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メイちゃんが大魔王になるまで  作者: 畑田
1章 勇者討伐編
9/155

9話 勇者様でレベル上げ

 

 おはようございます。メイです。朝食美味しかったです。


 …はい。そろそろ現実に戻らなくてはいけませんね。私はとても美味しい朝食を頂いた後、準備をしてギルドに向かいました。


「おーい、メイの嬢ちゃんが来たぞ」


 そして私がギルドに入ると、まるで待っていたかの様に、そう叫ばれました。帰りたいです。


 タタタタッ


「お待ちしておりました、メイ様。それと勇者様」


 あぁ、さっきのはサクラさんを呼んでいたのですね。良かったです。少々自意識過剰なだけだったみたいです。それにしても、走って私の所に来るなんて、何かあったのでしょうか。


「メイ様、お話がありますので奥へお願いします」


 …何だか、サクラさんが真剣な顔つきに見えますね。少しだけ嫌な予感がしますが、大丈夫ですよね?



♢♢♢



 私達がサクラさんに連れていかれた場所は、ギルドの奥にある部屋でした。テーブルに向かい合う様にソファーが置かれており、一冒険者が入る様な部屋とは思えません。こんな個室に案内するなんて、聞かれたらまずい話でもするのでしょうか。…いや、カーラが一緒に居るから、こんな待遇をされているだけですよね?


「では。今朝、教会より最新のランキングとメイ様宛の文書が届きました。ご確認ください」


 サクラさんはそう言うと、一枚の紙と封筒を渡してきました。


 …私宛に文書が届くなんて嫌な予感しかしませんし、正直見たくありません。…とりあえず、ランキングからですかね。


 教会にはすべての人族のレベルを知る方法が存在し、冒険者ギルドには定期的に最新のランキングが送られてきています。ランキングでは、自分が世界で何番目にレベルが高いのかを知ることができ、冒険者の強さの指標となっています。


 ……確か、以前の私の順位は3200位くらいでしたね。平均よりも少し強いくらいの冒険者です。…今は…少し見るのが怖いですね。今の私は絶対に100位以内に入っていますよ。断言できますね。


 そして私は恐る恐るランキングを見てみました。…おや?上位10人しか載っていませんね。なら私は関係ありま…。


 1 ユリアール・カーラ 316 『勇者』  

 2 メイ 192  『聖女』

 3 サイレンツ・シルフィア 186  『神官』  

 4 ケルディ・サイコス 162  『大賢者』 

 5 シュレイダー 160

 6 ソフィー 159  『大聖女』 

 7 イルケード 151 

 8 レズリア・ジャイアント 150

 9 ミューリン 147

 10 レズリア・ガーランド 144 『国王』  


「………」


 …どうして私が2位なのですかね。おかしいですよ。皆さん、もっとレベル上げやってくださいよ。


「メイ様、勇者様。どうしてこんなにもレベルが上がっているのでしょうか。前回のランキングでは勇者様のレベルは273でした。それから七聖龍を討伐していますが、上がり方がおかしいですよね。そしてメイ様。…前回は62レベル。何をどうやったら、こうなるのでしょうか。異常としか言えませんよ。それに加え『聖女』の称号を得てらっしゃいますし」


 …うぅ、最悪です。2位なんて嘘だと言ってほしいです。私だって、こんなに上がるとは思ってませんでしたよ。全部カーラのせいなのです。昨夜、カーラがあんな事をやるなんて言ったから…。



 ♢♢♢



「メイ、枕投げしよう!」


「…え?今からですか?」


 美味しい夕食を頂き、お風呂に入った後、勇者様は唐突にそう言いました。


「うん!」


 うーん…今日はいろいろありすぎて疲れているので遠慮したいですね。しかも、枕投げですか。絶対に疲れますよね。私はもう寝たいですよ。こんなに寝心地が良さそうなベットもあるのですから。……ですが、ちょっとだけやってみたい気持ちもありますね。やった事ないですし。


「…少しだけですからね」


「やった!負けないからね!」


 そう言って勇者様は、枕を渡してきました。勇者様は、とても嬉しそうです。


 …ですが、よく考えてみたら勇者様と枕投げをするなんて、危険ではないでしょうか?勇者様は最強ですし、手加減ができる様なお方には見えません。…これは普通にやれば死にますね。


『攻撃力低下』『防御力低下』『速度低下』


 ズルではありませんよ。きっと勇者様もデバフを掛けられる事を望んでいるでしょうし、私の命が懸かっていますからね。


「…いきます」


 ビュンッツ


「げふぁあ」


 バタン


 …あれ?何故か勇者様が倒れています。


 ピロンピロンピロンピロンピロン…


 …おかしいですね。また勇者様を倒してしまったみたいです。完全に気絶しておられます。レベルが上がってしまいました。…あ、早く回復魔法を掛けねばなりませんね。


『回復』


 ぱあああぁ


「勇者様、申し訳ありません」


「…メ、メイ。凄く悔しいんだけど、ちょっとだけデバフを抑えてくれると嬉しいかな」


 あら。また勇者様の悔しそうなお顔をいただいてしまいました。…ありがとうございます。少しだけ嬉しいです。


 とはいえ、どうすれば良いのでしょうか。今まで、デバフは最大でしか掛けた事がありませんが、抑える事なんて出来るのでしょうか。魔物に手加減なんてする必要なかったですし、経験がありません。


 …取り敢えずやってみましょう。勇者様に掛けたデバフを一度解除し、少し魔力を抑えながら掛けてみれば…。


『攻撃力低下』『防御力低下』


「…たぶん出来ました」


「よし、もう負けないからね!」


 そして、勇者様は立ち上がりました。…何故か勇者様の笑顔が、先ほどよりも邪悪に見えますね。勇者様から殺気のようなものが感じられる気がしますし。……怖いです。どうしてそんな顔を私に向けるのでしょうか。………はい、私のせいですね。


「いくよ、メイ!」


 ビュオンン!


 あ、これはやばいですね。『速度低下』も掛けるべきでした。早く避け…れるわけありま…。


 ばんっ


 ………………。


『神聖魔法』自動治癒が発動しました


「…イ!メイ!」


「…あぁ、勇者様」


 どうやら、私も気絶してしまったようです。人生初の気絶を枕投げで体験するなんて、思いもよらなかったですね。さすがの勇者様も私を心配し…。


「メイ!聞いて!レベル上がった!どうしてだろう!」


 …ていませんね。ちょっとくらい心配して下さいよ。私は勇者様と違って普通の人間なのですから。


「…勇者様。私、悲しいです。少しくらいは心配してほしいです」


「え?気絶しただけだよ?それに、メイは『聖女』だから大丈夫でしょ?」


 まぁ、大丈夫でしたけど。なんか勝手に回復しましたし。『聖女』って凄いのですね。


 ……はぁ。


「勇者様のレベルが上がったのは、私を倒したからです」


「そうなの⁈ …ま、いっか。メイが居ればレベルがいくら上がっても問題ないしね」


 あぁ、私を倒すのに躊躇は無いのですね。というか、どうして私を倒した程度で、勇者様のレベルが上がるのでしょうか?私のレベルなんて、そんなに…そういえば、ギルドで勇者様を倒した時と今、結構上がりましたね。


 …はぁ。一瞬とはいえ、痛い思いをするなら止めておけば良かったです。ですが、このままだと何故か悔しい気持ちが残りますね。昨日までの私でしたら、勇者様にやられても当然と思ったでしょうけど。


「では、続けましょう」


 そう言って私は枕を手に取り、勇者様に投げつけました。…ふふっ、勝つ方法があるのに勝たないのは逆に失礼ですよね。


 勇者様のスピードがあれば、簡単に避けれるはずです。ですが、勇者様は避けません。勇者様ですからね。なので私は、勇者様が枕をキャッチしようと手を動かした瞬間に速度低下のデバフを掛けます。すると、勇者様は枕をキャッチ出来ずに、お顔で受け止められるはずです。


 ぼふっつ!


 ピロンピロンピロン…


 …ズルではありませんからね。速度低下のデバフを解除してから回復させればバレないはずです。


「メイ、ボクの速度落としたでしょ」


 …あら。バレてしまいましたか。まぁ、別に良いですけどね。


 そして、戦いは私の魔力が尽きるまで続きました。私が言うのも何ですが、酷い戦いでしたね。私は勇者様の枕をあまり避けれませんし、私はバレる事を承知で勇者様を弱体化させたりしつつ応戦したので、お互いに何度も気絶してしまいました。もはや遊びの域を超えていましたね。


 …ですが、ちょっとだけ楽しかったです。勇者様を気絶させるのは何故か気分が良いですし、私はすぐに回復できるので。


 ふふっ、こんなに幸せな気持ちになるなら毎日やっても良いかもしれませんね。疲れ果てるまでやった後は、ふかふかのベットが待っていますし。


 ……いや、やっぱりダメでした。これ以上レベルを上げたら目立ってしまうかもしれません。勇者様でレベリングするのは効率が良すぎますからね。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 「勇者様」でレベリング…しかも枕投げで…。パワーワードがバンバン出てきますね…。 そしてメイちゃん、若干Sに目覚めかけてますね…。お互いやってやられてという関係もまた良いですね。 色々…
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