IF・EP02 女神様とお昼の時間
EP02、お昼ご飯の回となっております。よろしくお願いします!
お昼になると、俺は朝買ったコンビニ弁当を机に上げる。
「緋彩さんはコンビニのお弁当なんですね」
「まぁな、学食は人が多くてゆっくり出来ないしな。特にランチルームのテーブル争奪戦が面倒だ」
「窓際の席は人気がありますからね」
ランチルームは窓際からは自然の滝と木々が伺え、和の趣があるのが特徴である。見ていると心が安らぐとのことで絶大な人気がある。特に夏は窓を開けるだけで涼しい風が流れてくるのだから、学園側は電気代も浮き、一石二鳥である。
「にしても、水無月はいつも手作り弁当だよな」
「えぇ、弁当にしたほうが。栄養もバランス良く採れますし、経済的で良いんですよ」
「そうなのか?」
「そうなんです。お弁当は大抵、昨日の夕飯を詰めるだけですので、朝はそこまで時間もかかりませんし。やはり、自分でご飯を作ってしまうと、どうしても、多めに作ってしまうんですよね……」
「俺は料理が出来ないから、経済的とはいえ、難しいな」
「そうですか?私もそこまで得意とは云えませんが料理本を見ながらそれ通りに作れば味は良いものができますよ」
「そうか?料理本って結構大雑把な表現がされていて俺みたいな奴にいは理解不能なんだが」
「料理の経験が足りないからだと思うので経験を積んでください」
「はい」
俺はふと、気づいたことを訊いてみた。
「他の友人と食べなくてもいいのか?」
彼女はやや、困ったようなしぐさをするが、すぐに返答は返ってくる。
「お昼はみなさん、学食ですから」
「ランチルームで一緒に食べてもいいのでは?」
「いえ……そういうことではなくてですね……皆さんが私を応援しているというか、なんというか……」
「応援?」
「あ、いえ、その点はお気になさらず。私はこの静かな部屋で食べるほうが、気楽でいいですので」
「まぁな」
俺は同意する。大抵の生徒は自分で弁当なんて作ってこないため、学食である。一部の人間はコンビニの弁当を食べる奴もいるが。そのため、クラス内は数人の生徒しかおらず、静かなのだ。
「いただきます」
彼女は手を合わせ、云った。本当に彼女は礼儀正しい。それは彼女が纏うオーラ的なもので分かるが、その点からも彼女が恐らく良いところの家柄なのだろうと思われる。
「いただきます」
俺も倣って、手を合わせ、云う。まぁ、普段からやっていることなので、倣ってというわけでもないのだが。
俺は彼女の弁当をやや気づかれぬよう見る。まじまじと見たら失礼だしな。彼女の弁当は確かに栄養バランスが良さそうだ。そして、彩どりよく構成されているため、食欲が増す。特に卵焼きが丁度良い黄の色。旨そうだ。
「あの、卵焼きお好きなんですか?」
「まぁ、そうだけど。なんで?」
「ずっと見られていたようだったので」
「俺そんなに見ていたか?」
「えぇ」
気づかれていたようだ。
「悪い、食べづらかったよな」
「いえ、そこまででは」
「そうか」
「もしよければ、食べます?」
「え、いいのか?」
「えぇ、良いですよ。緋彩さんの弁当を見ていると栄養が偏っていますので」
確かに俺の弁当は唐揚げ弁当である。唐揚げが五つ入り、後は白米と少しのポテトサラダ。
「ブロッコリーもあげますよ」
「いいよ、水無月に悪いし」
「いいのです。緋彩さんの栄養が少しでもバランス良くなればそれでいいのですよ」
「分かった。じゃあ、頂くよ」
「はい」
彼女は卵焼きを自らの箸で取ると、俺に向けて差し出す。
「えっ」
「違いました?」
彼女は首を傾げる。本当に分かっていないのだろうか。それでは、間接……
「いや、水無月。それは……」
「私の箸では嫌でしたか?」
「そんなことない!だが、水無月はいいのか?」
「えぇ、気にしませんよ」
まじか。俺だけなのか、ここまで鼓動が高鳴り、頬が熱くなっているのは。だが、彼女の頬もよく見れば、頬が赤く染まっている。彼女、もしかして、知っていてやっているのだろうか。
「じゃあ、いただきます」
「召し上がれ」
俺は意を決して彼女が差し出す卵焼きを口にした。
「どうですか?」
「……旨いよ」
甘さは控えめでありながら、出汁の効いた卵焼きはとても旨かった。が、しかし、恥ずかしさのせいで、味覚と脳がフリーズして麻痺しているが。
「それは良かったです」
彼女の微笑みは”女神様”の名に恥じないものであった。それだけはキオクしている。このキオクはたとえ、どんなことがあってもこれからも残り続けるだろう。
EP02、読んでいただきありがとうございます!本話は読み切り版の修正版です。次回からは遂に新規エピソード……ではなく、一度SSを投稿させていただきます。来週の金曜には新規エピソードを投稿させていただきます。恐らく、あの子はでるかな?出来れば出します。ということで次回もよろしくお願いいたします。