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17話 面倒な人

 

 …ジリ、ジリジリジリ


「戻りましたー………あれ?」


 ……おかしいですね。


 私が闇魔法で魔王城に戻ると、そこには誰も居らず、お出迎えの声がありません。…一体、どういう事なのでしょうか?


「あら?誰も居ないじゃない」


「あいつら何処に行ったんだ?」


 サクラさんに続き、初代魔王さんも出てきましたが、皆さん私と同じく、驚いた様子です。まぁ、セイラさんは不貞腐れた顔をしている気がしますが。


 シュン!


「……え? キュイは? シーナは何処ですか?」


 そして、レミコ様は闇魔法を通らずに、転移で戻って来ると、私たち以上に戸惑った様子です。


「メイよ!キュイとシーナが居ません!マリヤも!!一体どうなっているのですか!!」


「分かりません。何処に行ったのでしょうね」


「何をそんなに落ち着いているのですか!あの子達は元魔王と一緒に居たのですよ!」


 …そんなに心配する事ですかね? 私は大丈夫だと思いますが、レミコ様は、かなり慌てた様子で声を荒げてきます。


「そこそこ仲良さげでしたし、遊びに行ったんじゃないですか?」


「そんな訳ないでしょう! 適当な事を言わないでください!」


 …う。……怒られてしまいました。あながち間違っていないと思うのですがね。


 ……はぁ、どうしましょうか。レミコ様が少し面倒な人になっています。早くみんなを見つけないと、落ち着いてくださらないでしょうね。


 ……ん? というか…。


「…あの、レミコ様。『魔力感知』で居場所が分かりますよね?」


「……分かりますね。………見つけました。2kmほど南西に皆で居ますね」


 やはり無事みたいです。レミコ様は、自分の能力を忘れるほどに慌てていたみたいですね。しっかりしてほしいですよ。


「近くに『転移』します」


「え?」


 シュン、シュシュシュン!


 そしてレミコ様は、皆の許可を取る事もなく、強制的に私達を転移させました。



 ♢♢♢



「…この中に居ます」


 レミコ様が転移させた場所は、とある建物の前で、辺りには様々なお店があり、この建物の看板には『武器屋』と書かれています。レミコ様は未だに心配そうな顔をしていますが、これは完全に杞憂だと思います。絶対に。


 そして、そう考えていると、お店から誰かが出てきました。


「メイ様、お戻りになられていたのですね」


「あ、魔王さん。さっき戻りました。買い物ですか?」


「はい。キュイさんが外に遊びに行きたいと言われましたので」


 …やはり、私が言った通りでしたね。レミコ様には完全否定されましたが、どう思っているのですかね?


「……メイよ。私がおかしいのですかね?」


 …あ。レミコ様が少し落ち込んでいます。確かにレミコ様が思っていた事は見当違いでしたが、天使の仲間を心配しての事だったでしょうし、悪くはないと思います。まぁ、私が怒られた事は少し納得いきませんが。


「…おかしくはないと思いますよ。実際、昔は敵同士だった訳ですし」


「…そうですよね。ですが、メイの言った通りでした。申し訳ありません」


 …う。そう謝られると、こっちまで申し訳ない気持ちになってしまいますよ。私なんて、大して考えずに思った事を言っただけですし。それがズバリ正解だっただけです。


「初代! 買ってもらったぞ、収納袋!!」


「レミコ様、私達も買ってもらいました!!」


 すると、私たちの声を聞いてか、続々と皆が出てきました。


「マジか!! 魔物()を狩りまくって詰めこまないとな!」


「……キュイよ。天界に下界の物を無闇に持ち込むべきではありませんよ」


 …レミコ様は厳しいですね。そのくらい別に良いと思いますけど。


「えー、良いじゃないですか。お菓子をいっぱい詰め込んで帰りましょうよ!みんな喜びますよ!」


「……まぁ、お菓子くらいなら」


 …あら?


 …レミコ様、ちょっと嬉しそうにしていませんか?あんな事を言いつつ、お菓子なら良いのですね。きっとレミコ様も食べるつもりなのでしょうね。


「やった! あ、ザッティリウス!あっちに服屋があるよ!見に行こ!」


「おう!」


「ちょっ、キュイよ! 服はダメですからね!」


「見るだけですよー!」


 ……もう完全に仲良しですね。それに、いつの間にかレミコ様が保護者と化していますよ。


 ま、争いが起きないなら、こんな形も良いですね。過去に殺し合ったとしても、今が平和になるなら、それが一番良いです。


「私達も行きましょう」


「そうね。魔族領でのんびり買い物なんて初めてだわ」


 そして、私達もキュイさん達に続き、服屋に向かいました。夕ご飯まで少し時間もありますし、ちょっと付き合いましょうかね。レミコ様は渋っていましたが、いつの間にか機嫌を直しているセイラさんに手を引かれ、付いて来ているみたいです。きっとセイラさんは、レミコ様と買い物出来る事が嬉しいのでしょうね。戦っていた時とは別の感情で凄く嬉しそうです。


 …ふぅ。


 サクラさんの好奇心のせいで、とんでもない事になってしまいましたが、結果的には良かったかもしれませんね。


 初代魔王さん達は、あの何も無い空間から抜け出す手段を得て、レミコ様達は美味しいお菓子を得るでしょう。過去の蟠りも殆ど消え、これからは以前よりも幸せに生きていけるでしょうね。


 ふふっ。みんなが幸せで、私も幸せですね!


 ………と、言いたい所ですが、現実は違います。今日、私には沢山の不幸が舞い降りました。不要な称号やスキルを得てしまいましたし、レベルがとんでもなく上がってしまいました。控えめに言って最悪です。


 …はぁ。何処かに不要なスキルを削除したり出来る方法は無いのでしょうか? レベルを下げる手段は無いのですかね? 有ったら教えてほしいですよ。カーラにランキングを見られたくありません。



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