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16話 怖くはありません(怖いです)

 

「…サクラさん。以前サクラさんは、どんどん戦わせて良いと言いましたよね?それなのに、私に竜と戦えと言うのですか?」


 サクラさんは、私に竜と戦ってこいと言いましたが、もちろん私は嫌なので反論します。


「…確かに言ったわね。でも相手は竜よ?少し強くなったくらいで戦える相手じゃないわ」


 …どうやら、サクラさんは未だに私の能力を理解していないみたいですね。


「私のスキルを使って1対1の場合、この世界にサクラさんに勝てる相手は存在しませんよ」


「…え⁈ …そんな事」


 流石に、私のスキルを最大限に掛けても、スライムがカーラに勝つ事は出来ません。ですが、サクラさんはスライムより遥かに強いです。相手が竜なら負ける要素が一切ありません。まぁ、カーラより強い生き物が存在したら負けるかもしれませんけどね。


「バフ掛けますね」


「え…」


 そして私は、サクラさんにバフを掛けます。必要ないとは思いますが、竜にはデバフを掛けておきます。


「良い感じに弱らせてくださいね」


「…分かったわ」


 サクラさんはまだ不安な様ですが、竜に向かって走り出します。私も直ぐに魔力譲渡と回復が出来る様に、後ろから付いていきます。


 そしてサクラさんは、竜から10メートルくらいの位置で止まりました。どうやら、魔法で倒すみたいですね。


「特訓の成果を見せてあげるわ!」


 そう言って、サクラさんは水魔法を発動します。すると、サクラさんの周りに幾つもの水の矢が現れました。以前、水球を作って放つの見た事がありますが、それの比ではありません。


 バフで威力は上がるでしょうが、掛けても魔力量が増える訳では無いので、素でここまでの事が出来る様になっているという事です。たった2日の特訓で、急激に成長していますね。普通に凄いです。


 そしてサクラさんは、水の矢を竜に放ちます。竜はそれに気付いて、風魔法のブレスを放ちますが、矢の勢いは止まりません。バフとデバフのせいでもありますが、一方的ですね。


 …ですが、これでは竜が死んでしまいそうなので、デバフを解除しますかね。風魔法を使えたのは確認出来たので、目的の竜に間違いありませんからね。


「ギュアァァァァ!!!」


 そして、デバフは解除しましたが、サクラさんの攻撃に竜は耐えられず、悲鳴を上げて倒れました。


「…あれ?おかしいわね…。あ、レベルが上がっていくわ」


 これで、サクラさんは自分と実力と私の能力を正しく理解出来たでしょうね。この調子で次もいってもらいましょう。


 では、魔力譲渡をしますか。早くしなければ、竜が死んでしまうかもしれませんね。


 ぽわわわわわわ


 個体名『緑聖龍』が誕生しました


 ぱああああああ


 個体名『緑聖龍』をテイムしました


 …はい。完了です。またしても、新しいお友達が出来てしまいましたね。


「成功したみたいね」


「はい」


 緑聖龍は薄っすらと輝いているので、成功したことは一目で分かります。


 さぁ、次に行きますかね。


 ですが、そう思った瞬間、サクラさんが恐ろしい事を言い出しました。


「ねぇ、メイちゃん。この子に乗れたりするのかしら?」


「…え⁈」


 …サクラさんは本気で言っているのでしょうか?


「無理ですよ!」


「え…。でも、テイムしたのよね?」


 これは、乗れるか乗れないかの問題ではありません。それ以前の根本的な問題です。


「怖いではありませんか!」


「…テイムしたのよね?お友達なんでしょ?ポチには乗ったじゃない」


 くっ…。どうして、そんな事を言うのでしょうか。そんなに乗りたいのですかね?そもそも、ポチは陸を走ります。龍は空を飛ぶのですよ?


「…サクラさんは怖くは無いのですか?」


「恐怖よりも、乗ってみたい気持ちの方が強いわね。それに、もう1匹の竜が居る場所は、闇魔法で行けないんでしょ?」


 確かに、光魔法が使える竜の目撃情報があるのは、カーラが殺した雷龍の住処だった場所です。もちろん、そんな場所には行った事がありません。ですが、そこまで遠い距離ではありません。


「走って行けば良いではありませんか」


「…え。普通に嫌よ。何時間かかると思ってるのよ。メイちゃんって走るの好きなの?」


 …どうしてでしょう。好きでなければ、走らないのでしょうか?私がおかしいのでしょうか?


 …そういえば、初めてカーラと遠出した時、カーラは馬車か徒歩か走るか、そのどれが良いか聞いてきましたね。私は一切迷うことなく、馬車を選択しました。その時、私は走って行くのは絶対に嫌だと思いました。


 …どうやら、私はカーラに毒されていたのかもしれません。カーラが相手ではないのですから、走るという選択肢は間違ってますね。私は別に走りたい訳ではありません。出来るだけ楽な移動方法が良いではありませんか。


 …そうです。龍に乗れば、疲れる事無く目的地に到着出来ます。私は楽をしたいです。つまり、私は龍に乗りたいです。私は龍に乗りたい…。怖くない…。怖くない…。怖くない…。


 ふぅ。心の準備は出来ました。大丈夫です。怖くはありません…。


「サクラさん。…りゅ、龍に。…乗りましょう」


「やった!」


 あぁぁぁぁぁぁ…。言ってしまいました。もう逃げられません。怖くない?そんな訳ないじゃありませんか。怖いですよ!凄く!ですが、このまま走って行く事を押し切れば、サクラさんに変人だと思われます。カーラと同じだと思われてしまいます。そんなの嫌です。


「…緑聖龍さん。背中に乗せてもらっても良いですか?」


 もちろん、断ってくれて構いませんよ。断って良いですからね。


「ギュアァァァァ!」


 すると、緑聖龍は乗れと言わんばかりに、体を低くしてきました。…断ってくださいよ。


「メイちゃん、ほら!」


「うぅぅ。…はい」


 そして、私は恐る恐る緑聖龍の背中に乗り、しがみつきました。


「…緑聖龍さん。私達は、光魔法を使える竜を探しています。雷龍の住処だった南の山に居るそうなのですが、心当たりはありませんか?」


「ギュアァァァァ!!!」


 バサッツバサッツ!


 …うぅぅ。緑聖龍は私の言葉を理解したかの様で、飛び始めようとしてしまいました。どうして、私の言葉を理解出来てしまうのでしょうね。


「ゆっくり…。ゆっくり飛んでくださいね」


「ギュアァァァァ!!!」


 そして、緑聖龍は南に向かって飛び始めます。私の言った様に、ゆっくりと飛んでくれています。偉いです。どうか、そのままゆっくりとお願いします。


「わぁ!メイちゃん、見て見て!凄く綺麗よ!」


「そうですね…」


 サクラさんは、はしゃいでいますが、私には緑聖龍の背中の一部しか見えません。綺麗な黄緑色です。


「もぅ。ほら!」


「きゃう!」


 サクラさんは私の手を引っ張り、無理やり引き剝がします。あぁ、そうでした。サクラさんのバフ、解除していませんでしたね。力が強すぎます。…私は今日、死ぬかもしれませんね。


「大丈夫だから。ちゃんと見て!」


「…綺麗ですね。…凄く」


 空の上から見る景色は、今まで見た、どの景色よりも美しく見えます。掴めそうなほど近くに雲があり、自然豊かな大地を見渡せます。これが、空から見える景色なのですね。


 まぁ、怖いのでサクラさんにしがみ付いていますけどね。



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