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メイちゃんが大魔王になるまで  作者: 畑田
1章 勇者討伐編
22/155

22話 3択問題

 


 私達がこれから向かうフェンリルの生息地『アイスグラウンド』は寒い事で有名です。季節という概念が殆どなく、ずっと雪が降っているという不思議な場所です。私は雪景色というものを見た事がないので、ちょっとだけ楽しみでもあります。


「メイ!これなんてどうかな?」


「カーラ、私は成人しています。そんな子供っぽい服は似合いません」


 という感じで、今は私の服選びの最中です。私は凄く寒い場所に行くのは初めてなので、私が凍え死なない為に入念な準備が必要という訳ですね。


 まぁ、最初はカーラが服を貸すと言ってくれたので買う必要はないかと思っていましたが、いざ着てみると大きすぎて裾を引きずってしまったのですよね。本当に世の中不公平ですよ。


 カーラに『メイは可愛いんだから、可愛い服を着ればいいと思うけどなぁ』と馬鹿にされる始末です。私だってカーラみたいに大人っぽい服を着こなしたいというのに。


 ですが結局、私の好みで似合いそうな服は見つからず、無難でシンプルなデザインのコートを買う事になりました。私に似合わない服は着れませんし、カーラが選んだ服は論外ですからね。


 ついでに滑りにくい靴や手袋なども買っていき、更にアイテム袋も買ってしまいました。そうです、私はついにアイテム袋を手に入れたのです。奮発して少し大きめの1500万カーラもする袋を買いました。いっぱい入ります。お金が沢山あるというのは素晴らしい事ですね!


 今までは、私の持ち物も全てカーラのアイテム袋に入れてもらっていましたが、これからは違います。…正直言うと、カーラに私の下着や小物を管理されているようで嫌でしたからね。申し訳ないとも思っていましたし。というか、カーラのアイテム袋にはヤバイ物が沢山入っていそうですし、私の大切の物に傷や汚れができてしまう心配もありましたからね。私がアイテム袋を入手する事は、かなりの英断だと思います。



 ♢♢♢



「メイ、馬車で3日・徒歩で4日・走って7時間、どれが良い?」


 これから向かうアイスグラウンドは、ここから結構距離が有ります。その移動手段を、カーラは3つから選ばせてくれるようです。走るという選択肢が有るのがカーラらしいですが、私に選択させてもらえる事が凄くありがたいです。ま、答えは考えるまでもありませんけど。


「もちろん、馬車で行きましょう」


「…え⁈ 走って行かないの?」


 いやいや。私が走って行く事を選ぶと思っていたのが驚きですよ。どういう思考回路をしていれば、私がそれを選ぶと思ったのでしょうか。そもそも、徒歩4日の距離を走って7時間とは、時速何十キロで走るつもりなのでしょうか。私にはついて行け……るかもしれませんが、絶対に嫌ですね。


「…馬車で行きましょう。お願いします」


「んー。まぁ、メイと一緒だからいっか」


 ふぅ、良かったです。危うく私の足が死んでしまうところでした。カーラと一緒に行動すると、ちょっとした事が苦痛に繋がりますからね。本人はきっと自覚がないでしょうけど。


 そして私達は、午後一の馬車に乗ることになり、昼食を済ませて馬車乗り場に向かいました。もちろん、昼食はカーラのおごりでした。カーラは優しいですね。



 ♢♢♢



「お嬢様、お手を」


「………ありがとうございます」


 …何という事でしょう。馬車に乗ろうとする私に、カーラが手を差しのべてくれました。カーラは見た目だけは凄く良いので、とても絵になります。こういうのは、ちょっと好きです。もうカーラは冒険者を辞めて騎士にでもなった方が良いんじゃないのでしょうか。勇者の仕事(魔王を倒すこと)以外はやらなくて良いですから。


 しかも、馬車に同乗する人たちがみんな見ています。若い男性女性問わずに見とれてしまっていますよ。本当に罪な人ですね。ですが、カーラがこれから約3日間、変な事をしないとは限りません。きっとこの人達はカーラの内面を見れば、この光景が幻覚だったのではないかと思うでしょうね。


 今、私達が乗った馬車には、私達を含め6人が乗っています。そして他にも馬車は4台あり、護衛や御者を含めて合計30人ほどでしょうね。ここから通過する領ごとに、人数は増減していくと思われます。私達が向かうアイスグラウンドは、4つ先のアイスフィア領にあるので、今からはのんびり馬車に揺られるだけです。


「メイ、ボクは少し寝るね。何だか寝不足みたいだから」


「はい。おやすみなさい」


 はあぁ、良いですね。こんなのんびりとした感じ。


 思い返せばこの2日半、私の生活はとんでもなくハードでしたからね。昼はカーラに振り回されたり買い物したり。夜は魔力を使い果たすまでカーラと遊んで。…ふふっ、私も眠いですね。絶対に昨夜の枕投げのせいですね。私も寝るとしましょう。 カーラと一緒にお昼寝をできるなんて不思議な気持ちです。いつもこうなら良いのですが。



 ♢♢♢



 …ーーン。キィーン、ガン!


「…うるさいですね」


 何事でしょうか。まだ空が明るいですが馬車が止まり、外から何か音が聞こえてきます。晩御飯には少し早いと思いますし、おやつの時間ですかね?


 …まぁ、そんな穏やかな理由ではありませんね。


 私は寝起きの目を擦り、現状を確認しました。怯えているかのように縮こまっている乗客の皆さん。外から聞こえ続ける金属音。怯え方からして、危ない状況かもしれませんね。


「カーラ、起きてください。お客さんですよ」


「…んー。……」


 …あぁ、これはダメですね。起きそうにありません。…どうしましょう。私が行くべきでしょうか。…行きたくないですね。私は護衛ではないですし。


「…はぁ」


 …本当に嫌になりますね。カーラが起きないという事は、強敵でない事は確かですし、早く終わらせましょう。私のお昼寝を邪魔したのですから、手加減する必要はありませんね。




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