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メイちゃんが大魔王になるまで  作者: 畑田
1章 勇者討伐編
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7話 メイちゃんと執事


 …どうしましょう。どうしてこんな事になってしまったのでしょうか。


「なんだか駆け落ちみたいだね」


 ………何を言っているのでしょうかね、勇者様は。ですが、勇者様のア… お花畑のようなお言葉で、少しだけ我を取り戻しました。


「勇者様…どうしましょう」


「え?何が?」


 …ギルドであんなにも恥ずかしい思いをしたというのに、勇者様は何とも思っていないのですね。


 はぁ。私も勇者様みたいに考える事ができれば楽なのでしょうね。まぁ、勇者様みたいになりたいとは思いませんが。明日からどんな顔でギルドに入れば良いのでしょうか。怖くて仕方ありません。


 「…勇者様、明日からはギルドに行く時間を遅くしましょう。良い依頼はなくなってしまうかもしれませんが、人が少ない時に行きたいです」


「え?別に良いけど、メイは依頼を受けるつもりだったの?」


 ん?勇者様は何を言っているのでしょうか。冒険者なのですから、依頼を受けるのは当たり前ですよ?お金はあるから冒険者活動をほとんどされていないという事ですかね?


「勇者様は依頼を受けていないのですか?」


 普通の冒険者は早朝にギルドで依頼を受けます。良い依頼はすぐに無くなってしまうので、早朝は結構混んでいて良い依頼の取り合いです。今の私に、そこに入って行く勇気はありません。


「依頼?なんで?依頼なんて、つまらないものばかりだよ。…あっ!そっか、依頼受けて良いんだ!」


 どういう事でしょうか。まるで勇者様は依頼を受ける事が出来なかったような言い方ですね。


「メイ、明日は早朝から依頼取りに行くよ!メイが居れば、どんな依頼でも楽しくなるね!」


 …あぁ。そういう事ですか。勇者様にとって、ギルドに出される依頼は簡単すぎるのですね。そんな依頼を受けてもつまらないから、七聖龍を殺すなんて罰当たりな事をしていたのですか。


 …はぁ。私の心情はもう忘れられていますね。もう諦めるしかないみたいです。もう勇者様は依頼を受ける気が満々ですし。


「…勇者様が楽しそうで何よりです」


「ありがと、メイ!」


 少し嫌味を込めて言ったつもりだったんですけが、軽く流されてしまいました。はぁ、もうこれは逃げられませんね。そもそも私の事なんて、皆さんそこまで興味無いはずです。明日になれば、もう忘れられていますよね。そう信じましょう。


「そういえば、メイは何処に住んでるの?」


「近くの宿を借りていますよ」


 …お会いして半日しか経っていませんが、勇者様の次の言葉が容易に想像できてしまいます。勇者様も私と同じ部屋に住むと言いだすのですよね。間違いありません。


「じゃあ一緒に住も(同棲しよ)うよ!パーティーを組んだ(結婚した)んだから、ボクの家に住みなよ!」


 …だいたい合っていましたが、スケールが違いましたね。そうでした。勇者様はお金を腐るほど持っているので、安宿なんかに泊まる訳ありませんよね。


 断っても連れていかれそうですし、従いましょう。宿賃が浮くと考えれば、悪い提案でもありません。勇者様の家は絶対に大きいでしょうしね。少し楽しみです。


「では、お言葉に甘えさせて頂きます。宿を引き払うので、少し寄り道しますね」


「やった!これでずっと一緒に居られるね!」


 私の能力目的とはいえ、必要とされるのは少しだけ嬉しいですね。もうクビにされるのは嫌ですから、出来るだけ勇者様に嫌われないように頑張りましょう。



 ♢♢♢



 宿を引き払った後に勇者様の家に向かったのですが、おかしいのです。


 私はここが何なのか知っています。


「勇者様、どういう事でしょうか」


「え?何が?」


 ……勇者様には私の質問の意味が理解できないのでしょうか?


 そして勇者様は、まるで自分の家かの様に門を開けて入っていき、玄関の扉を開けました。


 …嫌な予感が止まりません。


「「お帰りなさいませ、カーラお嬢様」」


「うん、ただいま」


 そして私は同じ質問をもう一度しました。


「…勇者様、どういう事でしょうか」


 おかしいですよね。これではまるで、勇者様がこの領の領主様の娘みたいではないですか。勇者様がお嬢様と呼ばれましたよ?勇者様がお貴族様?…まさか、そんな訳ありませんよね。勇者様ですもんね。勇者様がお貴族様だというのは、スライムがドラゴンを倒すってくらいに信じられませんもんね。きっと勇者様の功績が称えられて、住まわせてもらっているとかですよね。そうに違いありません。


「あ、もしかしてメイは知らなかったの?ボクはこのユリアール領の領主の娘、ユリアール・カーラだよ」


「嘘ですね。私は騙されませんよ」


「えぇ⁈本当だよ!」


 なんて分かりやすい嘘を吐くのでしょうね、勇者様は。いくら私が庶民でも、勇者様がお貴族様でない事くらいは分かりますよ。お貴族様というのは、お貴族様みたいな人ですから。


 ……………。


 ………ふぅ。現実逃避はこれくらいにしておきますかね。もう分かっていますよ。世界は広いって事ですね。私の脳が追いつくまで、少しだけ時間が欲しいです。


「カーラお嬢様、そちらのご令嬢はどなたでしょうか」


 ……え?ご令嬢って、私の事でしょうか?


 …ふふっ、ご令嬢と呼ばれるなんて生まれて初めての体験です。…悪い気はしませんね。この初老の男性は、噂に聞く執事という人なのでしょうか?お貴族様に仕える執事さんから見て私がご令嬢に見えるのであれば、勇者様がお貴族様だというのも、あり得る事かもしれませんね。


「あ、紹介するね。この娘はメイ。ボクの仲間()だよ!」


「…カーラお嬢様。お嬢様はご存じ無いのかもしれませんが、女性同士では結婚する事が出来ないのですよ」


 相変わらず勇者様は変な事を言いますが、今は気分が良いので許します。執事さんは勇者様の言葉を真に受けていない様ですし。



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