表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メイちゃんが大魔王になるまで  作者: 畑田
4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/155

4話 記憶喪失

 

「カーラ、サイコス殿と結婚しなさい」


「…え?どうして?」


 毎年恒例の貴族の社交界の4日目、父さんが急に変な事を言ってきた。頭がおかしくなったんじゃないだろうか。


「カーラもいい歳だ。そろそろ結婚してもらわねば困るんだ。それくらい分かってくれ」


 …やっぱり、頭がおかしくなっているようだ。記憶喪失なのかな?


「父さん、ボクはもう結婚しているんだよ?忘れてしまったの?」


 ボクがそう言うと、父さんは何故か頭を抱え、疲れたような表情をした。


 そして父さんは、ため息をついた後、冷たい目をしながらボクに言った。


「…カーラ、お前はまだ結婚していない」



 ♢♢♢



 …はあぁぁ。少し面倒な事になってしまった。どうやら父さんは大切な記憶がなくなっているみたいで、メイの記憶がすっぽりと抜けてしまっているみたいだ。…どうしよう。メイが居れば、改めて紹介出来るけど、今、メイは天界という所に出かけているからなぁ。


 そんな事を考えている間に、父さんは『サイコス殿を呼びに行く』と言い、行ってしまった。


 サイコスがメイの事を知っていれば、サイコスに説明してもらう事も出来るけど、2人は一度も会ったことがない。…どうするべきか。


 父さんは、ボクが言った事をきちんと聞いてくれない事が、たまにある。今回は、それに当てはまる。自分の記憶がなくなっているにも関わらず、ボクの事を否定する。ボクは基本的に父さんの事が好きだけど、こういうところは直してほしい。


「カーラ!!」


「あ、サイコス」


 そして、ボクの名前が呼ばれて振り向くと、父さんがサイコスを連れて戻ってきていた。


 父さんに何を言われたのかは分からないけど、サイコスは凄い笑顔でボクに近づいてくる。もしかしたら、ボクと無理矢理結婚させられる代わりに、何かしらの報酬が得られるよう、父さんに丸め込まれたのかもしれない。でも、ぬか喜びしてしまっているサイコスには悪いけど、ボクは既に結婚しているし、もちろんサイコスと結婚するつもりはない。


「カーラ!俺と結婚してくれるんだってな!嬉しいよ。凄く凄く嬉しいよ!!」


「……えっと。ごめんね、サイコス。ボクはもう結婚している相手がいるんだ。父さんに何か言われたみたいだけど、父さんは記憶を失っているみたいで、ボクが結婚している事を忘れてしまっているんだ」


「なっ!何を言っているんだカーラ!私は記憶など失っていない」


 父さんはボクの言葉に反論するけど、記憶を失っている人が、記憶を失っていないと言っても、全く説得力がない。


 はぁ…。サイコスには、本当に悪い事をしてしまったと思う。ほぼ全て父さんのせいだけど、きちんと説明できなかったボクも少しだけ悪いと思う。


「父さん…。父さんは忘れてしまっているみたいだけど、ボクはメイと結婚しているんだ。あ、メイって娘は、世界で一番強くて、世界で一番可愛くて、ボクが世界で一番好きな人なんだ。覚えてない?」


 それからボクは、父さんが少しでも思い出してくれるように、メイの凄いところを何個も伝えた。心の底からメイに抱いている感情をぶつけた。


 だけど、伝えれば伝えるほど、父さんは険しい顔つきになり、ため息を吐く。


「…はぁ、カーラ。この国にメイ殿の事を知らない貴族当主は居ない。メイ殿が成し遂げた事は、未来永劫語り継がれるだろう。…それくらい分かっているんだよ。だがな、カーラ。何度も言うが、カーラは結婚していない」


「はぇ⁈」


 訳が分からなくて変な声が出た。どうしてメイの事は覚えているのに、ボクが結婚している事を忘れているのだろうか。そんな事あり得るのかな?


 信じられない事に、父さんはボクが結婚していないと言う。父さんに報告もしたし、一緒に住んでいたにも関わらず。


 …まさか、ボクがメイと結婚していた事に反対だったのかな?だから、覚えているのに忘れているフリをして、サイコスと結婚させようとしているとしたら…。


 …いくら父さんであっても、許せない!!


「父さん!ボクはメイと結婚している!だから、サイコスと結婚しない!!」


 ボクは、父さんが考えを改めてくれるよう、語気を強めて伝えた。


「…はぁ」


 だけど、父さんは再びため息を吐き、言葉を続ける。


「…カーラ、メイ殿は女性だ。そしてカーラも女だ。2人が結婚できないという事が理解できないのか?」


「…え?」


 ……え???


「そもそも、教会で婚姻の儀を執り行っていないだろうが」


「…あ」


 …そう言われれば、やってない。


 …しまった。だから父さんはボク達が結婚していないと言っていたのか。急いでやらないと!でも、メイが居ない!


「メイが戻ってきたら、直ぐにやるから!忘れてたんだよ!」


「…だから、さっきも言ったが、女性同士は結婚できないんだ。いい加減に理解しろ!」


 父さんは、語気を強めて、そう言ってきた。


 ボクは父さんが怒るのなんて、ほとんど見たこと無い。だから凄く驚き、一歩後ずさった。…言っている事は意味不明だけど。


「…えっと、何を言っているの?ボクはメイと結婚するよ?」


「あぁ、もう!!何故理解できないんだ!!」


 父さんは更に怒り、拳を握りしめた。


 …まさか、父さんがボクに殴りかかってくる⁉︎ 嫌じゃ無いけど、正直理由が分からない。


「…サイコス殿、済まないがカーラに説明してやってくれ。どうやらカーラは、私の言葉を信じてくれないようだ」


「…分かりました。…カーラ、俺が今から言う事は、全て事実だ。しっかりと聞いてくれよ?」


「え…? …うん」


 それからサイコスは、ボクに、とんでもない事をたくさん言ってきた。


 女性同士では結婚できないと、法で決まっている事。女性同士では、子供ができない事。貴族は結婚する義務がある事。


 それらの事を、理由を交えてボクに伝えてくる。信じられないし、信じたくない。だけど、サイコスは全て事実だと前置きした。だから、事実なのだろう。サイコスはボクに嘘を付かないから。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] カーラは純潔だしメイが帰ってきたら離婚してメイと結婚するんですよね?サイコスとの子供なんて作らないですよね?
[一言] カーラはここから4年晩御飯以外で顔を合わせてないことから察するに一線は越えてない(と信じたい)し、結婚したことをメイに知られたくなかったってことはやっぱりサイコス達とメイに向ける感情が違うこ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ