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15話 全てが黒

 

 ヒュン、ガンッツ!  ヒュヒュン、ガッ!!


「ふふっ、本当に強いわね!」


「あんたもな!だが、俺は実力の半分も出せていないからな!」


 ……と、そんな風に会話をしながら、初代魔王さんとセイラさんは戦っています。互いに凄いスピードで飛び回り、見ているだけで怖いです。あんなスピードで飛び、更に会話までするなんて、私には絶対に無理ですね。


 ……そして。


 バキンッツ!!


「がはっ!! くそっ、やっぱ、こんな剣じゃ保たないか!」


 初代魔王さんの剣は折れ、体にも大きな傷が出来てしまいました。凄く痛そうです。


 …まぁ、初代魔王さんの剣は、鈍の剣なので、折れても当たり前なのですけどね。そんな剣を、あんなスピードで振り続けたら、いくら剣の達人でも折ってしまいますよ。数回でも剣を交えられただけで凄いです。


「…残念。このまま続けていれば私の剣も折れていたわね」


 お!! これはもう、戦いを止める雰囲気ですかね?  剣が無いと戦えませんからね!


 ……と、なったら幸せなのですけどね。私には分かっていますよ。どうせ無理です。絶対に。


「メイ! もうちっとマシな剣は持ってないのか?」


 はぁ。…ですよね。


 …んー。どうしましょうか。ちょっと迷いますね。


 …貸すべきか、貸さぬべきか。


 ……貸さなかった場合、私があげた山積みの剣が、全て折れるまで続くのでしょうね。要らない剣とはいえ、それでは少し勿体無い気がします。…はぁ。要らないからといって、全てプレゼントしたのは間違いだったかもしれません。


 …ま、過ぎた事は仕方がありませんね。貸してあげましょう。


「初代魔王さん、どうぞ。終わったら、ちゃんと返してくださいね」


「いやいやいやいや!! マシな剣とは言ったが、これはダメだろ! 俺は元『魔王』だぞ!」


 ………えっと。私も一応、元『魔王』なのですけどね。そんな事は、あまり関係ありませんよ。勇者(カーラ)だって普通に『魔剣』を使っていますし。


「なら私も剣を貸すべきかしらね?メイちゃん、貸しても良い?」


「あ、はい」


 私がお土産でプレゼントした剣だからと、わざわざ私に許可を取るなんて、サクラさんは律儀ですね。私なんて、カーラに貰った物なのに、普通に貸していますよ。もちろん、カーラに許可を取った事なんてありません。


「じゃ、これ使ってください。壊さないでくださいね」


「凄い剣ね!ありがたく使わせてもらうわ!」


 …と、いう事で、初代魔王さんが『聖剣』ゴンザリオンを、セイラさんが『魔剣』ディスティリオンを手にしました。……いや、手にしてしまいました、と言うべきですかね?


 初代魔王さんは最初、納得出来ていない様子でしたが、サクラさんがセイラさんに渡した『魔剣』を見て、使う決心が付いたみたいです。あの剣には『聖剣』レベルでないと渡り合えないでしょうからね。


「あ、初代魔王さん、デバフは解除しますか?ちょっと押されていますけど」


 初代魔王さんは、剣の性能の違いとはいえ、一撃くらいましたからね。…まぁ、もう回復(再生)していますけど。


「いや、これはこれで、ちょど良いハンデだ!このままの方が楽しめそうだからな!メイのデバフは最高だな!」


「…そうですか」


 まぁ、そうですよね。カーラと似た思考をお持ちでしょうから。簡単に勝てたら、つまらない。勝つ事よりも、楽しむ事の方が大切という事ですね。私みたいな普通の人には、到底理解できない領域です。


 …はぁ、早く終わると良いのですが。



 ♢♢♢



 一体あれから、どれくらいの時間が経過したのでしょうね。いつになったら終わるのでしょうか。


 …いや、実際には、そんなに時間が経ってない気もしますが、あの2人の動きが早過ぎで、何時間も経過した気分です。


「暇ですねぇ」


「…そうね。………あ! ねぇ、メイちゃん! メイちゃんは、あの翼も出せるのよね?」


「う…。まぁ…はい。…出した事は無いですけど」


 あー。どうしてサクラさんは、そういう事に興味を持つのでしょうか? 話を振るタイミングを間違えたかもしれません。


 …はぁ。少し興味があるくらいで、すぐに私の個人情報を聞き出そうとする癖は止めていただきたいです。


「やっぱり! 出してみてよ!」


「…えっと。…嫌です」


 …はぁ。完全にサクラさんの興味は私に向いてしまっていますね。2人の戦いなんて、全く見ていません。


 …サクラさんなら、私が出したくない理由が分かると思うのですがね。


「メイちゃんなら黒でも可愛いと思うわよ!」


 …あー。理由が分かっている上で、私に出せと言うのですね。


 ……はぁ。諦めてくれませんかね?


 ………諦めてくれそうにありませんね。いつの間にか、手を掴まれていますよ。逃げ場がありません。


 …はぁ。


 …どうしましょう。そもそも、サクラさんは、どっちをご所望なのでしょうか? 


「どっちも見せてほしいわ!」


 ……はい、そうですか。どうして私の顔を見るだけで会話が進んでいくのでしょうね?


 …はぁ。


 ……もうサクラさんが諦めるのを、諦めた方が良いですね。


 …さて、どちらからにしましょうか。…取り敢えず、マシな気がする方からですかね。


『浮遊』


 そして、私がそうスキルを使うと、私の背中から黒い魔力がキラキラと溢れ、羽根が現れました。私には似合わない、可愛くない黒い羽根の登場です。


「あら、やっぱり結構可愛いじゃない!」


「似合っていますよ、メイ」


 ……私、貶されています? レミコ様も、戦いを見ずに私をじっくりと見てきます。感想なんて求めていませんよ?


 …はぁ。…次です、次。こういうのは早く終わらせた方が良いですからね。見せさえすればサクラさんも満足するでしょうし。


『龍翼』


 そして今度は、色なんて関係なしに可愛くない翼を出しました。龍の翼なんて私には無価値です。


「おお! ふふっ、これは無いわね」


「………………」


 …いやいやいや、レミコ様。私は先ほど、感想なんて求めていないと思いましたが、何も言わずに目を逸らされるのは余計に嫌ですよ! 顔に出ていますからね!似合っていないのは分かっていますから!サクラさんみたいに笑ってくれた方が、まだマシですよ!


 ……はぁ。


「あら、もう仕舞っちゃうの? あ、せっかくだし、久しぶりに黒い翼も見たいわ」


 ……はぁ。


 ふぁさっつ


「やっぱりメイちゃんには、その翼が一番似合うわね」


「えぇ、とても似合いますよ、メイ」


 ……………全く嬉しくありませんね。せめて、純白の翼の次に似合うと言ってくださいよ。


 …私は3つも飛行スキルを持っているのに、どうして全てが黒なのですか? 色くらい自由に選ばせてくださいよ!


 ……はぁ。私は、いつになったら純白の翼を取り戻せるのでしょうね。私の翼が漆黒に戻った日、最後の頼みの綱だったサクラさんにも、私が破壊した山を元に戻す方法なんて知らないと言われてしまいましたし。


 ……やはり、レミコ様が言った様に、山が自然に元に戻るまで…数百年か数千年か待たないとダメなのでしょうか。何処かに良い方法は転がっていませんかね?


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