表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メイちゃんが大魔王になるまで  作者: 畑田
1章 勇者討伐編
32/155

32話 いざ、ケルディ領へ

 

「サクラ、行ってくるね!」


 さて、遂にこの時がやってきました。私達は向かうのです。カーラが楽しみにしていた魔王討伐(イベント)に。


 冒険者のレベル爆上げに計3日。その後、準備と休息に3日使って、今日が出発の日です。因みに、レベル爆上げは皆さんのレベルが100を超えた辺りから殆ど上がらなくなったので、皆さん同意の元に終了しました。結果的に8人共100レベルを超え、お金もプラスだったので、凄く感謝されてしまいました。私が得たお金の合計も1億カーラを超えたので、私も満足です。


 その後は準備と休息と言いつつも、カーラが私との木刀試合を気に入ってしまい、お庭で毎日相手をさせられました。おかげさまで、私もそれなりに剣術を身につけられたと思います。まぁ、剣術が上達したとはいえ、それを活かす機会が来ないと嬉しいのですけどね。


 そんなこんなで出発までの時間を使い、新しい魔王が誕生するのが最短で残り20日ほどになってしまいました。この日数は過去の記録を元にしているらしく、魔王が討伐されて新しい魔王が誕生した最短の日数まで、残り20日という事です。そして、この日数は強さに比例していると言われており、誕生が早いほど手強く、苦戦を強いられる相手だったそうです。


 つまり、あと20日を待たずして魔王が誕生した場合、その魔王は今までの魔王の中で最強という事になります。まぁ、私にとっては、ケルディ領で観光する日数の違いでしかないので、希望としては到着してから10日ほどで誕生して頂けると丁度良いですね。


「いってらっしゃい。カーラをよろしくね、メイちゃん」


「いってきます。お土産、盗ってきますね。楽しみにしていてください」


 カーラ曰く、魔王城にはお宝があるらしいです。私は初めてなので詳しく分かりませんが、前回の魔王討伐で、カーラは凄いお宝を盗ってきたとか。それだけは、ちょっと楽しみですね。



 ♢♢♢



「メイ、馬車で7日・徒歩で12日・走って20時間、どれが良い?」


 おや?何だか聞いた事のある質問ですね。カーラは、この問答が好きなのでしょうか?ですが、何度聞いても私の答えが変わる事はありません。寧ろ、前回よりも考える時間を要しません。走るのは論外ですし、流石に12日も歩くのは嫌ですからね。お金はたんまり有るので運賃も気になりませんし、実質1択です。


「馬車で行きますよ。さあ、行きましょう」


「え?…走ったら20時間で着くんだよ?」


 はぁ。カーラは何を言っているのでしょうね。私に聞いてきたのはカーラなのですから、私が答えた時点で移動手段は決まったのですよ。不満があったとしても、受け入れるべきです。それに、私はここで妥協なんてしたら、絶対に後悔しますからね。カーラの言葉に返答する必要はありません。さっさと馬車乗り場に向かいましょう。


 私達が向かうケルディ領までは距離がありますが、いっぱいお昼寝して、カーラの作る美味しいご飯を食べていれば、7日なんてすぐです。無駄に疲れる必要はありません。ああ、カーラの手料理が楽しみです。



 ♢♢♢



「…や、やっと着きましたね」


 メイです。私は今、凄く後悔しています。何故なら、7日という期間をなめていたからです。盗賊に襲われて睡眠を邪魔される事3回。そして何よりの原因は、カーラが定期的に私を引っ張って馬車を飛び出すのです。


 先日の馬車移動は片道3日だったので耐えていたようですが、カーラは7日間も体を動かさない事を我慢できない人だったのです。魔物を見つけては狩りに行き、終われば走って馬車を追いかける。その度に私は起こされ、強制的に連れていかれます。盗賊よりも数倍厄介な存在でした。1日10時間走って、2日で終わらせた方が、よっぽど楽だった気がするほどに。


 それに、カーラとの生活に慣れたせいで、7日もお風呂に入れないのは辛かったです。私の神聖魔法は回復以外にも浄化ができるので、体は綺麗に保てます。ですが、心は癒されません。カーラによるストレスは蓄積されていくのです。


 まぁ、過ぎた事は仕方ありませんね。ポチへのお土産が沢山狩れたので、全てが無駄だったという訳ではありませんし。それに、カーラの手料理は美味しかったですからね。


「じゃあ、メイ。早速行こっか!」


「えぇ、そうですね。サイコス様も待っているでしょうし」


「…え?」


 …ん?私、何かおかしな事を言いましたかね?カーラが素っ頓狂な顔を浮かべています。神官様に言われた通り、大賢者のサイコス様と合流するのですよね?


 …まさか、カーラは完全に忘れているのではないでしょうか。


「カーラ、何処に行くおつもりですか?」


「…サイコスの家」


 あぁ、どうやら思い出してくれたみたいですね。だいぶ気落ちしていますが。


 きっとカーラの事ですから、魔王城にでも行こうとしたのでしょうね。魔王城で魔王の誕生を待とうととでも考えていたのだと思います。


 …ですが、流石にそれは魔王に同情してしまいますね。誕生したその瞬間に、勇者から戦いを挑まれて殺されるのですから。いや、最悪の場合は魔王が誕生するまでに強い魔族が殆ど殺されるかもしれませんね。


 ……うぅぅ、考えただけでゾッとします。そんな事になれば、魔族と人族の全面戦争に発展してもおかしくないですよ。


 …はぁ。私はサイコス様は居ても居なくても良い程度に思っていましたが、今は確実に同行してほしいです。カーラを見張る役は多い方が良いですからね。


「ここからサイコス様のお屋敷は近いのですか?」


「んー。歩いて10分くらいかな」


 …う。思っていたより近いですね。ちょっと緊張してきました。一緒に居てくださった方が良いとはいえ、やはりお貴族様に会うのは不安がありますね。サイコス様も、カーラみたいに全く貴族っぽくない人だと良いのですけど。私の持っている情報は、カーラはサイコス様に嫌われていると思っているけど、そうではないという事だけですし。


「はぁ、今すぐ魔王が誕生しないかなぁ。そしたら、サイコスを迎えに行かずに、メイと2人で急いで向かえるのにね」


「まだ魔王誕生まで10日以上あるのですよ。諦めてください」


 今までの最短で13日。下手すれば、何十日も後になる可能性だってありますからね。


「それはまだ分からないよ!うんと強い魔王だったら、今すぐにでも誕生するかもしれないからね」


「…そうですね。そういえば、魔王ってどうやって選ばれるのですか?」


 よく考えたら、私は魔王討伐に来ているにも関わらず、その辺の事はよく知りませんでした。少し他人事すぎましたね。勇者は才能で選ばれると聞いた事がありますが、魔王も同じなのでしょうか?


「魔王は単純な強さで選ばれるんだよ。今生きている魔族の中で、一番強い魔族が魔王の称号を与えられるんだよ。期待しちゃうよね!」


 つまり、前回の魔王の側近や四天王。それか親族辺りの強い魔族から選ばれる可能性が高いですかね?魔王が倒されて約3年で、強くなっているでしょうし。


 あ、ですが、3年もあれば急激に強くなる魔族も居るかもしれませんね。私なんて、ここ20日ほどで強くなってしまいましたし。


 ………ん?


 …………魔族?


「…カーラ。もしかしたら、私が魔ー」


 ヒュンッ………。


「え?…メイ?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ