説明会
説明会は病院内にある会議室で行われた
あのチラシのQRコードを読み取ると、全国の中から好きな病院を選択することができた
どこでも主要な病院で説明が受けられるようで、一番近い病院を選び一番近い日付を選んだ
日にちはチラシで見たよりもたくさんあった
時間より少しはやく着くと、説明会はこちらと書かれた看板を目印に進む
歩いていくと、受付のあるのとは違う棟に説明会場と記されていた
入り口に携帯でコードをかざして鍵を開けて入る
場所は301とあったので、廊下を進み階段を見つけると3階まで登った
階段脇の案内板を参考に、301に入る
広い部屋には、それなりに人がいた
30代50代前半までくらいの人たちが大半で、20代や10代に見える子もチラホラいた
教卓には講師らしき人が座って資料をパラパラと捲っている
後ろにはホワイトボードがあり、お好きな席にどうぞ、と書かれてあった
私は薄い緑の封筒が置かれた机に適当に座る
そして封筒から資料を出して、ゆっくりと目を通した
しばらくすると講師の方は立ち上がり、ホワイトボードの文字を消すと人数と廊下を確認した上で扉を閉めた
講師は教卓から、安楽死にどんなイメージがありますか? と笑顔で問いかける
それから、死にどんなイメージがありますか? と
講師は誰も答えないのを確認して、ホワイトボードの端に、安楽死 死と書いた
字から見て、やはり安楽死とは安らかで楽な死に方だろうと…しかし死とは分からないから怖いものです
そして、講師はこれから実際の安楽死映像を見せると言った
部屋の明かりが落とされて、ホワイトボードに映像が写される
正直その映像はドラマで見る臨終のシーンとあまり変わりはなかった
ただ縋りついて泣く役者も、最期の言葉を残す役者もいない
ペースメーカーの波は映っていたが、それでもただずっと眠らされているだけの人を見てるだけな感じがした
これでどうですか? と言われても良く分からない
暗がりで周りの人を窺うと、みな胡乱な表情で画面を見ていた
講師はそれから部屋の明かりを戻すと、手続きのこと、キャンセル方法や、事前に入院するのかしないのかなど色々な説明を加えた
遺族に遺体を引き渡したくないのなら、その希望も汲むことができるという
提携の寺社で全て終わらせることも可能らしい
ただ、一応遺族にも確認は取らせてもらうとのことだった