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メイちゃんが大魔王になるまで  作者: 畑田
3章

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13話 勇者VS大賢者 2

 

「…もう止めない?」


「ボクは、まだまだ大丈夫だよ!」


 サクラさんとの会話がひと段落して、私はカーラとマリヤさんの戦いを見ています。そして今、マリヤさんが弱音を吐いてきたところです。私が来る前から戦っているみたいですし、無理もありませんね。


「はぁ、私の負けで良いから。止めよ止め」


「ボクはまだ、勝ってないよ!」


 ……。カーラに悪気が全く無いのは分かりますが、こんな返しをされたら余計に嫌になりますよ。そして、案の定マリヤさんは嫌そうな顔をしています。


「…メイ。勇者を止めて」


 …はぁ。止めてあげたいのは山々ですが、たぶん無理だと思いますよ。一応言ってみますけどね。


「カーラ、マリヤさんはお疲れです。そろそろ止めてあげてください」


「えー。じゃあ、メイが代わりに戦ってよ!」


 …はい。最悪です。マリヤさんを助ける代わりに、私が犠牲になるなんて嫌ですよ。


「カーラ、奥の部屋に魔王が居ますよ。それで我慢してください」


「うーん。そういえば、そうだったね。分かったよ」


 ふぅ。なんとか回避出来たみたいです。新しい魔王が誰だか知りませんが、ごめんなさい。仮に和平を望んでいるとしても、カーラと戦う事が確定してしまいました。


「ねぇ、メイ。戻って来たなら、今日からボクの家に帰って来るんだよね?」


「え?嫌ですよ。カーラは結婚したのですよね?」


 家にサイコス様とソフィー様が居るでしょうし、その状況で居候をするなど、気が引けますからね。ソフィー様との時間を邪魔したら悪いですし。


「えぇぇ⁈どうして知ってるの⁈ …あ!サクラでしょ!何で言うの!」


「良いじゃない。事実なんだから」


 …あれ?どうして、カーラはこんなにも慌てているのでしょうか?ここまで慌てるカーラを見るのは初めてです。そんなに、結婚した事を知られるのが恥ずかしかったのですかね?貴族なら、結婚くらい普通だと思いますけど。


「もう!サクラのバカ!メイ、違うからね!不倫とかじゃ無いからね!ボクに爵位を渡すなんて恐ろしいからって、父さんが勝手に決めただけだから!ボクが好きなのはメイだから!」


「…えっと。そうなのですね」


 …つまり、サイコス様はソフィー様に利用されただけでは無く、カーラのお父さんにも利用されたのですね。カーラに爵位を継がせられないというのは納得ですが、少し可哀そうです。


 まぁ、おそらくサイコス様はカーラを好いていると思うので、喜んで結婚したのかもしれませんが。…そうなると、余計に不憫ですけどね。


「カーラ。カーラがどう思っていようと、結婚した事には変わり無いわよ。だから、メイちゃんは私が貰うわ」


「ダメだよ!メイはボクの家に帰って来るんだから!」


 うーん。私は、自分で家を買って住むつもりだったのですけどね。とても言える雰囲気ではありません。それに…。


「サクラさんだって結婚なさったのですよね?」


「えぇ⁈そうなの⁈ いつ?ボク聞いて無いよ!」


 …ん?あれ?サクラさんは前のギルマスと結婚した事を、カーラに伝えていないのですか?そんな事あります?


「あら?メイちゃん。私、結婚したなんて一言も言って無いわよ?」


「…え?…ですが、一緒に暮らしてると」


 …言いましたよね?…間違いなく言いましたよ。思い出したくも無いですが、キャルシィと3人で暮らしていると…。


 …あ。サクラさんが悪い顔をしています。騙したのですね!…いや、私が騙されたのですね!


「嘘だったのですね…」


 ぐぬぬ…。許せませんが、正直ホッとしています。サクラさんとキャルシィが無事で良かったです。私が知らない事を良い事に、好き放題言ったのですね。私が直ぐに帰ると言って5年も帰って来なかったという、結果的嘘に対しての仕返しですか…。はぁ。


「ふふっ。嘘では無いわよ。ゲイツの家、1人暮らしなのに無駄に広くてギルドから近いのよ。カーラの家に住みづらくなったから借りてるの。それに、ゲイツは偶にしか帰って来ないし、メイちゃんも一緒に住んで大丈夫よ」


「おぉ!…それは少し魅力的ですね」


 偶にでも前のギルマスと家で会うのは嫌ですが、それを除けばよい条件です。まぁ、その偶にが嫌ですけどね。サクラさんとキャルシィはギルドで慣れているので大丈夫かもしれませんが、私は嫌です。


 サクラさんが前のギルマスの事を呼び捨てているのは謎ですが、きっと5年の間に上下関係に変化があったのでしょうね。サクラさんがギルマスですし。そのせいで、私は騙されましたけど。


「待ってよ!ボクの家なら、メイの好きなご飯とお風呂が有るよ!それに、サイコス達とは別の部屋だから、基本的にご飯の時しか会わないよ!」


「…あら」


 …可哀そうに、ソフィー様。一緒の部屋になれなかったのですね。きっと、変な意地を張って、断ったに違いありませんね。ソフィー様ですから。


「こっちだって料理人雇えば良いし、お風呂はそれなりのが付いてるわ!」


「ボクの家の方が良いに決まってるよ!メイはどっちが良いの!」


 んー。どちらも魅力的な部分があるのですが、嫌な部分があるのですよね。それさえなければ、どちらも良いのですけど。


「…私は、自分の家を買おうかと思っています」


「「そんなのダメ(だ)よ!メイ(ちゃん)に1人暮らしは無理!」」


 …私、カーラとパーティーを組むまでは、1人で暮らしていたのですけどね。どうして、こんなにも信用がないのでしょうか?私って、ダメな大人なのですか?


「サクラ、こうなったら勝負するしかないね。メイを賭けて!」


「えぇ、そうね。相手になるわ!」


 …どうして、こうなるのでしょうかね。私の意志は完全に無視され、私を賭けた戦いが始まりそうです。



 ♢♢♢



「じゃあ、勝った方の家にメイが住む。文句は無しだよ!」


「えぇ、絶対に負けないわ!」


 さて。場所は魔王城魔王の部屋の1つ前。ここで、勇者と大賢者の戦いが始まります。…どう見ても、仲間割れでしかありませんね。魔王目前で、魔王を無視して戦い出す勇者パーティー(仮)など、そうそう居ませんよ。5年前は引き分けでしたが、どちらが勝つのでしょうかね。


 そして、両者構えて戦いが始まります。『魔剣』ゴスティリオンを構えるのは、『勇者』カーラ。対して、『魔剣』ディスティリオンを構える『大賢者』のサクラさん。どちらも本気みたいです。


 先に手を出したのは、サクラさん。剣を杖の様にして、魔法を発動します。空中に氷の槍が現れ、凄いスピードでカーラに迫ります。サクラさんは、氷魔法まで使える様になったみたいですね。


 ですが、カーラはその槍をいとも簡単に剣で砕き、サクラさんに接近します。すかさずサクラさんは土魔法で進路を塞ぎますが、カーラは力ずくで突破します。これは、カーラの勝ちですかね?カーラはそのままサクラさんに接近し、剣を振ります。サクラさんはなんとか受け止めますが、苦しそうです。


「サクラ、ボクの勝ちみたいだね!」


「あら?そうかしら?」


 ぶわっつ!!


 するとサクラさんは、左手で風魔法を発動してカーラにぶつけ、距離を取りました。サクラさんの得意な、遠距離戦にする為ですね。近付けばカーラが有利ですが、離れるとサクラさんが有利みたいです。


 …まぁ、どちらも凄すぎて、怖いですけどね。もし私が入ったら、逃げる事しか出来なさそうです。


 それに、氷の破片とか飛んできて、少し危ないです。これは…。


「マリヤさん。私は少し、席を外しますね。ちょっと実家に行ってきます。終わる頃には帰ってきますね」


「ちょ…!何言ってるのよ!」


 どうやら直ぐには終わりそうもありませんし、見ているだけで怖いので、私は実家に帰ります。私が見ていても結果は変わりませんし、マリヤさんが居れば何かあっても回復してくれますからね。ポチやお母さん達にも会いたいですし。


 そして、私は闇魔法を実家の前に繋げました。時間は有効活用するべきですからね。まぁ、怖いだけですけど。



 ♢♢♢



「キャウン!!」


「おぅふ…!あぁ!ポチ!お久しぶりです!大きくなりましたね!!重たいですよ!!」


 闇魔法を繋げると、私が出た瞬間にポチが抱き付いてきました。…というより、押し倒されました。5年ぶりですが、ポチの事ですから私が帰って来ているのに気付いていたのかもしれませんね。


 それにしても、大きいです。5年前でも、私とサクラさんが乗れるくらいでしたが、今なら追加でカーラも乗れそうです。ですが、大きさ以外は変わりません。相変わらず可愛いですし、甘えん坊な所も最高です。


「ポチぃ。ごめんなさいね。5年も帰れなくて」


「キャウン!!」


 あぁ。可愛いです。それに、ポチに嫌われてなくて良かったです。少し心配していましたが、杞憂でしたね。ポチが変わらずに接してくれて、嬉しい限りです。


「ポチ、そろそろお母さんにも会いに行きたいです。退いてくれませんか?」


「キャウン…」


 うぅ…。私ももっと一緒に遊びたいですが、お母さんにも早く会いたいですからね。ポチもそれを理解してくれた様で、素直に私の上から退いてくれます。


 さぁ、行きましょう。5年ぶりですが、元気にしていますかね?


 そして、私は家の扉を開けました。


「お母さん!ただいまです!」


 扉を開けると、台所でお菓子を食べているお母さんが目に入りました。相変わらずですね。


「あら!…おかえり、メイちゃん」


「はい!」


 お母さんは、一瞬驚いた顔をしましたが、直ぐに戻ります。


「もぉ。もう少し頻繁に帰って来なさいよ。お父さんも心配してたわよ」


「ごめんなさい。これからは、もっと帰ってきますから」


 5年前、私はお母さんに何も言わずに天界に行きましたからね。直ぐに帰る予定でしたが、結果的に5年になり、心配をかけてしまった様です。こんな田舎には、私の情報なんて来ないでしょうからね。天界に行った事も知らなかったはずです。


「今日は泊っていくの?」


「いえ。まだ用事があるので、直ぐに戻ります。お父さんには、今度会いに来ますね」


 今は仕事に行っているみたいですし、邪魔すると悪いですからね。私には前科がありますし。帰ってきた事さえ伝われば、大丈夫でしょう。


「そうなのね。次帰って来る時は、サクラちゃん達も連れてきなさいね」


「はい!そうします」


 お母さんは、皆の事を勝手に娘の様に思っていますからね。それに、サクラさんは弟子みたいなものですし。今度、ゆっくりと来ますかね。


 そして、私はお母さんとポチに別れを告げ、魔王城に戻ります。10分くらい経ちましたし、流石に終わってると思いますし。



 ♢♢♢



「あら、早かったじゃない」


「…まだ続いているのですね」


 魔王城に戻ると、カーラとサクラさんの戦いは、一層激しく行われています。あんな戦いを10分以上続けられるとは、凄すぎます。何より、あのカーラと対等に戦えているサクラさんが恐ろしいです。今のサクラさんを見れば、元受付嬢だなんて誰も信じませんよ。


「…今、1勝1敗よ」


「…え?」


 すると、マリヤさんが疲れた顔で、そう言い出しました。


「最初は勇者が勝ったわ。でも、大賢者が3回勝負って言い出して、勇者がそれを承諾したわ。勇者が承諾しなければ終わっていたのに、あの勇者は直ぐに認めたわ。馬鹿としか思えないわよ」


 あぁ。確かに、馬鹿としか思えませんね。ですが、私には分かります。カーラは、サクラさんとの戦いが楽しかったに違いありません。だから、ただ単にまだ戦いたかっただけだと思います。


「そして、2回目は大賢者が勝って…。はぁ。どうして大賢者が勇者に勝てるのよ…」


「…サクラさんは強いですからね」


 そうとしか、私には言えません。普通に考えたら、勇者が最強であるべきですからね。まぁ、これはサクラさんが強すぎるだけなのですけど。私もバフを使えば勝てますが、素では絶対に負けますからね。


「ねぇ、メイはどっちと一緒に居たいの?」


 …どっちですかね。


 私は、1人で暮らすと言いました。それは、何故でしょうか。


 理由は簡単です。私が、他の人と居る2人を見たく無かったからです。私だって、本当はカーラと一緒に居たいです。サクラさんとキャルシィとも一緒に居たいです。どっちかなんて、選べません。


「…私は、また皆一緒に暮らしたいです」


「え!!そうなの、メイ!じゃあ、みんなボクの家で…ボフェエ!!」


 ………。どうやら、耳の良いカーラに、今の会話が聞こえていたみたいです。


「はい、勇者の負けね」


 そして、何事も無かった様に勝敗を告げるマリヤさん。


「やった!メイちゃんと一緒よ!」


 カーラがよそ見した事など一切気にせず、勝利を喜ぶサクラさん。よそ見をして、思いっきり攻撃を食らい、気絶したカーラ。


 なんだか、凄く懐かしい気分です。この、非日常な感じが、私にとっての日常な気がします。改めて、みんなの所に帰って来た事を実感しますね。決して平和とは言えないですが、私達にとっては、平和な気がします。



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