表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メイちゃんが大魔王になるまで  作者: 畑田
1章 勇者討伐編
33/155

33話 獣魔族

 

 ヒュンッツ


「--王かもしれませんね。冗談ですけど。……え?」


 その瞬間、私の目に映る景色は一変しました。ケルディ領の街並みも、カーラの姿も消え、私は何処だか分からない室内に居ます。


 だだっ広い部屋だというのに私以外に人は居らず、時が止まっているかの様に感じます。


「…まさか、ですよね」


 …あぁ、どうしましょう。突然起きた意味不明な状況だというのに、こうなってしまった理由が予想できてしまいます。思い違いだと願いたいですが、それ以外に原因が思い当たりません。


 私は……なってしまうのですかね。…あれに。きっと、私が一番強い魔族という事なのだと思います。


 …はぁ。私に魔族の血が流れていると言っても、ほんの少しだけですよ?曽おばあちゃんが魔族というだけです。その程度で私を魔王候補の選択肢に入れないでくださいよ。私を魔王にするなんて、完全に選択を間違っています。


 称号『魔王』を獲得しました


 「ひゃう!」


 ……あぁ、やはりですか。無情にも私の不安通り、頭の中に声が響いてきました。


 スキル『獲得経験値上昇』を獲得しました

 スキル『同族支配』を獲得しました

 称号『聖女』・『魔王』が『天使〈堕〉』に統合進化しました

 スキル『攻撃力上昇』を獲得しました

 スキル『防御力上昇』を獲得しました

 スキル『速度上昇』を獲得しました


 …はい、訳が分かりません。何処から突っこめば良いのですか?ちょっと多いですよ。


 ……はぁ。


 『魔王』に選ばれてしまった事は、もちろんヤバい事です。ですが、それ以上にヤバいスキルを得てしまいました。


 スキル『同族支配』…これは、世界で最も私が得てはいけないスキルでしょうに。


 おそらくですが、これは私よりもレベルの低い同族を支配できるというスキルだと思います。つまり、カーラ以外の人間・魔族を支配できてしまいますね。なろうと思えば、余裕で独裁者になれるかもしれません。私は人族で二番目に強く、一番強い魔族ですからね。


 あ、でもバフスキルは嬉しいですね。カーラの驚く顔が楽しみです。


 …まぁ、そんな些細な事は置いておいて『天使〈堕〉』って何ですか?


 最初から堕とされているなんて失礼だと思いますよ?いつ私が堕天したと言うのですか?


 ……私、悪い事はそんなにしていないと思います。天使というのは少し嬉しいですけど。


 はぁ。…私が『魔王』に選ばれ、ここは魔王城の魔王の部屋という事なのですね。そして、私の後ろにある大きな椅子が、魔王が座るべき王座という訳ですか。


 …取り敢えず座っておきますかね。ここで待っていれば、カーラが迎えに来てくれるはずでしょうし。


 ガチャ…キィィー


 ん?何でしょうか。正面の大きな扉がゆっくりと開いています。カーラにしては早すぎますよ?


 あ…。扉から部屋を覗く可愛いお顔が見えてきました。


 ……えっと。これ、ヤバイ状況ではないですか?どう見ても人族の私が、魔王の椅子に座っている所を見られてしまいます。側から見れば、完全に不法侵入ですよ。


 …通報されるかもしれませんね。……どうしましょう。


「…あの、魔王様…ですか?」


「あ、はい。魔王…でした」


 …何故だか分かりませんが、大丈夫そうですね。


 …というか、どうして私が魔王だと思ったのですか?私って魔王に見えるのですか?


 「し、失礼しました!」


 少女は私が魔王だと答えると、慌てて扉から入り跪いてきました。


 猫さんみたいな耳と尻尾…凄く可愛いです。おそらく、獣魔族だと思います。


「初めまして、魔王様。私、先代四天王が1人、カルフィシィが娘、キャルシィと申します」


 なんて礼儀正しい娘なのでしょう。もう、これは決定ですね。魔王()の四天王にしましょう。


「私はメイです。よろしくお願いします、キャルシィ。早速ですが、四天王になりませんか?」


「にゃ⁈ よ、良いんですか?わ、わ、私で良ければ、精一杯務めさせて頂きます!」


 聞きました?『にゃ』ですって!可愛いです。魔王ってのも、案外悪くないかもしれません。可愛いお友達ができてしまいましたよ。


 …っと、和んでいる場合ではありませんね。私以外に人が居ると分かった以上、急がなくてはなりません。


「キャルシィ、この城には他に何人くらい居ますか?」


「…正確には分かりませんが、200人くらいだと思います」


 おぉ、結構多いですね。魔王が不在の期間も、関係なく魔王城を守っていたという事でしょうか。それか、新しい魔王誕生に備えて、集まりだしていたのか。どちらにせよ…。


「全員をここに集めてください。門番さんも給仕さんも、全てです」


「分かりました。直ぐに集まってもらいますね!」


「お願いします」


 ふぅ、なんて素直で良い娘なのでしょう。絶対に魔の手(カーラ)から守らなくてはいけませんね。



 ♢♢♢



 キャルシィに頼んでから数分経つと、徐々に魔族さんが部屋に入ってきました。


 翼の生えた顔の怖い人、なんか凄く大きい人、ちょっと刺激的なお姉さん。キャルシィと同じ獣魔族と思われる可愛い人、かっこいい人。沢山の魔族さんが私に礼を尽くしてくださいます。私なんかを敬ってくださるのは恐れ多い気持ちでいっぱいですが、とても素敵な方達だという事は分かります。


 ……何というか、人族が魔族と争っている事が不思議に感じますね。


「魔王様、城に居る全ての魔族が集結しました」


「ありがとうございます、キャルシィ」


 さて、どうしましょうか。集まって頂いたのは良いものの、何からやれば良いのでしょうか。…まぁ、先ずはあれですね。


「皆さん、お集まり頂きありがとうございます。魔王になりました、メイと申します。皆さん薄々感じているかもしれませんが、私はほぼ人族です。魔族の血は少ししか流れていません。不満がある人は、どうぞ前に出てきてください。直接お相手致します」


 ……………。


 おや?誰も出てきませんね。私で良いのでしょうか?変わってほしいと言われれば、直ぐに変わってあげますよ?


 そう思っていると、キャルシィが私の表情を読み取ってか、声をかけてきました。


「魔王様、魔王に選ばれた時点で、魔王様は最強です。誰一人として、文句を言う者は居りません」


「…そうですか」


 まぁ、そうですよね。一番強い人が魔王に選ばれるのですから、私が一番強い事は証明されているという事ですし。…残念な事に。


「で、では、四天王になりたい人は居ませんか?居ましたら、手を挙げてください」


 バッツ、ババッツ!!


 …おぉ。私の下に付きたいなんて思ってくださる方が居るなんて驚きです。


 …ですが、どうしましょう。少し多いです。四天王という事は、手を上げてくださった12人から3人を選ばないといけませんよね。私が言い出した事ですし。


 ……もう選ぶのも面倒なので、全員四天王で良いですかね?誰が強いかとか分かりませんし。


「では、手を挙げてくださった12人とキャルシィを合わせて、皆さんが新しい十三天王です。よろしくお願いしますね」


「「「「……え⁈」」」」


 私の国を守ってもらうのですから、多いに越した事はありませんからね。自ら立候補してくださるような方達ですから、きっと良い働きをしてくれるでしょう。何も問題ありません。


「では皆さん、あと1時間もしないうちに勇者がやって来ると思います。危ないので、私の後ろで控えていてくださいね」


 カーラの事ですから、走ってここに向かって来ているはずです。ケルディ領から魔王城まで、走れば1時間かからないと言っていたので、直ぐに来てくれるでしょう。


 ですが、カーラが礼儀正しく扉から入って来るとは限りませんね。変な所から来ても対応できるように注意しておきましょう。念の為、少しだけバフを掛けておきますかね。


「ちょ、ちょっと待ってください、魔王様!先ずは、四…十三天王である私達が、勇者の相手を致します」


「え?死にたいのですか?カー…勇者は、前回の魔王を倒した時より、倍は強くなっていますよ」


 カーラは、神官様とお会いした時に、私のレベルが初めて魔王を討伐した時より上だと言いました。そして、カーラの今のレベルは350程度。レベルだけで見ても、約2倍です。単純な強さなら、もっと強くなっているはずですからね。十三天王さん達の強さがどれくらいか分かりませんが、少なくとも私よりレベルは下です。


「…な。魔王様に勝ち目はあるのですか?」


「余裕です」


 そうなんです。私がカーラに負けるとは思えないのです。その事は、日々の枕投げで証明されています。私が最大出力でデバフを掛ければ、カーラは私に勝てません。剣を持ったとしても、それは変わらないでしょう。


 まぁ、デバフを掛ける前に不意打ちされれば負けるかもしれませんが、カーラが私に対して不意打ちなんてする訳ありませんし。


「「「「「…おおぉぉぉぉ!!!!!」」」」」


「っひ⁉︎」


 …びっくりしました。私があまりにも自信満々に言ったので、皆さんが歓声をあげています。なんだか照れますね。


「では魔王様、私共が戦えない分、せめてこの剣をお受け取り下さい。世界で2番目に優れた魔剣、その名は『魔剣』ディスティリオンになります」


「え?ありがとうございます!」


 おぉ、何だか黒くて強そうです。まぁ、私にはゴンザリオンが有るので使いませんけど。


 あ、ではこれをサクラさんへのお土産にしましょう。サクラさんに何か盗って帰ると約束しましたが、ちょっと難しくなりましたし。貰いものなら、お土産にしても問題ないでしょう。


「さぁ、皆さん。早く私の後ろに控えてください。あ、キャルシィはこちらに来てください」


「はい、魔王様」


 そして、全員が王座の後ろに行き、キャルシィが私の前に来ました。何故キャルシィを私の前に呼んだかというと、それは私が我慢できなかったからです。


「キャルシィ、その…その耳、少しだけ触っても良いでしょうか?」


「にゃ⁈ …良いですけど」


 はい。『にゃ』頂きました。可愛いです。


 ドゴォォォォン!!!


 あぁ、あと少しでしたのに。お迎えが来てしまいました。豪快に扉を破壊し、破片やら何やら飛んできます。間違いなくカーラですね。あと数秒待ってほしかったです。


「キャウンッツ…」


 …ん?何でしょうか?


 破片の中に大きな黒い影が。生き物と思われる何かが、私の前に転がってきました。


「もぅ、危ないですね。…え? …ポチ?」


 ど、どうしてポチがここに………。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ