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メイちゃんが大魔王になるまで  作者: 畑田
1章 勇者討伐編
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18話 リリィ・ストライク

 

「カーラ、ドラゴンをアイテム袋に入れておいてください」


「うん!任せて」


 私は、倒してしまったドラゴンの回収をカーラにお願いしました。


 本来、年上でお貴族様でもあるカーラに、こんな後処理みたいな事をさせるべきではありません。ですが、私には時間が必要なのです。カーラがドラゴンをアイテム袋に入れて戻ってくるまでの数十秒。この時間内に私は落ち着いて心を鎮めないといけません。


 転んでドラゴンを倒し、カーラに笑われ…。悲しみ、怒り、そして痛み。


 …私は、転んだ拍子に足を擦りむいてしまったのです。


 …うぅ。痛いです。少しだけ血が出ていますよ。こんなに痛い想いををするなんて最悪です。だから戦いたくなんてなかったのですよ。もう嫌です。


 …………あ!そういえば、私は回復魔法を覚えたのでした。動揺して完全に忘れていましたよ。


『回復』


 ……ふぅ。良かったです。危うく、お風呂で滲みて更なる激痛を味わうところでしたよ。回復魔法が使えるというのは、とんでもなくありがたい事だと改めて実感しましたね。


「入れてきたよー。あれ?メイ、泣いてる?」


 …え?…そんな訳ありません。何を言っているのでしょうか、カーラは。私は成人しているのです。大怪我をしたからといって、泣いたりしません。…そう思いつつも、確認の為に手で軽く触ってみると、何故か少しだけ水が付きました。…おかしいですね。きっと、あれです。


「…泣いていません。転んだ時に目に砂が入っただけです」


 私はそう言って水を全てふき取り、カーラに顔を向けました。すると、そこには見たくもないカーラの笑顔。口角を上げて、私を微笑ましく見つめています。


「メイ、我慢しなくて良いんだよ」


 カーラはそう言い、笑顔のまま私の頭を撫でてきました。


 …頭を撫でられて、こんなにも不快になるのは人生で初めてですよ。カーラが優しさから私の頭を撫でているのは分かります。ですが、私はそんな事望んでいません。


「我慢していません。早く次に行きましょう」


 回復魔法で痛みは治まっていますし、カーラと自分への苛立ちで目から出る水も引っ込みました。


「えー。もうちょっと撫でていたかったのに」


 やはり、カーラは私を子ども扱いしています。こんなのはもう嫌です。私は二度と同じ失敗をしないと心に誓います。


 …はぁ。次です。次!さっさと終わらせましょう。順番が逆になってしまいましたが、残り必要なのはAランク以上の魔物です。


「うーん。居ないねぇ」


「Bランク以下の魔物なら結構見えるんですけどね」


 山の上から森を見渡すと、木々の合間に大きめの魔物がちらほら見えますが、Aランク以上の魔物は見当たりません。


「あ!メイ、居たよ!あそこ」


 …やはり、カーラは野生の勘が鋭いのでしょうかね?Aランク以上の魔物は強いから無駄に増える必要が無く、数が少ないというのに。カーラは凄いですね。


 さて、どんな魔物でしょうか。カーラが指を差す先に居るのは…狼ですかね?


 確か、あの魔物はロンリーウルフですね。群れを成さずに一匹で行動する魔物だったはずです。ギルドの資料で見た事がある気がします。


 …うぅ。怖いですね。あんな魔物を倒しに行かなければならないなんて。心の準備に数日頂きたいですよ。


 ですが、そうも言ってられません。既に、私はカーラに手を引かれて山を降りていますからね。逃げ場なんて最初から無いのですよ。


 …はぁ。Aランクなのできっと強いですが、ドラゴンやカーラに比べれば全然弱いと思います。大丈夫なはずです。



♢♢♢



 私達は山を下り、ロンリーウルフの近くまでやってきました。ロンリーウルフと目が合いそうになる距離です。怖いです。


 ですが、今の私はいける気がします。カーラに引きずられている間に、とても良い事を思い付きましたからね。私は天才かもしれません。要は気づかれる前に決着をつければ良いだけですからね。


 …ふぅ。


 やる事は簡単です。聖剣を抜き、構えて…。


『攻撃力低下』『防御力低下』『速度低下』


「えいっ!!」


 私は動きの低下したロンリーウルフに目掛けて聖剣を投げました。投げるのは結構得意ですからね。カーラでたくさん練習しましたし。それに、距離が有るとはいえ、枕に比べれば投げやすいですからね。


 そして聖剣は一直線にロンリーウルフまで飛んでいき、胴体を貫きました。急所では無かったので、ロンリーウルフは数秒悶えていましたが、直ぐに力尽き倒れました。


 ふふっ、この方法はとても良いですね!怖い魔物に近づかなくて良いですし、カーラより弱いのでデバフを掛ければほとんど動きません。それに、聖剣の切れ味は抜群です。ドラゴンにも問題なく突き刺さるくらいですからね。ドラゴンの前で転んだのが良い経験になりましたよ。私は学習したのです!


「やりましたよ、カーラ!」


「………す、凄いね、メイ。…凄いけど、恐ろしいな」


「え?」


 ……おかしいですね。何だか、カーラに少しだけ怖がられている気がします。…いやいや、カーラに怖いものがある訳がありませんね。きっと武者震いですよ。カーラも一度受けてみたいのかもしれませんね。


「これはメイの必殺技だね。技名はどうするの?」


「技名ですか?」


 技名というのは、一部の達人が自分の専用技に名前を付ける事ですよね?何だか分からないけど凄い奴です。…迷いますね。私が剣を投げるのを見ていた人が『○○だ!』って言う可能性があるという事ですから。


「あ、『メイ・デストロイ』ってのはどうかな?」


「絶対に嫌です」


 カーラのセンスは絶望的ですね。技名に自分の名前が入るなんて恥ずかしすぎますよ。…ですが考え方的には良いかもしれません。…聖剣を投げて命中させる。


「リリィフラワー…ストライク…。『リリィ・ストライク』というのはどうでしょうか!」


 絶対に命中して敵を撃つ聖剣。良いですね!




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