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メイちゃんが大魔王になるまで  作者: 畑田
1章 勇者討伐編
24/155

24話 騎士と令嬢

 

 盗賊の対処という大変な事がありましたが、その後は何事もなく馬車は進み晩御飯のお時間となりました。ですが、そこで事件が起きました。


「…嘘です。あり得ません!」


 私は今、晩御飯のシチューを一口食べました。凄く美味しいです。美味しい事は良い事なのですが、問題は誰が作ったのかです。


「メイの口に合わなかったかな?」


「…美味しいです」


 そうなんです。今、私が食べているのは、カーラの手作り料理です。それなのに、何故か凄く美味しいのです。


 一口目は私の勘違いかと疑いましたが、何口食べても美味しいのです。おかしいですよね?カーラの手作り料理が美味しいという事を信じるくらいならば、スライムがドラゴンを倒したと言われる方が、よっぽど信じられます。それくらいの奇跡です。


「カーラ、どうしてこんなに美味しいのですか?カーラの手作りなのに美味しいのは、変ですよね?」


「えぇ⁈ 酷いなぁ、メイは。ボクは4年くらい冒険者やってるんだよ。それにボクは一応貴族なんだよ?美味しい味を知ってるんだから、何年も料理してれば作れるようになるよ」


 …どうやら、私の認識が間違っていたようです。正直なところ、私はカーラなら味よりも手軽さを選ぶと思っていました。野営でも、乾物と水だけで満足し、料理なんてしないと思っていました。世界には私の想像できない事があるものですね。認めたくはないですが、カーラは料理上手です。


「…カーラ。その…お、おかわりをください」


「ふふぅ。どーぞ、メイ」


 はぁ、何だか凄く負けた気分です。私は1年半も冒険者をやっているといのに、料理なんてできません。まぁ、別に覚える必要が無かっただけですけどね。私のもと居たパーティーですと、野営するような遠出は数回しかした事ありませんし。必要無かったから料理ができないだけですからね。


「騎士のお嬢さん、私も少し貰っていいかしら?お金払うわ」


 …なんという事でしょう。匂いに釣られてか、数人の乗客がやってきてしまいました。私の分が減ってしまいます。普通は自分で持ってくるか、御者から購入するというのに。御者は売れる事を見越して食料を持ち込んでいるはずですから、完全に営業妨害ですよ。


「お金なんていらないよ。いっぱい食べて!」


「いえいえ、少しで良いんですよ。あんまり頂くと、お嬢様の分が無くなってしまうでしょう」


「…お嬢様? ああ、メイ(お嬢様)の分はちゃんとあるから大丈夫だよ」


 …何だか少し照れてしまいますね。きっと、この方は私が馬車に乗った時に見ていたのでしょうね。カーラが私の事をお嬢様と呼んだので、私達の関係を騎士と令嬢と思われているみたいです。ふふっ、聖女と呼ばれるよりも、よっぽど気持ちが良いですね。


 そして、それから人が人を呼び、カーラの周りには10人程の人が集まりました。カーラの料理は好評のようで、皆が美味しいと言っています。もうカーラは冒険者を辞めて、料理人にでもなったほうが良いんじゃないでしょうか。


 …ん?何だか昼にも同じような事を思った気がしますね。


 まぁ、そんな事は置いといて、1つ問題があります。


「…カーラ、もう少し食べたかったです」


 なんと、好評すぎて私がお代わりを頼もうと思ったら、もう残っていなかったのです。私のおなかは今、八分目です。少しだけ足りないのです。


「はい、どーぞ」


「…え?」


 なんという事でしょう。もう無いと思っていたら、信じられない事にカーラがデザートをくれました。フルーツの盛り合わせです。様々なフルーツを切って盛り付けただけですが、美味しい事間違いありません。カーラが用意してくれたのですから、お金に物を言わせて高級なフルーツを揃えたに違いありません。


「美味しいです。美味しいですよ、カーラ!」


「うん。メイが喜んでくれて良かったよ」


 あぁ、カーラとパーティーを組んで良かったです。今初めて、心の底からそう思いました。辛い事はたくさんありましたが、追い出された(あの)時にカーラの手を取って良かったです。私の選択は間違っていませんでした。



 ♢♢♢



 …--ン。キィーン、ガン!


「…うるさいですね」


 馬車3日目、私達が眠っていると、外から金属音が聞こえてきました。凄くデジャヴです。あと少しで到着だと言うのに、本当に迷惑ですね。


 んー。戦況はどうでしょうか。音が継続して聞こえてきますし、拮抗しているのかもしれません。一度お手伝いしてしまった手前、何もしないのは気が引けますね。


「カーラ、起きてください。お客さんですよ」


「…え?…何?」


 良かったです。今回は起きてくれました。これで私が行かなくても大丈夫ですね。


「盗賊みたいです。行ってきてください、カーラ」


「えー。メイが行ってきてよ。あ、デバフ掛けてくれるなら行っても良いよ!」


 カーラは本当に、戦える相手にしか興味が無いのですね。まぁ、私は行きたくないので、素直に言う事を聞きますけど。


「ちょっとだけですからね」


「うん!」


 そして私は、カーラに3種のデバフを掛けます。相手の力量が分からないので、ギルマス程度と良い勝負が出来るのではないかと思うくらいの強さにしておきました。これなら人数が多かったり、100レベルくらいの相手が居てもでも大丈夫だと思います。


「ありがと!行ってくるね」


「いってらしゃい」


 さあ、私はカーラが戻って来るまで休憩していましょう。カーラが負けるなんて有り得ない事ですからね。


 そしてカーラが馬車を降りて十数秒、戦況が聞こえてきました。


 …ぎゃあああ!!!


 …ぐあああああぁぁぁ!!!


 男性の声なので、何も問題ありません。予想通りです。もう少しデバフを強めに掛けても大丈夫だったかもしれませんね。悲鳴はそれからも1分ほど聞こえ続け、悲惨な状況が目に浮かびます。


 そして悲鳴が聞こえなくなると、カーラが馬車に戻ってきました。


「…メイ、全く相手にならなかったよ。もっと強く掛けてくれれば良かったのに」


 カーラは不貞腐れた様な顔で、そう言ってきました。ですが、これは私は悪くないと思います。護衛の冒険者や乗客の命にもかかわる事なので、万が一にもカーラが負ける訳にはいかなかったですからね。それに、私はちゃんと『ちょっとだけ』と言いましたし。


「…では、私は回復魔法を掛けてきますね」


 そして、私はこれ以上文句を言われたくないので、逃げるように馬車から降りました。もしかしたら怪我をされている方が居るかもしれませんからね。カーラの文句を聞くより楽な仕事です。



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