9話 メイはNo.2
メイです。朝食美味しかったです。
…はい。そろそろ現実に戻らなくてはいけませんね。私は朝食を美味しく頂いた後、準備をしてギルドに向かいました。
「おーい、メイの嬢ちゃんが来たぞ」
そして私がギルドに入ると、まるで待っていたかの様にそう叫ばれました。帰りたいです。
タタタタッ
「お待ちしておりました、メイ様。それと勇者様」
ああ、さっきのはサクラさんを呼んでいたんですね。良かったです。少々自意識過剰なだけだったみたいです。それにしても、走って私の所に来るなんて、何かあったのでしょうか。
「お話がありますので、奥へお願いします」
少しだけ嫌な予感がしますが、大丈夫ですよね?
そして私達はサクラさんについて行き、ギルドの奥にある部屋へ連れていかれました。こんな個室に連れ出すなんて、聞かれたらまずい話でもするんでしょうか。
「では。今朝、教会より最新のランキングとメイ様宛の文書が届きました。ご確認ください」
教会にはすべての人間のレベルを知る方法が存在します。つまりランキングでは、自分が世界で何番目に高レベルなのかを知ることが出来ます。確か、以前の私の順位は3200位くらいでした。…見るのが怖いですね。今の私は絶対に100位以内に入っていますよ。断言できますね。
そして私は恐る恐るランキングを見てみました。…おや?上位10人しか載っていませんね。なら私は関係ありま…。
1 ユリアール・カーラ 316 『勇者』
2 メイ 192 『聖女』
3 サイレンツ・シルフィア 186 『神官』
4 ケルディ・サイコス 162 『大賢者』
5 シュレイダー 160
6 ソフィー 159 『大聖女』
7 イルケード 151
8 レズリア・ジャイアント 150
9 ミューリン 147
10 レズリア・ガーランド 144 『国王』
「………」
…どうして私が2位なんですかね。おかしいですよ。皆さん、もっとレベル上げやってくださいよ。
「メイ様、勇者様。どうしてこんなにもレベルがあがっているのでしょうか。前回、勇者様のレベルは273でした。それから七聖龍を討伐していますが、上がり方がおかしいですよね。そしてメイ様。…前回は62レベル。何をどうやったら、こうなるのでしょうか。異常としか言えませんよ。それに加え『聖女』の称号を得ていますし」
うぅ。私だって、こんなに上がるなんて思ってもみませんでしたよ。仕方なかったんです。昨夜、勇者様があんな事をやるなんて言ったから…。
♢♢♢
「メイ、枕投げしよう!」
「…え?今からですか?」
美味しい夕食を頂き、お風呂に入った後、勇者様は唐突にそう言いました。
「うん!嫌?」
正直、今日はいろいろ有りすぎて疲れているので、遠慮したいです。しかも、枕投げですか。絶対に疲れますよね。ですか、ちょっとだけやってみたい気持ちもあります。やった事無いですからね。
「少しだけですからね」
「やった!負けないからね!」
そう言って勇者様は、枕を1つ渡してきました。つまり、真剣勝負という事ですね。…普通にやれば死にますね。はい。
『攻撃力低下』『防御力低下』
ズルではありませんからね。私も命は大事ですから。
「いきますよ」
ビュンッツ
「げふぁあ」
バタン
あれ?何故か、枕が物凄い速度で飛んでいきました。
ピロンピロンピロンピロンピロン…
また勇者様を倒してしまいました。完全に気絶しておられます。早く回復魔法を掛けねばなりませんね。
『回復』
ぱあああぁ
「勇者様、申し訳ありません」
「…メ、メイ。凄く悔しいんだけど、ちょっとだけ手加減してくれると嬉しいかな」
あぁ、勇者様の悔しそうなお顔。…ありがとうございます。少しだけ嬉しいです。少しだけですからね。
さて、手加減とはどうすれば良いのでしょうか。今まで、デバフは最大でしか掛けた事がありませんが、抑える事が出来るのでしょうか。魔物に手加減なんてした事ありませんからね。…取り敢えずやってみましょう。
私は、勇者様に掛けたデバフを一度解除し、新たに魔力を抑えながら掛けてみました。…たぶん出来たと思います。
「出来ました」
「よし、もう負けないからね!」
そして、勇者様は立ち上がりました。さっきまでは楽しむ感じでしたが、勇者様から殺気のようなものが感じられます。…怖いです。まあ、私のせいですけどね。
「いくよ、メイ!」
ビュオンン!
あ、これはやばいですね。避け…れるわけありま…。
ばんっ
『神聖魔法』自動治癒が発動しました
「…イ!メイ!」
「あぁ、勇者様」
どうやら、私も気絶してしまったようです。勇者様が私を心配し…。
「メイ!聞いて!レベル上がった!どうしてだろう!」
…ていませんね。ちょっとくらい心配して下さいよ。私は勇者様と違って普通の人間なんですからね。
「…勇者様。私、少し悲しいです。気絶したんですから少しは心配して欲しいです」
「ごめんごめん。メイは『聖女』だから大丈夫かなって」
まあ、大丈夫でしたけど。なんか勝手に回復しましたし。聖女って凄いんですね。
「勇者様のレベルが上がったのは、私を倒したからです。止めますか?」
「そうなの⁈うーん。まいっか。メイが居れば、レベルがいくら上がっても問題ないしね」
ああ、私を倒すのに躊躇は無いのですね。
ですが、私もこのままだと何故か悔しい気持ちが残るので、続けるのには賛成です。昨日までの私でしたら、勇者様にやられても当然と思ったでしょうけど。
「では、続けましょう」
そして、私は枕を手に取り、勇者様に投げつけました。…勝つ方法があるのに勝たないのは逆に失礼ですよね。
勇者様のスピードがあれば、簡単に避けれるはずです。ですが、勇者様は避けません。勇者様ですからね。だから私は、勇者様が枕をキャッチしようと手を動かした瞬間に速度低下のデバフを掛けます。すると、勇者様は枕をキャッチ出来ずに、お顔で受け止められます。
ぼふっつ!
ピロンピロンピロン…
…ズルではありませんからね。速度低下のデバフを解除してから回復させればバレないはずです。
「メイ、ボクの速度落としたでしょ」
…あら。
それからは、酷い戦いでした。私は勇者様の枕を避けれませんし、私はバレない様に少しずつ勇者様を弱体化させたりしつつ応戦しました。お互いに何度も気絶し、もはや遊びの域を超えていましたからね。…ですが、ちょっと楽しかったです。勇者様を気絶させるのは気分が良いですし、私はすぐに回復出来ます。
そして、戦いは私の魔力が尽きるまで続き、私達は疲れ果ててベットに入りました。思いっきり運動した後に、ふかふかのベッドがあってすぐに眠れるなんて最高ですね。
こんなに幸せな気持ちになるなら毎日やっても良いですね。…いや、やっぱりダメでした。これ以上レベルを上げたら目立ってしまいます。勇者様でレベリングするのは効率が良すぎますからね。