2話 海龍さん
メイです。私は今、海龍と戦うカーラを見ています。どうしてこうなるのですかね。正直言って、デバフを掛けたくなかったですが、海龍と出会ってしまった以上、戦わないとカーラの機嫌は悪くなりますからね。
早く終わってほしいですけど、この戦いは長引くと思います。なぜなら、私がムカついたので、カーラにデバフを強めに掛けたからです。負けるかどうかは海龍次第ですが、どちらにせよカーラは痛めつけられるはずです。死にはしませんし、それくらいは良いでしょう。
はぁ、暇ですね。
♢♢♢
ズシィィン!!
「…メ…イ。勝った…よ」
バタンッ!
そして戦い始めてから約30分、ようやく決着がつきました。海龍が先に倒れましたが、カーラも直ぐに倒れたので引き分けです。
ピロン
…違いました。私の一人勝ちでしたね。
さて、急いで海龍を回復させなくてはなりません。致命傷は負っていないようですが、完全に力尽きて死んでしまう可能性もありますからね。
『回復』
ぱあああぁぁぁぁ!!!!!
あぁ。やはり、回復させると輝いてしまっていますね。氷龍と一緒です。…はぁ。
個体名『海龍』をテイムしました
七聖龍は4匹しかいないので、半分は私のお友達になってしまいました。実害は無いので、もうどうでも良いですが、カーラと一緒に居ると、いずれ他の2匹もお友達になってしまいそうですね。勘弁してほしいですよ。
さて、たとえ龍であれ、水魔法を使える事に変わりはないので、海龍にお願いしてみましょう。
「海龍さん、近くの森が燃えているのです。お手伝いして頂けますか?」
「ヴゥヲォォォォ!!」
…伝わったのでしょうか?全く分かりませんね。まぁ、きっと伝わっているでしょう。氷龍に話しかけた時も、私の言葉を理解している様でしたし。
「移動するので付いてきてくださいね」
「ヴゥヲォォォォ!!」
……。きっと付いてきてくれるはずですよね。
「…メイ。…そろそろ」
「あ!忘れていました」
『回復』
海龍の事を考えていたら、カーラの事を完全に忘れてしまってましたね。
「…メイ。…酷いよ。ボクより海龍の方が大事なの?」
「…まぁ、そうですね」
カーラは疲れて倒れただけですし、海龍の回復を優先させる事は仕方ないでしょう。海龍は世界に必要な存在ですし、もし死んでしまったら大変ですからね。カーラは寿命以外で死なないので、後回しでも問題なしです。
「そ、そんな…。まさか、パーティーを解散したりしないよね⁈」
はぁ、また変な事言っていますよ。面倒ですね。無視しましょう。
「メイ!どうして答えてくれないの?もしかして、家を出ていく気⁈」
あぁ、もう!今日のカーラは本当に面倒ですね!
「出ていったりしませんよ。私はあの家が大好きですからね」
美味しいご飯に大きなお風呂、そしてキャルシィも居ます。それに、執事さんは私の事をお嬢様と呼んでくれるので好きです。料理人さんは私がリクエストすると、次の日には必ず作ってくれるので大好きです。出ていけと言われても、簡単には出ていきたく無いくらいですよ。
「そうだよね!ボクも大好きだよ!メイが変な事を言うから勘違いしちゃったよ」
カーラは都合の良い所だけ聞いている気がしますが、気にしません。ですが、私が変な事を言ったというのは心外ですね。面倒なので、聞かなかった事にしておきますけど。
「ほら、さっさと行きましょう」
「うん!」
はぁ、本当に無駄な時間を過ごしましたね。まぁ、海龍に手伝ってもらえるので、結果オーライという事にしておきましょう。
♢♢♢
それから私達は山火事が起きているという、北の森に向かいました。海流は私が闇魔法で移動したタイミングで、一瞬見失ったようですが、直ぐに気付いて追いかけて来てくれました。テイムされていると、気配とか感じるのかもしれませんね。
「おおぉぉ!燃えてるねぇ!」
体感ですが、森の3分の1が燃えている最中で、4割くらいが完全に燃え終わっているという感じですかね。依頼内容の、2日以内に解決しろというのは、2日で森が全焼するという事なのかもしれませんね。
「海龍さん、消せそうですか?」
「ヴゥヲォォォォ!!」
うーん。どっちでしょうか。まぁ、大丈夫ですよね。
「お願いします」
「ヴゥヲォォォォ!!」
そして、どうやら伝わっていた様で、海龍は飛び立って燃える森の上空に行きました。
「ヴゥヲォォォォ!!」
海龍は上空で雄叫びを上げると、水魔法を使いだし、大量の水が森に降り注ぎます。どうやら成功の様ですね。
「海龍に頼って良かったでしょ。ね、メイ!」
カーラに言われると凄くムカつきますが、事実なので反論出来ません。こんなに強力な水魔法を使える人は、世界に数人居るか居ないかでしょうからね。
流石は海龍で、あっという間に森の火は消え始め、数分で燃えていた部分の半分は消えました。直ぐに終わってしまいますね。
ですが、そう思った瞬間に、海龍に異変がおきました。
「どうしたのでしょう。戻ってきますね」
まだ消し終わっていませんが、海龍は魔法を使うのを止め、こちらに戻ってきてしまいました。
「ヴゥヲォォォォ!!」
…分かりません。誰か通訳してくれませんかね。
「魔力が尽きちゃったんじゃない?ボクと戦ってる時も、沢山水魔法使ってたし」
「あぁ。そうかもしれませんね」
カーラはこういう勘が良いのですよね。流石です。…ん?つまり、これってカーラのせいですよね。…心の中でカーラを褒めたのを訂正したいですね。
ですが、どうしましょう。私の回復魔法では、傷は回復しても魔力まで回復しなかったという事ですもんね。…魔力の譲渡って魔物にも出来るのでしょうか?テイムしているので、もしかしたら出来るかもしれませんね。…やってみましょう。
「えいっ!」
ぽわわわわわわ
ぱあぁぁぁ!!!!!
あれ?たぶん成功しましたが、海龍が輝きだしてしまいました。…大丈夫なのでしょうか。
個体名『海龍』が『海聖龍』に進化しました
…ん?どういう事でしょうか。見た目は変わっていませんが、うっすらと輝き続けています。不思議です。回復魔法でテイム出来て、魔力を直接与えると進化するんですね。
…何でしょうか。何かが引っかかります。
…確かサクラさんが、氷龍をテイムして相談した時に言ってましたね。七聖龍を誕生させた人は、大天使とも大悪魔とも言われていたと。まさかとは思いますが、それって『大天使〈堕〉』って事じゃないですよね。
…また今度、サクラさんに相談してみましょうかね。あ、でも相談するとなると、称号の事を言わないといけなくなりますね。…どうしましょう。それも踏まえて、後で考えますかね。
「ヴゥヲォォォォ!!」
そうこう考えていると、海聖龍は飛び立ち、再び火を消しに行ってくれました。魔力は無事に回復した様で、どんどん森の火が消えていきます。そして数分経つと完全に消化され、海聖龍は戻ってきました。
「ありがとうございました。凄く助かりましたよ。また何かあったら、よろしくお願いしますね」
「ヴゥヲォォォォ!!」
最初から最後まで、海聖龍の気持ちは分かりませんでしたが、きちんと伝わった様で、住処の方向に飛んで行きました。カーラが一方的に迷惑をかけた上に、カーラが原因のトラブルまで解決してもらって、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。当の本人は満足げな顔をしていますけどね。はぁ、今日も精神的に凄く疲れました。
そして私は闇魔法をギルドに繋ぎ、帰ります。カーラだけ残して帰ろうかとも思いましたが、流石に可哀そうなので止めておきました。後で文句を言われても面倒ですしね。
♢♢♢
依頼は無事達成という事で、私は報酬の1カーラを受け取り、キャルシィを連れて家に帰りました。こんなに疲れたのに報酬が1カーラなのが悲しいですが、今回は仕方がありません。
そして、美味しいご飯を食べ、お風呂に入り、この時間がやってきます。
「メイ、枕投げをしよう!」
「嫌です。今日は魔力をいっぱい使ったので無理です」
本当は全然余裕で残っていますが、今日はこれ以上カーラを楽しませたく無いので断ります。枕を思いっきりぶつけたい気持ちはありますけどね。
「…そっか。残念だね」
カーラは、あからさまに落ち込みますが、気にしません。どうせ寝れば元通りです。
「あ、そうだ!メイ、明日から1週間、王都に行くよ!」
「いってらっしゃい。社交界ですよね。私は予定があるので行きません」
サクラさんに聞いておいて良かったです。聞いてなかったら、知らずに連れていかれるところでした。
「えぇぇえっ⁈ そんな!嘘だよね、メイ!」
「さあ、寝ましょう。おやすみなさい、キャルシィ」
「はい。おやすみなさい」
「ちょっと!!メイ!!!!」
ふふっ。何だか少しだけ気分が良いです。サクラさんのおかげで、カーラに勝てた気がします




