12話 勘違い(継続中)
「では、最後はめでたい事ですね。何があったのですか?」
「…え、えぇ。そうね」
サクラさんが教えてくれた、悲しい事。それは、神官様だったシルフィアさんが亡くなられた事でした。ですが、天界で普通に生きている事を知っていた私にとっては、特に悲しい事ではありませんでした。
そして、それを私が伝えると、サクラさんは案の定驚き、今も少し動揺しています。まぁ、今度会わせれば、完全に信じてもらえますね。私なら、自由自在に行き来出来ますし。
それはそうと、最後のめでたい話を聞きましょう。本当にめでたい話かどうかは謎ですけどね。今の所、面白い話も悲しい話も、私の感覚には合いませんでしたし。
「えっと…。めでたい話は、カーラが結婚した事よ」
「本当ですか⁉︎」
…おぉ!これは本当にめで…たい話です!カーラと結婚するとは、凄い物好きが居たものですね…。何故だか、少しモヤッとしますが…。
「誰だと思う?」
…んー。誰でしょうか。ですが、サクラさんが私にそう言うという事は、私の知る人物という事になりますね。
…あ!私、分かってしまいました。カーラの結婚相手!
「ズバリ、ソフィー様ですね!」
ふふっ。これは間違いありませんね。ソフィー様はカーラと結婚すると言っていましたからね。それに、シルフィアさんが下界で亡くなられて、ソフィー様が神官様になったはずです。ソフィー様は、神官になれば法律を変え、女性同士でも結婚出来るようにすると言っていましたからね。間違いありません!
「…メイちゃん。ドヤ顔のところ悪いけど、違うわよ」
「…え?」
「カーラの結婚相手はサイコス様よ」
…そんな。
あ、もしかして…。
「カーラはいつ結婚したのですか?」
「4年くらい前よ」
…そうなのですね。つまり、ソフィー様は間に合わなかったという事ですね。シルフィアさんが亡くなられたのは、2年前。つまり、ソフィー様が神官になる前に、カーラが結婚してしまったのですね。それではあまりにも…。
「ソフィー様が可哀そうです」
あんなにもカーラを好いておられたというのに…。カーラと結婚する為に、神官になろうとなさっていたのに…。ソフィー様の気持ちを考えると、私まで胸が痛くなります。
「…ソフィー様は大丈夫なのですか?」
「ソフィー様も結婚されたわ」
「……え?」
…は?ソフィー様がカーラ以外と?そんな事あり得るのですか?あの、カーラ大好きのソフィー様ですよ?
まさか、自暴自棄になって適当な男性と?…いや、男性とは限りませんね。既に法律を変えて女性とかもしれません。
「相手は誰なのですか?」
「サイコス様よ」
「…は?」
…おかしいです。サイコス様はカーラと結婚したのですよね?2股という事ですか?
確かに、貴族には複数の妻を持つ男性が居ますが、それは世継ぎが生まれなかった場合などです。カーラはまだ若い女性ですし、2人目と結婚するには早すぎると思います。…最低です。会った事はありませんが、サイコス様は最低の男性ですね。
「許せませんね。サクラさん、ちょっと殺りに行きましょうか。サイコス様を」
「…メイちゃん。たぶん勘違いしてるわよ。ソフィー様の性格を考えて」
…ん?何が勘違いなのでしょうか?どう考えても、サイコス様が悪いですよ。女の敵です。
「ソフィー様は、カーラが結婚する事を聞いて、カーラと一緒に居るためにサイコス様と結婚したのよ」
「え?」
…どうしましょう。物凄く、想像できてしまいます。考えてみれば、ソフィー様がカーラを諦めるとは思えませんね。ソフィー様なら、やってしまいそうです。いや、やりますね。カーラが大好きですからね。
つまり、サイコス様が悪いのではなく、逆にサイコス様が被害者だったのですね。ソフィー様がカーラと一緒に居るために、利用されたのですね。…流石としか言えませんね、ソフィー様は。
はぁ。確かに、めでたい事の話でしたが、何故だかあまりめでたいとは思えません。関係がドロドロですし、3人で上手くいくとは思えません。もう私は、カーラの家に住めそうもありませんね。というか、住みたくありません。お金は有りますし、自分の家でも買いますかね。カーラの家のご飯とお風呂は大好きだったのですが、残念です。
それに、サクラさんもカーラも結婚して、私だけ取り残された気分です。私もいい歳ですし、そろそろ考えなくてならないのですかね?
まぁ、思いつく相手も居ないので、まだまだ結婚できるとは思えませんけど。どこかに居ませんかね?出来れば、サクラさんみたいに優しくて、私より強い方が良いですね。
…そんな人、居ませんね。…はぁ。どうして2人して、私を1人にするのですか?確かに、5年も帰らなかった私が悪いです。ですが、こんなのあんまりですよ…。




