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メイちゃんが大魔王になるまで  作者: 畑田
1章 勇者討伐編
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17話 メイとドラゴン

 

 メイです。おはようございます。レベルは209レベルです、はい。何故でしょうか。美味しい晩御飯を頂いていた時は、まだ192レベルだったんですけどね。


 美味しい朝ご飯を食べて忘れましょう。



 ♢♢♢



「カーラ、ごめんなさい。私には無理です」


 今はギルドで依頼を受けるために、依頼掲示板で良い依頼を探していました。何故私が謝っているかというと、カーラが受けたかった依頼が、私の冒険者ランクが低いせいで受けられないからです。レベルが上がったとはいえ、私はBランク冒険者のままですからね。もちろん、カーラはSSランクです。一番上です。


「じゃあ、先ずはメイのランクを上げようか。サクラに頼みに行こ!」


 そして私達は受付嬢のサクラさんの元に向かいました。私の担当受付嬢は別の人ですが、カーラとパーティーを組んだので、これからはサクラさんに担当してもらう事になりそうです。どちらがリーダーになるかは話していませんが、そんな事は決めなくても私はカーラに付いていくしかありませんからね。


「サクラ、メイのランク上げて!」


「メイちゃんは…Bランクね。じゃあ、Aランク以上の魔物を一匹、Sランク以上の魔物を一匹、そしてギルマスを倒せばSSランクよ。今日の午後からギルマスとの試合で良い?」


 んん⁈ 何故当たり前の様にSSランクの条件まで言うのでしょうか。そして午後から試合という事は、午前中だけで魔物を狩ってこいという事ですよね…。


 ……私、1人で魔物を狩った事がないのですよ?初めてのソロ討伐になるのですが、半日しか頂けないのですか?


「うん、それでよろしく。じゃあ、ちょっと狩ってくるね!」


 そして1分もかからずに会話が終わりました。私は一言も喋っていません。カーラは私が言葉を発する前に私の手を取り、私達はギルドから出て行きました。



 ♢♢♢



「カーラ、ちょっと待ってください。これと戦えと言うのですか?冗談ですよね…」


「え?」


 私達は今、一昨日ドラゴンを倒した山の上に来ています。そして、私の目の前にドラゴンが居ます。


 何故こうなっているかと言うと、森に入るなりカーラがドラゴンを見つけたからです。元の住ドラ?が居なくなり、別のドラゴンがお引っ越しされてきたみたいですね。怖いです。帰りたいです。


 というか、おかしいですよね?普通は先にAランクの魔物から狩って、もし狩る事ができたらSランクの魔物に挑戦するという流れですよね?何故、いきなりSランクからなのですか?普通は順番を守りますよね?


「…カーラ。私に死ねと言うのですか?


「え?ただのトカゲだよ。メイより弱いよ?」


 ………何を言っているのでしょうかね、カーラは。確かに、私のレベルだけを考えれば、ドラゴンよりも強いと思われるかもしれません。ですが、そういう問題じゃないんですよ。怖いものは怖いんです。


「そもそも、どうやって倒せば良いのか分かりません。武器だって、ほとんど使った事の無い短剣しか持っていませんから」


 私は支援職ですからね。怖いのは他の人に任せて、後ろで眺める職業です。ソロでの初陣がドラゴンなんて無理です。


「そっか。じゃ、これをあげるよ。ボクはもう使わないからメイが使って良いよ」


「あの…。これってもしかして…」


 装飾は少なくも美しい純白の長剣。鞘から抜いてみると、日光を透過しつつも、程よく反射する美しい刀身が顔を出し、触れただけで斬れてしまいそうな雰囲気を感じられます。


「『聖剣』リリィフラワー、代々勇者に与えられる剣だよ」


 なんてものを渡してくるんでしょうか。しかも、あげるって言いましたよ。どういう感性をしているのでしょうか。勇者だという自覚がないのですかね?


 …というか。


「…カーラが普段身に着けている剣は聖剣では無かったんですね」


「これはただの丈夫な剣だよ。聖剣なんて使ったら、尚更相手にならないからね」


 あぁ…。噂程度には知っていましたが、聖剣はカーラが認めるくらいに凄い剣なんですね。そりゃあ、歴代の魔王を倒している剣ですからね。そんな剣が無造作にアイテム袋に収納されていた事が驚きですよ。


 …はぁ。…ですが、この剣を使えばドラゴンに勝てるかもしれませんね。…ちょっとだけ頑張ってみましょう。


「では、ありがたく使わせていただきます…。ふぅ」


『攻撃力低下』『防御力低下』『速度低下』


 私にできる事は、とにかく敵を弱くする事。後は、ドラゴンが私よりも弱くなっている事と聖剣の切れ味を信じるだけです。


「やあっ…!!!」


 ドラゴンの動きに注意しつつ、全速力で。攻撃される前に!


 カクッツ!


「きゃあ!!」


 ずしゃあああぁぁぁぁ!!!!


 そして私は転びました。なんてマヌケなのでしょうか。慣れていない全速力。そして足場はごつごつしています。私はドラゴンしか見ていないのですから、コケない方がおかしいですね。


「あれ?」


 どうしましょう。私の手に剣がありません。どうやら、転んだ拍子に放してしまったみたいです。


 ヤバイです、ヤバイです、ヤバイです!


 今攻撃されたら、私に防ぐ術がないですよ!


 ズシィィィィン!!!!


 ピロン


 …何故でしょう。ドラゴンが悲鳴すら上げずに倒れました。…どうやら、私は転んだだけでドラゴンを倒したみたいです。聖剣がドラゴンの首元に刺さっていますよ。…ふふっ。なんだか笑えてきますね。私はもう、人間を辞めてしまっていたみたいです。


 そして、それを証明するかのように、レベルが1つしか上がりませんでした。Sランクのドラゴンを倒したのにです。昨夜はいっぱい上がったんですけどね。ドラゴンを怖がっていましたけど、よく考えてみれば、私はドラゴンより強い生物を散々倒していたのでした。


「あははっ!凄いよメイ!剣を投げただけでトカゲを倒しちゃうなんて!ボクでも一度も無いよ!」


「…うるさいです」


 私はカーラに聞こえない様に、小さくそう言いました。


 …はぁ。こんな簡単にドラゴンを倒せてしまうなんて、悲しくなりますね。



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