音は無し  作者: 織風 羊
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23/63

23 晩餐

よろしくお願いします。



 その夜はアラゴンの小屋で食事をする事になった。


 アラゴンは牧場に出て屋外の大きな釜戸に炭を入れる。

釜戸が充分に暖まったところで薬草を入れる。

薬草の名はテーゲ。

五感を鋭くする効能がある。


 釜戸の中にはレールの肉が入っている。


レールは中型の草食動物であるが、鋭い牙を持っていて肉食獣と同じくらいに勇猛果敢に襲ってくる。

もちろん身を守るためのものであるが、その所為で肉食獣でも滅多にレールを襲わない。

もしも襲う時があるとするなら、それは三日も四日も狩に失敗して空腹を抑えられない時くらいである。

そして肉食動物は返り討ちに会い、死肉は他の生き物の餌となり、土に還り山を育てる。

レール、それは草食動物にして動物界の頂点に立つものに相応しい存在である。


 薬草が濛々と白煙を釜戸から立ち昇らせ、レールの肉にテーゲの薬効が馴染んでいく。


 牧場の片隅で香り高い煙が空へと舞い上がっている。


 釜戸からの煙も薄くなって来た頃にアラゴンは釜戸を開けて、大型のクノーを腰から抜き、肉を一切れ裂いて、自分の口に入れてみる。


 アラゴンの顔が笑みで歪む。


 牧場小屋の中で既に二人が座っているテーブルへ大皿に乗せた肉が運ばれてくる

二人の真ん中にはホイット少年が座っている

ホイットは待ちきれない思いでソワソワしている

ロルカはそんな少年を横目で見ながら微笑んでいる


「元気で素直な子だ」


 そう思っている。


「肉は久しぶりだろう」


アラゴンが言う。


「私達を育んでくれている全ての食材に感謝する。アラゴン、ありがとう」


 とパステルナークが言う。


 当然のことであるが、剣は物を食べない。

しかし此処でも、アラゴンはもう一脚の椅子に立てかけられたパステルナークの前に小皿を置いて、大型のクノーで裂いた肉を載せる。


 その後に、それぞれがクノーで肉を裂き小皿に載せて食べ始める。


「美味い!」


 と少年が言うとアラゴンが大きな声で笑う。


「レールの肉だな、先程からテーゲの香りがしていたが、薫じていたのか」


 とエリオットが言う。


「明日には此処を立つのだろう? ならばレールの肉にテーゲの薬草が良い。余った肉は持って行くと良い」


 アラゴンが言うと、


「感謝する、アラゴン」


 とパステルナークが礼を言う。


 こうして皆でゆっくりと食事ができるのは今夜だけだ。


 いや、このような食事が何処の家庭でも毎晩のように安心して・・・。

必ず、その日を取り戻してみせる。

それは、此処に居る全ての者の思いである。

ありがとうございました。

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