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Re:flection  作者: Shirousagi
第一章 平凡な学園生活
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第3話 刻印

第三話です。よろしくお願いいたします。

 俺たちが黒服の職員に連れていかれた場所は小さな診療所であった。白塗りのコンクリート製の建物。恐らく、政府がこの島を学園島にする前からあるのであろう建物はところどころ、苔や蔦が生えていた正面玄関の上部には看板が取り付けられている。そこには“八重診療所”と書かれていた。


「診療所……私たち、何でここに連れていかれたのだろう?」


「さあな、検査でもするんじゃないのか」


「うーん、そうなのかな」


「……」


 職員は俺たちを整列させると、前に立ち、云った。


「今日、入島したグループDの諸君ら。長旅ご苦労である。早速で悪いが、これからこの島に入る上で伝えなければならないことがある。それは、この島に入島、及び入学した諸君ら総勢160名には3年間この島で生活していただく。例外を除き、島からの移動は出来ない。また、SNSによる投稿は制限される。そこまでは、伝えていたと思うが、不満も出ることだろう。故に、この島には、コンビニエンスストア、ショッピングモール等を設けている。

あらゆるものを本土から取り入れ、君たち生徒が今まで通りの日常に近い生活を送れるよう整えている。

また、SNSにおいても島独自のSNSを導入している。島のSNSでの投稿はマナーさえ守れば、投稿の制限はない」


 インフラ等の設備、により最低限の不満を取り除き、SNSにおいても島独自のSNSを導入することで、情報漏洩の可能性を減らしている。

 そして、彼らは説明を続ける。


「ここからは、学園の詳細だ。君たちには入学前にこの島独自のカリキュラム、魔術について話しておこう」


 ここで、魔術という単語が初めて上げられ、生徒たちからは、驚きの声が上がる。それもそうだろう。魔術など架空のものだ。現実にそんなことなどありえない。そう思うのが当然なのだ。隣にいた、妹、優莉も驚きを隠せずにはいられなかった。


「魔術って、あのアニメとか漫画の!?」


「……どうだろうな」

 俺自身もその魔術(・・)と呼ばれるものを見たことはない。王道である手から火や雷を出したり出来るものなのだろうか。それとも、魔方陣を描き、儀式的に行うものなのだろうか。興味がないわけではないが、それに副反応があるのであれば、使えるようになりたいとは、思わない。

 彼らは生徒たちが静まることを見計らいながら続ける。

 

「驚くことも、無理はない。何せ架空のようなもの。ファンタジーだ。そう思うのが当然だ。だが、私たち日本政府は開発に半世紀を要し、実現させた。誰もが魔術を使えるよう開発を進めた結果、実験的にこの学園において導入することとなった。……君たちからすれば、人体実験だと思うだろう。だが、既に数万回に及ぶ実験を重ねており、問題はない。本学園が試験的に魔術を導入し、最終的には本土の学園においても魔術を導入することも現在検討中である。そのための魔術学園、第一校というわけだ」


 副反応には触れず、この学園が試験用の学園であることを伝えた。だが、俺には本土における魔術導入はないと考える。なぜなら、魔術使用者が増えれば、確実に魔術における犯罪は発生する。発生した場合、誰が取り締まるのであろう。警察は魔術が使えないのだから、例え、強盗や殺人事件が発生したとしても、捕まえることはほぼ、不可能といえる。そして、魔術が外国に知られれば、どうなることになるのか、わからない。近隣諸国は戦争の前準備だと認識されてもおかしくはない。


「魔術を使用する者、魔術師(ウィザード)になる条件として、これから、刻印の受印をしてもらう」


「刻印って?」


「だから、俺に訊くな」


 優莉に前に立つ黒服の職員を指さすと、黒服の職員が刻印について説明し始めた。


「刻印を説明する前に魔術について話そうと思う。魔術は、超常の力であり、通常、発生しえない現象を発生させることを私たちは魔術と呼ぶ。例えば、一般魔術で炎、水、雷、岩、風は魔術師において、誰もが使用できる魔術である。使用する際、刻印へ魔力というエネルギーを流し、魔術を発動させる。刻印は儀式的な魔方陣を簡略するためのものであり、体内にある魔力は心臓に存在し、心臓から、魔力を取り出すための導線を魔力回路という。つまり、刻印は魔法陣の代わりである」


「良かったぁ。刻印って聞いていたから、入れ墨でもつけるのかと思ったよ」


「確かにな」

「にしても、魔力って心臓にあるんだね」


「みたいだな。……心臓か」


もし、魔力が心臓にあることが本当なのならば、魔力が尽きたとき、どうなるのだろうか。

魔力とはそもそも、なにを指したものなのだろうか。正直、わからないことばかりだ。調べる必要はありそうだな。そうして、刻印の受印は始まった。




 俺の番になると、診察室へと呼ばれた。診察室は一般的な病院と変わりなく、白一色で揃えられた、デスクや机、24インチ程度のモニターに一人用のベット。そして、俺の前には、医者と看護師がいた。医者は思ったより若い男性のようだ。診察室には嗅ぎ慣れた消毒液の香りが充満していた。


「私はこの八重診療所の八重壮二です。説明会で聞いたと思うけど、これから刻印の受印を行います。受印方法として、刻印形成液を注射により体内に注入します。接種後に副反応として、筋肉痛や頭痛が起こる可能性もありますので、接種後30分は診療所内にいてください。あと、接種後1日は運動をしないことです」


「はい」


彼は、俺の左腕の穿刺部位を決めると、アルコール綿でふき、皮膚をつかんで、持ち上げた。ちくりとした痛みと共に薬は投与された。液はゆっくりと、体内へ流されてゆく。今のところ、普通の皮下注射と変わらないようだ。


「はい、おわり」


「普通の注射なんですね」


「そりゃあ、そうだよ。違うのは液体だけなんだから」


「それもそうですね」


「今のところ、痛みはないかい?」


「はい、痛みはないですね」


「じゃあ、あとは待合室で30分ね。少しでも体調に問題が発生したら、すぐに近くの看護師、職員に伝えること」


「はい」


そして、俺はその場を後にした。




 あれから、30分が経過したが特に体調に異変は感じなかった。聞いていた通り、適正のある者のようだ。

 「痛かったぁ」


 「優莉、注射って苦手なほうだったか?」


 「痛いのは基本、苦手だよぉ」


  彼女の瞳にはうっすらと光るものが伺えるあたり、本当に苦手なのだろう。


「そうか」


 「そうだよぉ」


 「……それだけで済んでよかった」


「?」


彼女は首をかしげているが無理もない。副反応、適正がない場合、人ならざるものと化すのは公表されいていないのだから。

 俺は、あたりを見渡す。すると、女子生徒が職員に連れられて、奥の部屋へと向かっていった。体調に不調が見られたのだろうか。それが、適正のある者の副反応なのだろうか。それとも……

 俺は、診察所から出て、外の空気を吸いに向かった。外に出れば、心地よい風が流れ、眠気を襲った。昼寝にはちょうどいい日照りだった。



Re:flection、第三話を読んでいただきありがとうございます。そして、前回の投稿から約3週間ほど開けてしまい申し訳ありません。六畳一間執筆に予想以上に時間を要してしまい、遅れてしまいました。次回は予定通り投稿できるよう頑張りますのでよろしくお願いいたします。

次回は2週間後の金曜日です。よろしくお願いいたします。


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