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  作者: かな
20/20

眠るように…

コツコツ、とリノリウムの床に足音が響く

「運がいいですね、あなたも」と白衣に身を包んだ医者が、私を見下ろしながら言う

「まさか見つかると思わなかったわ」

私は、まだ若い身体を見下ろして、自分の皺だらけの手を見やった

「駄目なら駄目で、諦めようと思っていたのよ」

「誰もいなければ無駄に死ぬところでしたよ」

「ほんと、運がいいわ」

私は、吐き捨てるように言った医者に微笑んだ

「望みどおり、あの子は今やベストセラー作家になった夢を見ていますよ」

「最高に幸せな状態がいいわ。きっと神さまはいらっしゃるもの…」

私は、まだ若い私の手をとって、黒々とした髪を撫ぜた

「ちょうどお兄さまも安楽死でしたので、いい遺書も書けましたよ」

医者は私に印刷された紙を渡し、私はそれにざっと目を通した


夢が叶いそうになく、このままただ生きるのも辛い

けど両親を悲しませたくもない。だから、せめて亡骸もなく逝きたい

わがままをお許しください


というようなことが、連ねてある

「こんなもので納得するかしら?」

「悲しみの渦中では判断力も鈍りますから」

それよりいつにします? と医者は私を見ると笑った

私の身体を見下ろしていたときの、軽蔑したような雰囲気とは裏腹だ

私は、いつでもいいわ。と、興味もなさそうに呟いた

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