4話 お客様
カーラとサクラさんとの戦いから、15日ほどが経過しました。あれから私達は、Sランク以上の討伐依頼をこなしまくり、私とサクラさんは、お金持ちになりました。凄く幸せです。ケーキもいっぱい食べましたし、おやつの果物も沢山買いました。ですが、減るどころか、増えてしまいます。嬉しいですね。
そして、サクラさんは私のレベルを軽く抜いてしまいました。討伐依頼では、カーラがデバフを掛けて一匹倒す間に、残りを全部サクラさんが倒します。それに、夜はサクラさんの独壇場です。以前は、私を基準にカーラとサクラさんにバフとデバフを掛けていましたが、今の基準はサクラさんです。
自分にバフを掛けますが、あんまり強く掛けるとカーラにバレてしまいそうなので、少ししか掛けれません。なので、デバフを掛けたカーラはもちろん、私も勝てません。まぁ、サクラさんは主にカーラを狙ってくれるので、私は問題なく楽しめます。そして、カーラはどんな状況でも楽しめます。
そんなこんなで、サクラさんのレベルアップが止まりません。もしかしたら、いずれカーラを抜いてしまうかもしれませんね。
そして、今日も依頼を終えてギルドに戻ると、何やらキャルシィが絡まれています。楽しそうに話していますが、知らない女性です。
「キャルシィ、お友達ですか?」
背丈は私よりも少し高いくらいで、肩にかかったピンク色の髪。雰囲気的には、ソフィー様と似ていますね。
「あ!お帰りなさい、メイお姉ちゃん。メイお姉ちゃんにお客様です」
「私にですか?」
…誰でしょう。
あ!そういえば、この前魔王城に行ったときに、十三天王の人が言っていた気がします。その人ですかね?
「この人は、マリヤさんです。ドラディニエルさんの知り合いだそうです」
「…そうなのですね」
…ドラディ…何とかさん。…誰でしょうか。何か、キャルシィは私の知り合いみたいに言いましたね。ですが、心当たりが全くありません。本当に誰でしょうか。
まぁ、どうでも良いですよね。聞いた事の無い名前ですし、考えても仕方がありません。
そして女性は私を見つめると、可愛らしい声で、とんでもない事を言ってきました。
「あなたが魔王…そして、堕天使なのね」
「はうぇ⁈ …何を言っておられるのでしょうかね?」
どうしてでしょう、どうしてでしょう、どうしてでしょう。初対面の人に、私の秘密が知られています。
私が魔王だと知られているのは、キャルシィと共通の知り合いが居るなら理解できます。ですが、堕天使と言いましたよ。言いましたよね?言いましたかね?聞き間違いかもしれません。
そうです。私以外の人が、その事実を知る訳無いのです。そもそも、私は堕天使ではありません。大天使〈堕〉です。全然違いますね。
「…やっぱり」
「違いますからね!私は堕天使ではありませんから!」
確認する方法なんてありませんからね。私が違うと言えば、違うのです。
「私は『天使』マリヤ。天界から、あなたを排除しに来たの。死んでもらえない?」
「嫌です!」
排除?私が何をしたと言うのですか!私は、訳も分からず称号を与えられただけですからね!そもそも、天界って何ですか!聞いた事ありませんよ!
「カーラ!サクラさん!助けてください!」
「じゃあ、ボクが戦うよ!」
「私がメイちゃんを守るわ」
「カーラ!サクラさん!!」
そうです。相手が天使であろうと、私には強すぎる仲間が居るのです。2人に任せておけば、直ぐに解決してくれますよ。
「待って!それは無理だから!あんたが勇者でしょ?私では勝負にならないから!」
「大丈夫だよ。ボクが弱くなるから!」
はい。カーラが平常運転で、凄く安心してきました。もう大丈夫です。天使だか何だか知りませんが、もうその辺の魔物と一緒です。カーラの標的になりましたからね!
「はあ?何言ってんの?意味が分からな…」
「さ、行こっか!」
そしてカーラは、天使さんを引っ張り、ギルドの闘技場へ向かいました。私を排除するなどと言うから、こうなってしまうのですよ。
♢♢♢
「ねぇ、メイちゃん。堕天使なの?」
カーラが天使さんと相対し、サクラさんは私の隣で、そう聞いてきました。先程の会話を聞かれていたので、気にならない訳がありませんよね。
「えっと。違います。…少し」
「ふーん。少しね。後で教えてね」
「…はい」
もうバレてしまった様なものですし、これは仕方ないですね。全部、あの天使さんのせいです。はぁ…。
「メイ、デバフ!」
「はい」
…さて、返事をしたものの、どのくらい掛ければ良いのですかね?私を排除するって言ってましたし、そこそこ強いとは思います。ですが、カーラとは勝負にならないと言っていました。となると、ソフィー様くらいですかね?ソフィー様に少し似ていますし、きっとそうですね。
では、相手がソフィー様と仮定して、それと同じくらいの力になる様に、カーラにデバフを掛けましょう。
「カーラ、掛けましたよ」
「うん、ありがと!」
さて、後はのんびり見るだけです。天使さんが私の予想通りの強さなら、戦いは長引くでしょうが良い勝負が出来ると思います。
…と、私は思っていました。
「ぎゃあああぁぁ!!メイ!助けてぇ!!!」
…どうやら、ソフィー様とは比べ物にならないくらい強かったみたいです。ごめんなさい、カーラ。直ぐに治しますからね。




