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安全さんの安全良し!  作者: 猫羽ねむる
第1章 安全なダンジョン
9/65

安全さんはバージョンアップ

 

 2日間の休日を終えて、私は裏山ダンジョンに帰ってきたぞ。


「おっはようございまーす。」


 今日も良く私の声が響いてるな。


「おはようございます。」


「おはよー。リフレッシュできたかい?」


「それはもう、しっかりとしてきましたよ。それで今日は誰か来てますか?」


「今日も安全さんと百合の貸し切りですよ。」


「了解です。じゃあ着替えてきます。」


「はい、いってらっしゃい。」


 いつもの会話をしてロッカールームへ入ろうとするとロッカールームの扉には張り紙がしてある。


 なになに『以下の者がロッカールームに立ち入ることを禁ずる。 大白 百合』


 ・・・・・休んだ2日間で何があったんだよ。ま、まぁ安心して着替えられるようになったし良かったのかな?


 疑問のつきない張り紙のことを考えながら着替えたわけだが今日から新装備だ。

 と、言う事で気合いを入れて指さし確認。


「モフモフ毛玉フライトキャップ良し!防塵ゴーグル良し!防塵マスク良し!モフモフ毛玉パーカー良し!モフモフファーマフラー良し!モフモフ毛玉ハンド良し!モフモフ毛玉ズボン良し!モフモフ毛玉ブーツ良し!記録用カメラ良し!アイテムバック良し!ピコピコハンマー良し!安全良し!!」


 うんうん、新しい服装だと指さし確認も新鮮だね。

 しかしこの装備、こうやって見ると真っ白だな、汚れが目立ちそう。あと滅茶苦茶でモコモコで暖かいんだけど季節的にはこれから熱くなってくるのに大丈夫かな?


 ちょっと今後のことを考えながらロッカールームを出ると準備万端の百合さんが待っていた。


「お待たせしました。」


「大丈夫。私も今来たところだから。それよりもその装備かっこいいね!」


「ありがとうございます。モコモコなのに動きつらさもないし良い装備ですよ。」


「ふふ、頑張ったかいがあったね。」


「はい!それで装備を新調したので2階に挑戦しようと思っているんですが、良いですか?」


「ついに2階に行くんだね。良し、早速行こう。」


 そう告げた百合さんは私の手を取るとぐいぐい進んでいく。


「ちょっと待ってちょっと待って。先に1階の宝箱を確認しましょうよ。流石に放置は勿体ないです。」


「ふふ、残念だったね。1階に出現していた宝箱はもう確保済みだよ。ちなみに中身はポーション1本と空き瓶1本だよ。」


 ・・・・・・うん、宝箱なんて無かったんだね。


「最短ルートで2階に行きましょうか。」


「OK、じゃあこっちだね。」


 2階ヘの階段を目指してぐんぐん進んでいくのだった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 あれから15分で2階への階段ヘと到着した。


「まさか本当に敵対しないなんて。その装備すごいね。」


「私を完全に無視して百合さんに向かっていくとは思いもしませんでしたよ。」


「ホントにね。さて、この先が2階な訳だけど佳奈ちゃんは立ち入った事は無いんだよね?」


「一応、階段の一番下の段から階層を見たことはあります。」


「じゃあどんなモンスターが出るかは知らない感じかな?」


「それも今回のお休みで調べてきました。通常モンスターが『ナンノグラス』でレアモンスターが『ヒーリンググラス』。それぞれ雑草と薬草のモンスターですよね。」


「予習してきたんだね。それだけ知ってるなら十分だから2階に行こうか。」


 さっくり確認を終えた百合さんは颯爽と階段を降りていく。

 私はその後を追いかけゆっくりと、そして警戒を強めながら降りていった。


 階段の一番下までたどり着いた。ここから一歩でも出れば2階だ。


 まずは音を聞いて、異音なし。次に階段から顔だけ出して右から左までを見て、左から右までを見る。そしてもう一度右から左までを確認して、安全良し!


 階段周りの安全は確認できた、いざ2階へ。


、こうして私はついに裏山ダンジョンの2階へと足を踏み入れる事ができた。


「佳奈ちゃん。2階に初めて入った感想はどうだい?」


 どこまでも続く空と草原。そこに吹き抜ける風に混じる土の香り。


「外にいるみたいです。」


「じゃあこっちに来てここを触ってみて。」


 百合さんが指さしたのは階段の横の草原。

 そこにも草原が続いているように見えるが・・・・。


「壁がありますね。」


「うん、ここから先は壁に映された映像なんだ。」


「本物と見間違えるくらいにリアルですね。」


「リアルすぎて壁ぶつかったって言う話はよく聞くから注意するように。」


「了解です。」


「正直、気をつけていようがいまいが、ぶつかる時はぶつかるんだけどね。」


 よく観察すれば壁の草原と本物の間には不自然な空白帯があるし動きが違う、ような気もしないでも無くも無い?


「風が吹いているとすごく分りにくいですね。」


「そうだね、走ってたりしたらまず見分けが付かないよ。壁についての話はこの辺にして少し探索してみようか。」


「はい。」


 返事をしたのは良いけど、目の前に広がっているのは腰丈の草に覆われた草原。

 もしかして草を刈りながら進むのかな?


「百合さん、私、草を刈れる物を持ってきてないです。」


「このダンジョンではそんな物は無くても大丈夫だよ。ほら。」


 そう告げた百合さんが草原へと足を進めると進行方向に生えていた草がキーキーと鳴きながら両側の草むらの中へと逃げていき道が現れた。


「ナンノグラス、居たんですね。気がつきませんでした。」


「ぱっと見、雑草にしか見えないから気がつかないのも仕方が無いよ。実は見えている雑草の3本に1本はナンノグラスなんだよね。」


 えぇ、3本に1本はちょっと多くないかな?

 いや雑草のだから普通なのか?


「もしかして草刈りすれば大儲けできます?」


「残念だけどそれは無理だよ。」


「どうしてです?2階のモンスターの魔石の買い取りは200円でしたよね?」


「普通だとそうなんだけどナンノグラスはちょっと違うんだ。倒してみると分るんだけど取れる魔石がとても小さいんだ。こんな感じに。」


 そう話しながら百合さんは直ぐ側に隠れていたナンノグラスを倒し魔石を見せてくれた。


「確か魔石の値段って大きさとか純度で決まってましたよね?これモフモフ毛玉の落とす魔石の10分の1くらいの大きさしか無いですよ?」


「そうだね。だからこの魔石の値段は10円でしか売れなんだ。刈り取った他の雑草に紛れた魔石を探す手間とかを考えると割に合わないでしょ?」


「確かにこれは厳しいですね。」


 草刈り機とか除草剤を使うだけで大儲け出来るかと思ったんだけど、ちょっと残念。


「そこで提案なんだけど、正直この階層ではお金を稼ぐのは難しいからもう一つ下の階にに行ってみないかい?」


「下の階については何も調べてないんですが。」


「大丈夫、ここに双葉から預かった資料はあるよ。」


 百合さんから手渡されたのは双葉さん印のダンジョン資料。

 さては百合さん最初から3階に連れていくつもりだったな。


「少し時間を貰っても。」


「良いよ。」


 階段に腰掛け資料を隅から隅までしっかりと読み込んでいく。

 資料を読んだ感じは3階に行っても問題なさそうかな?


「お待たせしました。」


「もう良いのかい?」


「はい、しっかりと読み込んだんで大丈夫です。」


「それじゃあ出発っと言いたいんだけどナンノグラスが隠している道を探しながら進む正規ルートと、目的地まで一直線に進む直進ルートどっちが良い?」


 まぁ、階段とか宝箱の位置が見えちゃってるもんね。

 普通なら直進するんだろうけど私の場合は安全第一。


「正規ルートを通りましょう。」


「OK、じゃあスタートはここだよ。」


 さっき百合さんが踏み込んだ場所がスタート地点だったらしい。

 そこに立てば目の前には雑草にしか見えないナンノグラス達がさわさわと風で揺れている。


「ちなみに道以外の場所を通っても攻撃してきませんか?」


「して来ないね。ナンノグラスは生き物が近づいてくると逃げ出す。そう言うモンスターだからね。」


 逃げて攻撃してこないなら安全は約束されたような物かな?


「よし、行きます。」


「・・・・・。」


「・・・・・。」


「・・・・佳奈ちゃん?」


「なんですか?」


「一歩も進んでないよ?」


「だって、目の前の草むらが全部ナンノグラスですよ?もしかしたら攻撃してきて怪我するかもしれないじゃ無いですか?」


「ないない。このダンジョンのモンスターは一般人が私服で来ても怪我しないレベルなんだよ。ダンジョン装備を装備している佳奈ちゃんが怪我するわけないじゃ無いか。ほら行くよ。」


 いつの間にか現れた3人の百合さんに背中をぐいぐい押され強制的に前進させられる。


「あっ、ちょっと待って。本当に待って。まだ心の準備がー。」


「あははは、その心の準備は永遠に出来ないって双葉から聞いてるよ。さぁどんどん進むぞー。」


「そんなー。」


 抵抗むなしく安全さんは悲鳴を上げながら草原を進んでいくのであった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 百合さんに押される事10分。私達は3階への階段の前にたどり着いた。


「ひ、ひどい。」


「ごめんごめん。ちょっと強引だったね。」


「ちょっとじゃ無いです。途中から完全に道を外れていたじゃ無いですか。」


「あはは、佳奈ちゃんすごい悲鳴上げてたもんね。でもほらナンノグラスは自分から避けてたし安全だったでしょ?」


 それとこれとは話が別だと思うんだが・・・。


「はぁ、これ以上は言わないですけど、次、同じ事をしたら許しませんよ?」


「わかった。嫌われたくないから肝に銘じておくよ。さて、この階段の下は3階だけど準備は良いかい?」


「駄目でも行くんでしょ?」


「ふふ、嫌われたくないから佳奈ちゃん次第かな。」


「・・・・いじわる。」


 若干やけくそ気味の私を先頭に安全を確認しながら1歩1歩確実に階段を降りていく。

 階段の最後の段。本日二回目だが確認は大事。


 音を聞いて、問題なさそう。顔だけ出して右見て、左見て、前見て、もう一度右見て。安全良し!!


 と言うことでやって参りました裏山ダンジョン3階。


「見た感じは1階に似てますね?」


「そりゃあ同じダンジョンだし大きくは変わらないよ。」


 ちょっと期待外れ?


「折角3階まできたんだしモンスターを狩りながらトレジャーポイントを巡ってみようか。」


「そうですね。ってなんか近づいてきてませんか?」


「本当だ。よく気がついたね。」


 ここは新しい階層なのに百合さんはのんきだな。


「ここで迎え撃ちます。」


「了解。じゃあ私達は後ろで見てるから、一人で頑張ってごらん。」


「はい。」


 百合さん達が後ろに下がりピコピコハンマーを構えて戦闘態勢を取ったところで通路の先の暗闇からそのモンスターは現れた。

 ふわふわでモコモコな毛、特徴的な長い耳、ぴょんぴょんと跳ねながら姿を現したのはこの階層のモンスター『ふわふわ兎』だ。


 ・・・・資料に載っていた写真よりもかわいい!

 けどモンスターだもんね。容赦はしないよ。


 近づいてきたふわふわ兎にピコピコハンマーを振り下ろせばピコッといういつもの音を出し、ふわふわ兎を魔石ヘと変えた。


 よしよし、この階層でもピコピコハンマーで問題なさそうだね。


「お疲れ様、きちんと倒せたようだね」


「もしかして倒せない可能性もあったんですか?」


「ほら、ふわふわ兎は可愛かったでしょ?可愛い生き物はどうしても倒せないって言う人も居るんだよ。」


「へぇ、私からしたら可愛かろうがモンスターはモンスター。可愛い云々で躊躇してたらいつか死にますよ?」


「その考えが正しいんだけど、まぁ世の中には色々な人が居るって事だね。」


 残念ながら私には理解できそうもないな。


「問題なく倒せることも確認したことだしトレジャーポイントを巡ろうか。」


「ですね。」


 その後はそこそこの頻度でふわふわ兎に遭遇しながらも順調に3階のトレジャーポイントを巡り宝箱を見つけることが出来た。


「ここでも木彫りの宝箱なんですね。」


「仕方が無いよ。このダンジョンではそんなもんさ。中身を回収したら一度戻ろうか。」


「もうそんな時間ですか?」


 時計を確認すればもうすぐ12時だ。

 もうこんな時間かと思いつつも、いつもの開け方で宝箱を開け中身を確認する。


「あれ?なんだこれ?」


 宝箱から出てきたのは薄い緑色をしたポーションが2本。


「おっ珍しい物が出たね。色的に最下級のアンチポイズンポーション、飲むと弱い毒耐性が付くポーションだよ。」


「こう言う物が宝箱から出るって事はこの先の階層には・・・。」


「裏山ダンジョンに毒持ちのモンスターはいないよ?」


「・・・・そうですか。」


「なんかごめん。」


「いえ、帰りましょうか。」


 なんとも言えない気持ちになりながら来た道を戻るのであった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「ふぅ、戻ってきた。一応レベルとかも確認しとかなきゃね。」


 え~とレベルは11で変化なし、TPは718で+72。

 24匹で72TP貰えてるから3階だと1匹倒せば3TP貰えるのかな?

 階層とポイントの関係は要検証が必要っと。


「百合さんお待たせしました。」


「こまめなチェックは大事だからね。カウンターで双葉と白が待っているから行ってあげな。」


「はい!双葉さん、百合さんただいまです。」


「おかえりなさい。」


「おかえり。」


「買い取り希望の品はこちらにお願いします。それで2階はどうでしたか?」


「実は2階をスルーして3階に行ってきたんですよ。」


「そうでしたか、ふわふわ兎は問題なく倒せましたか?」


 あれ?あんまり驚かれないんだね?この反応的に裏山ダンジョンでは2階をスルーするのは普通なのかな?


「問題なく倒せましたよ。はい、今日の分はこれだけですね。お願いします。」


「あら、アンチポーションも出たんですね。珍しいですね。」


「このダンジョンじゃ使わないって聞いたんで売っちゃおうかと。」


「そうですね。このダンジョンに潜っている限り邪魔になるのでそれで宜しいかと。では検品をしてきますので少々お待ちください。」


 双葉さんは奥の台へ行き検品を始めた。


「そうだ百合さんちょっと聞きたい事があるんですけど今良いですか?」


「もちろん良いよ、なにが聞きたいんだい?」


「ダンジョン装備ってクリーニングとかに出せるんですか?」


「だせる、けどセキュリティ的に盗まれる可能性があるから普通のところには出さない方が良いかな。」


「やっぱりそうなんですか。」


「だから基本的には探索者協会のクリーニングサービスか浄化のポーション、もしくは生活魔法を使える人に頼んでクリーンを掛けて貰うの3択なるね。」


 そんなサービスがあったんだ。他にも知らない便意サービスがあるかもしれないし探索者協会について調べ直した方が良さそう?


「まずクリーニングサービスはサイズと材質は問わずに一律3000円でやってくれる。補修も状態にもよるけど追加で5000円くらい出せばどんな傷でも直して貰えるから必要そうなら使ってみて。」


 補修は使うか分らないけどクリーニングは今度休みを取る時に利用して見ようかな。


「次に浄化のポーションは受付で1000円で売っているんだけど装備に振りかけるだけで汚れや匂いが落ちる優れ物、なんだけど着色してある色なんかも取れちゃうから使用するには注意が必要だね。」


「そのポーションは肌についても大丈夫なんですか?」


「その辺は大丈夫だよ。ただ髪とかを染めてたりすると色が抜ける事はあるね。検品が終わったみたいだから先にそっちを終わらせようか。」


「あら、良いんですか?では確認をお願いします。」


 金額は魔石が1つ300円で24個あるから7200円。最下級アンチポイズンポーションが

 1本3500円の2本で7000円。合計金額14200円也。


 問題なさそうだね。サインサイン。


「はい結構ですよ。こちらが控えになります。それでさきほどはなんのお話をされていたんですか?」


「ダンジョン装備の洗い方について聞いてたんです。」


「なるほど。百合、説明の続きをどうぞ。」


「じゃあ続きね、最後は生活魔法のクリーンについても話しておこうか。」


「魔法って言うところにすごく惹かれます。」


「期待しているところ悪いんだけど生活魔法はそんなにすごい物じゃ無いよ?たとえば光源を作り出したりコップ一杯の飲み水を出したりする事が出来る程度の魔法なんだ。」


 十分すごい、光源が出せれば電気の節約になるし飲み水が出せるようになれば水筒が要らなくなる。ついでに装備を綺麗に出来るんでしょ?是非とも欲しいです。


「生活魔法はどうやったら覚えられますか?」


「お、おう。佳奈ちゃん。私的には嬉しいんだけど顔が近いよ。」


「・・・失礼しました。それでどうやったら覚えられるんですか?」


「それは色々な方法があるけれど、一番簡単なのは魔法に適性を持っている人がスキルスクロールとかのスキルを覚えれるアイテムを使うことかな。」


「そのアイテムのお値段聞いても良いですか?」


「ん~と相場はどれくらいだったかな。」


 横からすっと端末が出てきた、


「参考価格ですがどうぞ。」


「ありがとうございます。」


 さてお値段は・・・・・表示されている物は最低でも100万円。しかもスキル獲得率10%しかないのか。


「これはちょっと手が出ないですね。」


「ですよね。確率10%のアイテムに100万は流石に手が出ませんよね」


「100%の奴なんて5000万ですよ。これで売れるんですか?」


「売れますよ。さっき百合は大した事は無いって言いましたけど、生活魔法は所持していれば探索者をやめて職にありつけるようなスキルなので下手な戦闘スキルよりも人気なんですよ?」


 そっか、じゃあ手に入れるのは難しいか。諦めてポーションを使うか。


「あーゴホンゴホン、佳奈ちゃん。実こんな物を持っていてね。」


 わざとらしい咳をしながら百合さんが差し出してきたのはチケット?


「これ生活魔法のスキルチケットじゃ無いですか。」


「双葉さん、なんですかそれは?」


「これは1%の確率でスキルを習得できるチケットです。そして百合が出したこのチケットは生活魔法の物です。」


「おぉ、すごい・・・のか?」


「良くも悪くも1%ですから販売価格も10万円と比較的お安く、運試しで購入される方も多いですね。」


「ここにある4枚のチケットをあげようか?」


 滅茶苦茶欲しい、欲しいんだけど。


「対価はなんですか、もしかして体で払えとか。」


「それも魅力的だけど違うよ。いや違わなくも無いか?」


 ・・・・ちょっと離れてっと。


「あ~違う違う離れていかないで。私も生活魔法は持っているんだけど、私が使っている全ての装備にクリーンを掛けるのが大変だから手伝って貰いたいと思っただけだよ。」


「なんだ、そんなことですか。もしかしてとか考えちゃったじゃ無いですか。」


「佳奈ちゃんは私をなんだと思っているのかな?」


 そりゃあ、ある意味危険人物?


「まぁ、その辺は今度じっくり聞く事にするとして、正直、千人以上の装備にクリーンを掛けるのって半日仕事でさ。もし手に入れることが出来たら報酬を出すから手伝ってくれないかな?」


 1000人以上の武器と防具だもんね。そりゃあ大変だよね。


「百合、安全さんに魔法適性がある前提で話してますけど先に調べるのが先じゃ無いですか?」


「おぉ、それもそうだ。佳奈ちゃん、鑑定しちゃっても良いかな?」


「どうぞどうぞ。」


「では失礼して。」


 そう言いながら取り出したのは少し豪華な鑑定眼鏡。


「あっ。」


「双葉さん、今の意味ありげな『あっ』はなんですか?」


「いえ、今、百合が掛けている上級の鑑定眼鏡を使うと色々見えてしましまして。」


「色々、例えば?」


「スリーサイズから健康状態まで本当に色々な物が・・・。」


「百合さん。」


 百合さんの顔を見れば、めっちゃニヤニヤしてるぅ。


「ふむふむ、すごく佳奈ちゃんってすごく健康的だね。」


 危険視されてるのはそういうとこですよ?


「健康状態じゃ無くて適性の確認してください。後、知った情報は誰にも言わないで下さいよ。」


「分ってるよ、二人だけの秘密だね。それで佳奈ちゃんには魔法の適性が・・・・・問題なさそうだね。どう?挑戦してみない?」


「本当に良いんですか?不発に終わるかもしれないんですよ?」


「むしろそちらの可能性の方が高いから気にせずやっちゃってよ。」


「じゃあ、ありがたく使わせて貰います。」


「それじゃあどうぞ。」


 手渡された4枚のチケット。

 実際に触ってみると普通の紙のチケットにしか見えないんだよな。


「これはどう使えば良いんですか?」


「持った状態でスキルが欲しいと願うと使えるよ。」


「願うだけで良いんですね。早速いきますね。」


 1枚目、塵になって消えた。


 これは失敗で良いのかな?


「失敗だよ、成功の時は直ぐに分るから続けて。」


 では気を取り直して、2枚目、塵になった。

 3枚目光った?


 光り出したチケットは粒子となり私の体へと入っていった。

 ・・・・・もしかして獲得した?

 す、ステータスオープン。



 名前:安全寺(あんぜんじ) 佳奈(かな) 

 誕生日:2月9日

 年齢:22

 レベル:11

 スキル:宝くじLv1 生活魔法Lv1



「百合さん、双葉さん。」


「見てよ、おめでとう!」


「おめでとうございます。つきましては探索者協会からも依頼がありまして。」


「待つんだ双葉、私が先でしょうが?」


「あら、そうでしたか?」


「こういう時にすっとぼけるのは昔から変わらないね。」


「はて何のことやら?」


 ここで「私を取り合って喧嘩しないで。」みたいなことを言えたら良かったんだろうけど高レベルの元探索者2人に割って入るのは危険だと判断したので大人しくしておく。

 さて、長くなりそうだし生活魔法で何が出来るか調べながら待ってようかな。

 

■レベル11

■所持ポイント718TP(+72)

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