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5話 お肉

 

「…は? 何だと⁈ 和平? 人族と魔族が?」


「そうなのです。私は今の『勇者』とお友達なので、争いを終わらせたのです」


「ははっ、ここまで突拍子が無いと笑えてくるな」


 と、いう事で無理でした。結構頑張って説明したのですけどね。


 手のひらを返させると意気込んだものの、全く信じて頂けません。もう私は疲れました。


 …もう諦めて帰りますかね。よく考えてみれば、絶対に信じてもらわないといけない訳ではありませんし。


「あの、説明しても無駄みたいなので、私は帰りますね」


「…は? …ふっ、ははははっ! 帰るだと? 何処に帰るって言うんだ!」


 …あら?もしかして、この人たちは下界に行く手段を持っていないのですかね? ま、私には関係ありませんけど。


「下界にですよ。別に用があって来た訳ではありませんし」


「はっ! 死んだ者が再び下界に行ける訳が無いだろう? 逃げたいなら逃げたいと言えば良いじゃないか。ま、逃す気は無いがな!」


 …うわぁ。もう面倒です。会話するだけで疲れてしまいます。


 …はぁ。このまま帰っても良いと思っていましたが、1発くらわせたい気持ちになってしまいますね。


 …やってしまいますかね? やってしまいましょう。


「良いですよ。相手になってあげます」


「ふん、下手な嘘は吐かずに最初からそうすれば良いんだ!」


 さて、とは言ったものの、この人たちは強いのですかね? 私の予想では、レミコ様より強くて、カーラよりも弱いくらいだと思います。…視てみすかね。


『神眼』


『龍神』 ドラディニエル・ゴスティリウス ****


 ………は?


 …………レベルは?


 ……………え?視えないとはどういう事ですか?


 …ほ、他の2人は…。


『龍神』 ドラディニエル・ディスティリウス 913


 ………は?


 …………は?


『龍神』 ドラディニエル・ザッティリウス 872


 ………へ?


 …………いやいやいや! おかしいですよ! え??


「どうした?急に青ざめて。怖くなったのか?」


 いやいやいや、そりゃあ青ざめますよ! おかしいですよね⁈サクラさんより強いじゃないですか!


 …え? 


 …つまり、視えない1人は、この2人よりも強いという事ですか?そんな事ありえます?


「…えっと。すみません、もしかして、とんでもなく強かったりしますか?」


「お前と比べれば、そうなるだろうな。俺は1000年以上の間、この何も無いつまらない場所で、自分を鍛え上げたんだ」


 ………どうしましょう。やばいです。


 …少し。いえ、かなりナメていました。


「…あの。やはり、私はこのまま帰りますね」


「ははっ、まだそんな事を言っているのか。いいからかかって来い。1発だけ受けてやる。そうすれば、自分の実力が分かるだろう」


 …まぁ、それなら。


 ですが、これは私にとってチャンスかもしれません。もしかしたら、私の限界を知る事が出来るかもしれませんからね。


 …ふふっ。


 …怖いですが、ちょっとだけ嬉しくなってきました。私がどう足掻いても勝てない相手がいるかもしれないというのが、こんなにも嬉しいのですね。自分よりも凄く強い相手がいるという安心感が、この気持ちなのですね。


 では、試しましょう!!


「いきますよ!」


「おう、さっさと来い!」


 …ふぅ。


『攻撃力上昇』

『速度上昇』


 出番ですよ、ゴンザリオン。


 そして相手に

『防御力低下』

『速度低下』


 今回は手加減する必要も、外す必要もありません。


『風魔法』で加速させつつ…。


「ゴンザリオン・ストライク!!!」


 ビュギュンッ!!!


 私のレベルは『妖精王』の人と戦った時よりも更に上がっています。ですが『神眼』で視れない程のレベルの人が相手ならば、きっと耐えてくれる筈です。そうに違いありません!私の本気に耐えてみせてください!


 そして一瞬でゴンザリオンは相手に近づきます。そして、その鍛え抜かれた体で…。


 ジュギュン……


 ………は?


 …………え?


 ……………。


 ピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロン…


 ………は?


 …………いやいやいやいや。


 …ピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロン…


 ……嘘ですよね?ちょっと待ってください。


 ………何かの間違いですよね?


 …ピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロン


 …はっ!


 ヤバいですヤバいですヤバいです!


 早く回復させないと死んでしまいます!私は人殺しなんかになりたくありませんよ!


『回…』


 …あれ?


 何だか、お腹に空いた穴が小さくなっていませんか?


 …はっ! 『再生』ですか! そして『不死』なのですね!


 …う、うわぁ…。何というか、魔族を辞めていますね。つまり私も人族を…いや、私はスキルを使う事は無いでしょうから、セーフですね。使わないという事は、持っていないという事と一緒です。…そう思いましょう。


「…おい、何だんだ今のは!」


 そして、私が現実逃避をしていると、どうやら傷が完全に再生した様で、話しかけてきました。


 …凄く嬉しそうな表情で。


「…えっと。私の本気…でした」


 今やったら、もっとヤバいですけど。レベルがとんでもなく上がってしまったので。


「ふっ…。はっはっはっは! おい、お前。…いや、メイと言ったな」


「は、はいっ」


 うぅ…。何というか、私を見る目が凄く見慣れた目になってしまいましたよ。怖いです。


「メイ、先ほどは悪かったな。メイを侮辱した。すまなかった」


「い、いえ。大丈夫です…」


 取り敢えず、早く帰りたいです。


「…和平だとかの話は全て事実なのか?」


「…は、はい」


 大体は、ですけど。言いたく無い事は結構隠していますし。


「…そうか。本当にすまなかった。都合の良い奴だと思うかもしれないが、改めてこれからよろしく頼む」


「…えっと、はい。信じてくれるのですね?」


 先ほどは全く信じてくださらなかったのに、完全に手のひらを返されていますね。やはり、戦闘狂にとっては強さが全てという事なのでしょうか?


「信じるしかないだろう。俺たちは、この剣で死んだんだ」


 どうやら、剣をしっかりと確認する為に、飛んでいったゴンザリオンを回収してくれた様です。ありがたいですね。


 皆さんの思い出の剣…というのは違うかもしれませんが、3人で感慨深く剣を見つめておられます。


「では、『聖剣』を持っていという理由で信用してくださったのですか?」


「…この場所に剣は持ち込めない。死んだ時の体と服が再構築されるだけだ」


 ……え?


 ………あぁ!


 そうですよね。普通は死んでからこの場所に来るものでしょうから、『聖剣』が有る時点でおかしいですよね。


「『聖剣』が『魔王』の手に渡ったという事実は、和平を信じるに値する理由になる」


 ……えっと。


 …和平以前に貰ったのですけどね。


 …つまり、『勇者』は『聖剣』を簡単には手放さないし、『魔王』は『聖剣』を奪ったりしない…という事ですかね?


『聖剣』を持っている事こそが、『勇者』と友達である証明になるという事なのでしょうね。


 …『魔剣』を奪った『勇者』も居たりするので、私からすれば、証明には少し心許ないとも思いますが。…ま、それをやった人が非常識ってだけですね。…誰とは言いませんが。


 …はぁ。こんな事で信じてくださるなら、最初から見せれば良かったです。そうすれば、こんな悲惨な結果にならなかったのですけどね。


「…なぁ、メイ。因みになんだが、他にも何か持ってたりするのか?」


「え?ありますよ」


 …なんだか、先ほどとは一転して、物欲しそうな顔で私を見てきます。何も無いつまらない場所とおっしゃっていましたが、本当みたいですね。


 …さて、どうしましょうか。何を出せば喜ばれますかね?


 …んー。


 …取り敢えず、アイテム袋の中で私が要らない物を出しますかね。


 ガシャガシャガシャ!!


「おぉ!! 剣だぞ! 鈍らだが、本物の剣だ!」


 ふふっ、喜んでおられますね。


 この剣は以前、盗賊さん達から回収した武器なのですよ。返す事は出来ないので、ずっとアイテム袋の肥やしになっていたのです。こんな物で喜んで頂けるなんて、私まで嬉しい気持ちになっていきますよ。ちょっとだけサービスしてあげますかね。


「こちらもよろしければどうぞ!」


「…え? お、おい!本物なのか⁈」


「嘘だろ…。…くっ、俺、涙が出てきちまった」


「お、俺も…」


 ……えっと。ちょっと大袈裟すぎません? 


 ただのフルーツ盛りですよ?私が小腹が空いた時用に購入しておいた、ちょっと高いやつですけど。


「…好きなのですか?」


「いや…別に好きでは無いが、ここでは手に入らないんだ」


 …あー、そういう事ですか。つまり、死んでからは一度も目にしていないのですね。それなら泣いてしまっても仕方がありませんね。私だって、何百年もフルーツが食べれなかったら嫌ですから。ここには本当に何も無いのですね。


 …ん?


 …ちょっと待ってください。何も無いって、まさか…。


「…あの、もしかして、食べ物が無いのですか?」


「あぁ、無いぞ!だから嬉しいんだ!」


 うわぁ…。よく今まで生きてられましたね。私だったら2日で……あ。『不死』なのですね。


 …なんだか、物凄く可哀想な人たちだったのですね。死んでから死ぬことも出来ずに地獄の様な場所で長い間…。よく正気でいられましたね。凄いです。私には無理ですね。


「なぁ。今更だが、どっからこんなに出してるんだ?その小さな袋に入っていていい量じゃないよな?」


 …ん?アイテム袋を知らないのですかね?


「この袋に全部入っていますよ。ほら、ドラゴンなんかも」


 ドシィィン!!!


「…な!!!!」


「…に、に、に、肉ぅぅぅぅうううう!!!!! おい、おい!おい!」


「あ、ああ!!!」


 …フルーツよりも、お肉が好きなのですね。先ほどよりも喜び方が桁違いです。少し引いてしまいそうなほどに。まぁ、それほどまでに嬉しいという事なのでしょう。


「なんなんだよ、その袋は!!凄すぎる!」


「たくさん入る袋ですよ。アイテム袋といいます。こんな感じで」


 そして私は、先ほど出したドラゴンをアイテム袋に収納してみせました。実際に収納するところを見てもらった方が分かりやすいですからね。


「…あ、肉が…」


「そ、そんな…」


 あ…。なんだか物凄く悲しそうな顔になってしまいました。目の前に出されたお肉を収納するのはまずかったみたいですね。凄く悪い事をしてしまった気持ちになってしまいます。


 …んー。ですが、今私がお肉を渡しても、すぐに食べ終わって、それでお終いですもんね。そんなのは可哀想ですし。


「あの、私そろそろ帰ろうと思っていますが、一緒に来ますか?」


「…は? ちょ、ちょっと待て。まさか、帰れるというのも本当だったのか⁈」


 おや?どうやら、和平の事とかは信じてくださったみたいですが、帰れる事は嘘だと思ったままだったのですね。


 ………帰れますよね?


 ジリ、ジリジリジリ…


 あ、大丈夫そうです。


「帰れますね」


 私は闇魔法を使い魔王城に繋げました。やはり、問題なく帰れそうですね。


「はっ…はは……。とんでもないな」


「あぁ、次元が違う」


「そうだな」


 う…。また何か、過大評価されてしまった気がします。私はただの女の子なのですけどね。


「どうします?」


「「「行くに決まっている!!!」」」


 ま、そうですよね。絶対にそっちが良いです。


「では、行きましょうか」


「「「あぁ!!!!」」」


 ふふっ。凄く嬉しそうです。こんなに喜んで頂けると、私も嬉しくなりますね。


 さ、急いで帰りましょう。あまり遅くなると、サクラさんに怒られてしましますからね。




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