18話 おはようございます
「きゃあぁぁぁぁ!!!」
ぱちっ
「…うるさいですね」
朝です。物凄く朝です。普段は自然と目覚める時に起きますが、今日は誰かの声が目覚ましになってしまいました。あまり良い目覚めではありませんね。
「きゃああぁぁ!!」
「うわあぁぁぁ!!!」
そして続く悲鳴。こんな朝早くから何事でしょうか。虫でも出たのですかね?…はぁ、もう少し寝させてくださいよ。そう思い、私は目を閉じました。
「メイちゃん、行ってみるわよ!」
「…………………はい」
…どうやら、二度寝はさせて頂けない様です。
あぁ。サクラさんは優しいですね。正義感でしょうか?サクラさんのそういう部分は好きですが、出来れば私を巻き込まないでほしかったです。まぁ、行きますけどね。虫くらいなら、私がサクラさんに頼んで退治してもらいますよ。
♢♢♢
「…メイちゃん、お友達が来てるわよ」
「…………」
……おはようございます。どうして居るのですかね?
そこには、まるで置物かの様に氷龍が居ます。声を出さず、動かず。…どうして居るのですか?何故ですか?
「メイちゃん、ほら」
「…はい」
サクラさんは、動けない私の背中を押し、氷龍に近付けます。絶対に私に用があると確信していますよ。…事実、それ以外の可能性は考えられませんけどね。
「…氷龍さん。どうしたのですか?」
「…………」
…何か言ってくださいよ。他の七聖龍の様に、うるさく無いのは好感ですが、言わないと分かりませんよ。まぁ、声を出されても、私には理解出来ませんけどね。
うーん。本当に何の用があるのですかね…。何かありましたっけ?
…あ!もしかして、氷龍だけ進化していないからですか?ですが、その事実を氷龍は知らないはずです。もし知っているのであれば、私の心を読まれたという事ですかね?まさか、そんな事あり得ませんよね?
確かに昨日、私は会いに来るなら進化させてあげると思いました。違いますよね…。そんな訳ありませんよね?私の思ったことが、テイムした相手に全て筒抜けだなんて、プライバシーの侵害ですよ?
それに、私は七聖龍に対して、散々うるさいと思っていましたよ。その事も伝わっているのですか?
…もしそうなら、ごめんなさい。別に悪意があって思ったのではありませんからね。私が客観的にそう感じているだけですから。私の感覚の問題なので、気にしなくて大丈夫ですからね。
…はぁ。取り敢えず、進化させてみますかね。
ぽわわわわわわ
個体名『氷龍』が『氷聖龍』に進化しました
これで良いですか?
「………………」
やはり、反応してくれないのですね。
「氷聖龍さん…」
どうしたら良いですか?ほかに用が無いのなら、出来れば帰って頂きたいです。こんな場所に七聖龍が居ては、騒ぎになるかもしれませんからね。まだ早朝なので、ご近所さんは気付いていないみたいですが、時間の問題です。
バサッツバサッツ!
すると、氷聖龍は何も言わずに翼を動かし始めました。やはり、私の心が読まれているのですね。
…普通に怖いです。
つまり、私が『みんな集まってください』と思えば、5匹がここに集まるという事ですよね。絶対にそう思わないようにしないといけませんね。まぁ、思う事は無いと思いますが。
そして、氷聖龍は空高くまで上昇し、飛び去って行きました。わざわざこんな所に来るなんて、そんなに進化したかったのですかね?もしそうなら、ごめんなさい。次からは仲間外れにしませんからね。
…さて。今、私の後ろにはサクラさんだけでなく、使用人の方々が集まっています。私は今すぐにでも、再びベッドにダイブしたいですが、どうすれば良いでしょうかね?振り向かずに闇魔法で部屋に戻っても良いですかね?ダメですか?
「メイお嬢様、詳しくご説明頂けますか?私は、領主様に報告する義務がございます」
「…はい。…ごめんなさい」
そして、私は執事のルナールさんに、全てを話しました。七聖龍の事、今回氷聖龍が来てしまった事。
ルナールさんは終始驚いていましたが、根本的な原因は、全てカーラにある事を薄々理解してくれている様で、私が怒られる事はありませんでした。それどころか、カーラの尻拭いに感謝されてしまったくらいです。
どうやら、カーラの罪は家族にも正しく伝わっているみたいですね。伝わっているなら、もっと強く言ってほしいですよ。まぁ、言ったところで変わらなかったと思いますけどね。
そして話はそれなりに長くなり、私が解放されたのは、いつも起きている時間よりも遅い時間でした。もちろん、再びベッドにダイブする事は出来ませんでした。
まぁ、朝ご飯を食べた後に少しだけ寝ましたけどね。起きたらお昼ご飯の時間でしたけど、それは仕方がない事です。自然の摂理ですね。




