朝
何だか全てが夢だったような気がする
ホテルの乾いた空気に少し喉が痛いと思いながら、今ここが自分の部屋なら良かったのに…と思った
天井を見上げて身じろぎをして、枕元の携帯で時刻を確かめる
それから止せばいいのに、昨日開いたページをまた開いた
加藤さんの、名前を文字ったペンネームにプロフィール
そしていくつか並んだタイトルと、購入ページへのリンク…
何で何で何で! とベッドの上でジタバタしながら、全て自費出版かもしれないと思う
けれど、わざわざリンクを開いて確かめる勇気も出なかった
起きるにはまだ早いが、寝直す気にもなれなくてアラームを消して起き上がる
シーツとタオルケットとを適当に小さくする
すぐにリネンルームに持っていこうと思ったが、パジャマのまま出歩く気にはなれず、まだ着替える気にもなれなかった
外には何が見えるだろうかとカーテンを開けてみるが、薄汚れたコンクリートの壁が見えただけだ
カーテンをまた閉めて、適当に畳んだシーツとタオルケットの上に座る
もう早く帰ろうよ、ここは私の居場所じゃない
そう思いながらも身体が重くて、シーツを広げるように寝転ぶ
昔読んだ話を思い出す
子供たちばかりの病室で、死期の近い子が窓際になって、窓を見ながら街の様子を話してくれる
だけど、本当はただの壁だったと知る話
でも、ただの壁でも想像力さえあれば、そこは活き活きとした街になる
帰ろう
私は起き上がってパジャマを着替えた
そしてまたシーツとタオルケットを適当に小さくして、荷物も全てまとめてしまう
ご飯は帰りながら食べようと、荷物とリネン類とを持って部屋を出た