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3話 言われましたっけ?

 

 ジリ…ジリジリジリジリ……


「キャルシィ、迎えに来ましたよ」


「あ、メイお姉ちゃん、サクラさん」


 お買い物が終わり、レミコ様達とお別れをした後、私たちはギルドにやってきました。


 普段、サクラさんはギルドで働いていますが、今日は私と一緒にお出かけしたので、いつもサクラさんと一緒に帰宅するキャルシィのお迎えです。


 キャルシィは私達が来ると、凄く嬉しそうな顔をしてくれ、私まで嬉しい気持ちになりますね。


「キャルシィ、もう仕事は終わりますか?」


「あ、仕事は終わって、明日の準備と確認をしているところです」


 おぉ!仕事が終わっても直ぐに帰らず、明日の準備をするなんて、キャルシィは凄いです。私には真似できませんよ。


 …と思いつつ、キャルシィの机を見てみると、何やら少し物騒な物が置いてあります。


 短剣、長剣、杖…。一体、何に使うのでしょうか?


 ……まさか、明日の準備とは、タチの悪い冒険者を追い払う準備だったりしませんよね?……たとえば、カーラとか、カーラとか。


 ………今日はカーラを1人にしてしまいましたし、もしかしたら何かやらかしている可能性もありますからね。


「あら?ギルドの備品なんか出して、どうしたの?明日は特に何も無いわよね?」


 …ギルマスのサクラさんが把握していない仕事。


 ……キャルシィの独断?


 ………ちょっと心配になってきました。私の七聖龍(お友達)は無事ですかね?


 そんな不安を感じつつ見つめると、キャルシィは少し言いづらそうに口を開きました。


「えっと、明日の朝に冒険者登録をする事になったんです。なので、自分に合う武器を探していました。…ですが、私にどんな武器が合うか分からなくて」


「キャルシィ、冒険者になるのですか⁉︎」


 びっくりです!聞いていませんよ! ですが、良かったです。カーラは何もやっていないのですね! そしてキャルシィは冒険者になりたかったのですね!


 これは受付嬢を辞めて、私と一緒に冒険したいって事ですよね!嬉しいです!レベルが上がったからですね!グッジョブですよ、カーラ!カーラがキャルシィを枕投げに誘ったおかげですよ!!


 おっと、そうと分かれば、私も最大限の協力をしなくてはなりませんね!


 キャルシィに似合う武器…うーん、キャルシィなら、剣を持っても杖を持っても可愛いと思いますし、何でも良い気がしますね。武器なんて、使い方次第で、どうとでもなりますし。


 あ!どうせなら、私がプレゼントするのも良いかもしれませんね。魔王城を探せば、魔剣の1本や2本出てきそうですよね!


 ふふっ。サクラさんには悪いですが、キャルシィは私が頂きますよ!!


「すみませんね、サクラさん!」


「…え?」


 おやおや。サクラさんともあろうお方が、状況を理解できていないのですね。キャルシィは私と一緒に冒険する事になるのですよ!


「……あ!もしかして、ギルマスになれって言われたの?」


「…へ?」


「はい。明日中にSランクになってくれと言われました」


「え゛!?」


 ………は?


 …………。


 …ちょっと待ってください。つまり、私が考えていた事は全て間違っていて、キャルシィは冒険者登録はするけど、冒険者にはならないという事ですか? 酷いですよ! 騙したのですね!


 ……いやいやいや、それ以前に!


「……ギルマスはサクラさん…ですよね?」


「あら?ギルマスは辞めたわよ?昨日言ったじゃない」


 ………へ?


 …言われていませんよ?


 ……言われていませんよね?


 ………言われましたっけ?


 …………………きっと、言われたのでしょうね。おそらくですが、私には正しく伝わり難い言い方で。


 …はぁ。もう何回目でしょうか。サクラさんは、いつも大事な事を、私が正しく理解出来ない言い方で言ってくるのですよね。正直、やめて頂きたいですよ。


 ギルマスをやっていたくらいなのですから、情報伝達くらい、しっかりとやって頂きたいものですね。絶対に、私の理解力が乏しい訳ではありませんし。


 …はぁ。


「…サクラさんは自由ですね」


「そうよ。だから明日からもメイちゃんで遊べるわよ」


 ……そういう意味で言ったのでは無いのですけどね。


 …ま、私もサクラさんと一緒に遊べるのは嬉しいので、ありがたいですけどね。


 ですが、その代わりにキャルシィが忙しくなってしまうのですか…。


 …心配ですね。


「キャルシィ、大丈夫なのですか?」


「はい。レイラさんが補佐してくれる事になっているので大丈夫だと思います」


 …レイラさんが補佐してくれるなら、少しは安心出来るかもしれませんね。


 …ん?でも、それなら…。


「レイラさんがギルマスになるのではダメなのですか?」


 レイラさんは怒ると怖いですが、頼りになりますからね。私も、冒険者になった時に担当してもらって、かなりお世話になりましたし。キャルシィよりも経験豊富ですし、冒険者に物怖じしない強さを持っているので、向いていると思うのですよね。


 それに、レイラさんがギルマスになってくだされば、キャルシィも今まで通り、私たちの担当受付嬢でいてくれるでしょうし。ギルマスになってしまったら、確実に忙しくなるでしょうからね。


「ダメみたいです。ギルマスになるにはSランク相当の実力が必要らしくて…」


 …あー。そういえば、SSランクへの昇格試験はギルマスとの勝負でしたね。確かに強さは必要ですね。


 でも、それなら…。


「レイラさんが強くなるのではダメなのですか? 手伝いますよ?」


「あ、私も提案したんですけど、それはダメらしいです。理由はよく分からないですけど」


 ……む。…何故でしょうか?とても良い案だと思うのですが。


 …レイラさんが強くなると、まずい事があるのですかね?


 ……んー。


 あ! 分かりました!


 つまり、レイラさんが強くなってしまったら、サクラさんと喧嘩してしまった時に誰も止められなくなるからですね!世界が滅びかねないですから!


 以前、サクラさんとレイラさんが言い争いをしていた時は、とてもとても怖くて、私ごときでは一切口を出せないくらいでしたからね。その状況が戦闘に発展してしまったら、とんでもない事になるでしょうし。


「…メイちゃん、私を見て納得した表情をしているみたいだけど、絶対に違うと思うわよ」


「…え?」


 ……何が違うのでしょうか? 合っていると思うのですけどね。


 …ですが、サクラさんが、そう言うという事は違うのでしょうね。


「はぁ。まさか、こんなに早くキャルシィに目をつけるとは思わなかったわ。嫌なら断っても良いのよ?」


「いえ、大丈夫です。頑張ってみたいです」


 …目をつける? 


 …よく分かりませんが、キャルシィが頑張りたいと言うなら、応援するしかありませんね。


「キャルシィ、明日中にSランクになるのですよね? 手伝いましょうか?」


「そうね。レベルが高くても、最初は不安よね」


「ありがとうございます! 」


 と、いう事で、明日はキャルシィのランク上げですね。1日だけとはいえ、キャルシィと冒険できるなんて楽しみです!


「ところでメイちゃん。さっき、どうして私に謝ったのかしら?」


 ………何の事でしょうかね?


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