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Re:flection  作者: Shirousagi
第一章 平凡な学園生活
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第2話 旅立ち

第2話公開です。よろしくお願いいたします。


3月末


 彼らの来訪から、4カ月が過ぎた頃、桜花島の入島まであと、三日という頃。俺と妹、優莉は入島までの準備に入っていた。準備といっても、服や生活必需品はすでに島へ郵送しているので、やることなど限られている。ということで、現在は優莉と二階建ての我が家を掃除していた。


 「三年間はもう、この家に帰らないからね。ちゃんと掃除しておかなくちゃ」


 妹、緋彩優莉。俺とは頭一つ程背が低いものの、容姿端麗である。髪は艶のある灰色でレイヤーミディという鎖骨よりやや長い程度でカットされている。妹でありながら、やや大人っぽさのある印象が伺える。


 「だな」


 俺は、窓を磨きつつ、彼女に応えた。


 「まさか、政府の命令で学園にはいれるとはねぇ……その上、毎月20万円の支給とはな

かなかに政府も太っ腹だね」


 「20万円するほどのことなんだろうな……」


 彼女がこの学園の事で知り得ている情報は魔術をカリキュラムに取り入れているということだけだ。まだ、受印していないため、副反応について、彼女は知らない。そして、この学園の目的についてもだ。俺から云おうとは思わない。わざわざ、云わずとも、三日後には分かることなのだ。なら、云う必要はない。


 「はぁ」


 「また、ため息?」


 「いや、窓磨いているだけなんだが」


 「分かりにくっ!いつものため息かと思ったよ」


 「俺、そんなにため息しているか?まぁ、兎に角、俺は行くのが面倒というだけなんだが

なぁ」


 「政府のおかげで、自宅警備員を辞させられて私はいいけどね」


 「……」


 そんなふうに思われていたのか。


 「さて、私のほうは終わったよー」


 「俺のほうも終わった」


 「三日後の午後12時には港に行ってないといけないからね」


 「だな」


 明日の朝には港に行くために新幹線で1時間ほど。そこから、バスで1時間半ほど。移動にかなりの時間を要する。今日はゆっくりとした時間を過ごそう。




 当日、俺たちは我が家に別れを告げ、島へと向かった。妹は初めての新幹線乗車にやや心配気味だったが、俺の後ろをおとなしくついてきたため、特に何事もなく、新幹線に乗車した。新幹線は快適で、窓から眺める景色はどれも見知らぬ景色で、新鮮だった。強いて云うならば、時速275キロ故に外ばかり眺めると目がちかちかする。妹はどうやら寝たりないようだったため、俺の肩を借り、身体を預けていた。時に俺の腕を抱いて寝るものだから、彼女の豊かな双丘が当たり、腕からは刺激的な女性らしい柔らかさを感じていたが、妹なのだ。特に意識することは無かった。

 一時間の新幹線の旅を終えると、駅舎から出て、バス停へ。バス停については、既に下調べ済みで、位置も頭に入っている。無駄のない足取りでバス停についた。数分後、バスが到着。俺たちはバスへと脚を運んだ。一時間半、俺は船旅に備え、寝ていた。正直、バスの終着点は俺たちの目的地である船場である。船の旅は俺も初めてのものであるため、どのようなものか分からない。もしかしたら、酔うかもしれない。故に今は体を休めておくのも必要だと思った。まぁ、バスの座席が固いものだから、休めたものでは無いが。因みに、隣に座る妹は酔っていた。先が思いやられる。

 バスのぷしゅう、というエアブレーキ音とぞろぞろと乗客が降りる音に俺はようやく、目を覚ました。どうやら、着いたようだ。バスから降りれば、潮の香りと共に爽やかな風が流れている。空を眺めれば、綺麗なスカイブルーが広がっていた。波も穏やかで、船旅には絶好の日だ。妹は俺の腕に縋りながら歩を進めていた。完全に酔っている。時間空けないとな。または、薬を探そう。彼女が酔いやすいことなどすっかり忘れていた。

 妹を木製のベンチに座らせ、俺は酔い止めの薬を探しに近くのコンビニに入る。

 予想通り、船乗り場近く故、酔い止めの薬は売っていた。俺は酔い止めの薬とお茶を購入する。


 「大丈夫か?」


 ベンチに腰掛ける妹に酔い止めの薬とお茶を差し出す。


 「ありがと」


 彼女は薬を口に含み、ゆっくりとお茶で流し込んだ。


 「船は一時間後だ。それまで、休んでいるといい」


 「うん……分かった……お休みぃ」


 彼女は隣に座る俺の肩を借り、再び眠りについた。肩を貸すとは云っていないんだがなぁ。俺は散策したいところだが、仕方がない。右ポケットからスマートフォンを取り出すと、”桜花島”と検索する。数秒後に映し出されたものは、桜の写真ばかり。つまりは検索ワード該当無しという結果だ。政府がこの島を昔から隠してきたということなのだろうか。だとすれば、昔は様々な研究をしていた施設なのかもしれない。大抵、島で行う研究など、非人道的なものだろう。魔術を適性値のある者に与える技術。そこまでに至るまでにどれほどの犠牲を経て実現したものなのだろうか。

 当然、桜花学園など、検索したところで見つかるわけはない。そういえば、俺や妹の場合、保護者といえるものがいないため、特に問題にもならなかったが、保護者のいる家庭ではどのようにして、保護者に説得、いや、説得などないか。強制なのだから。そのあたりはそこまで変わらないのかもしれないが、保護者にも口止めを行っていることだろう。学園への強制入学など通常ではありえない。マスコミに気づかれては国民からの批判も避けられないのだから。

 まぁ、俺にとって、学園のことなどどうだっていい。俺と妹が平穏な日常を送ることができるのであれば、それだけで構わない。




 一時間もあっという間に過ぎたころ、ようやく船が到着した。俺は妹を起こし、支えながら船に連れていく。


 「お兄ちゃんありがと」


 「別に構わない」


 「やさしいね……いつもより……」


 「今日だけだ。あと、いつもよりは余計だぞ」


 そう、彼女はいつも俺の生活を支えてくれたのだ。少しくらい、妹を助けなければ、兄であることを名乗れない。

 船に乗り込むと彼女を風の当たるところへ連れていき、横にさせる。椅子が見つからなかったため、今は俺の膝を枕にして、寝ている。寝ていたほうが、船酔いしやすい者には楽だ。

 俺は彼女に膝を貸している間、あたりを見回す。ここに乗船するものは今年、学園に在籍するものだ。なら、今のうちに、知っておくことも大切だ。

 俺の見える範囲にいるものは8人ほどである。男子生徒5人、女子生徒3人。生徒と会話するものもいれば、スマートフォンを眺めるもの様々だ。

 俺が気になったのは、男女のペアだ。茶髪の爽やかな髪形の少年と少年より頭一つセガ低く綺麗な黒髪のショートの少女だ。通常であれば、数分前に出会ったばかりの初対面に近しい関係にも関わらず、仲があまりにも良い。数分の関係とは思えない。そこからわかることは、適正値があれば、同じ中学からでも選ばれるということだ。適正値の高いものから選ばれているためか、それとも……


 「(つばさ)、あそこにうみねこさんがいるのです」


 「あーほんとだ」


 「みゃーみゃーかわいいのです」


 心地よい風の中をうみねこたちはみゃあみゃあと発声させながら俺たちの船の上を舞う。


「ほんとに猫みたいな鳴き声だな」


 「ですです」


 「俺たちの上を飛ぶあたり、餌でも探しているのか?」


「私たちは餌ではないのです」


「うみねこたちもそこまでは思っていないだろうと思うけどなぁ」


なにやら、彼らはうみねこの話題で盛り上がっているらしい。盗み聞きするほどのことでもないため、俺は聞くことをやめる。

 俺は膝で心地よさそうに眠る妹を見る。そして、頬に触れる。白い肌はもっちりとしており、いつまでも触っていられそうだ。そして、俺と同じ黒の髪に触れる。さらさらとした肌さわり。俺は彼女の頭を撫でながら、上陸の時を待った。



 船乗り場から一時間半。既に時刻も午後2時を過ぎたころ、ようやく島へ上陸した。

島は思っていたより、道路の整備はされており、ひび割れのない綺麗なアスファルト舗装であった。

 妹も酔い止めが効いているのか、先ほどまの表情とは程遠く、普段通りの姿を取り戻しつつあった。

 俺たちは船から降りたと同時に船乗り場に待つ、黒服姿の職員の指示のもと、職員に着いていく。

 聞いていた通り、荷物チェックはないようだ。だが、アレを使う場などあってはならない。ないことを祈るばかりだ。


 「どこに案内されているんだろうね」


 「さあな」


 俺は適当に返事する。正直、どこに向かっているのか予想はできる。今日、俺たちは刻印を受印するのだろう。受ければ、魔術と呼ばれる超常の力を得る。だが、それには危険はある。受印時の暴走。暴走させれば、その時点で不要と判断され、処理されることだろう。人体実験、それが、俺たちこの島の学園生徒の役目なのだから。

もし、卒業すれば、俺たちは地元に戻り、ありふれた日常を取り戻せるのだろうか。俺はその先を考えることをやめ、この島の景色を眺めた。


第2話 旅立ちでした。読んでいただきありがとうございます。Shirousagiです。最近は投稿作品の掛け持ちで正直、きついです。六畳一間が終われば、次回は新作品も投稿していく予定ですので、今後ともよろしくお願いいたします。


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