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38話 ゲイツ

 

 ピロン


 …遂に。いや、漸くだ。


 ギルドマスターの仕事をサクラに押し付けて約4年。やっと200レベルになった。


「…ふぅ、久しぶりに帰るか」


 サクラを超えるのはまだまだだが、少しは差は縮まったはずだ。いくらサクラといえど、ギルマスの仕事をしながらレベルを上げるなんて無理だろうからな。


 ……無理だよな?


 俺は、そんな少しの不安を感じつつも、ユリアール領の冒険者ギルドを目指して歩き出した。



 ♢♢♢



「よう、元気そうだな、キャルシィ。サクラは居るか?」


 俺は、ギルドに入ると一直線に受付に向かい、キャルシィに話しかけた。


「あ、お久しぶりです。呼んできますね」


「おう、頼む」


 そして、キャルシィは早足でギルドの奥へと入って行った。


 …それにしても、魔族が増えたな。


 俺が最後にここに戻ってきたのは約2年前。その頃は、まだ数人見かける程度だったが、今はパッと見ただけでも10人以上が確認できる。それほど、このユリアール領が魔族を受け入れているという事だろう。


 そんな事を考えていると、キャルシィがサクラを連れて戻ってきた。


「おう、サクラ。しっかりとやってくれているみたいだな。流石だ」


「そうですね。ギルマスよりはしっかりとやっていましたよ」


 サクラは俺の言葉に、さも当たり前かのように返答してきた。


 …満面の笑みで。


 ………これは、どっちだ? 


 …いや、俺が帰ってきて喜ぶ様な関係でも無いし、怒っているのか?流石に2年も帰らなかったのはまずったか…。


 …それに。


「…どうした? なぜ敬語を使うんだ?」


「ギルドマスターに敬語を使うのは普通の事ですよ」


 …どういう事だ?


 ギルマスはサクラに押し付けたはずだが。


 …はっ!


「ま、まさか、帰って来ちまったのか⁈」


「ふふっ、帰って来ちまいましたよ」


「なっ…」


 サクラは、俺がギルマスの仕事を押し付ける時に条件を出した。


『メイちゃんが戻って来るまでです。メイちゃんが戻って来たら、私はギルマスという仕事に縛られたくありません』…と。


 そして今、サクラは満面の笑みで俺に敬語を使い、俺をギルドマスターと呼んだ。更に、俺の口調に合わせて、『帰って来ちまいましたよ』と。


「…いつ帰って来たんだ?」


「10日ほど前ですよ。だから、丁度良くギルマスが帰ってきてくれて嬉しい限りです」


 …くそっ。俺は、なんて間が悪いんだ。俺がもう少し早く帰って来て、魔王殿が帰ってくる前に再び修行に出ていれば、あと数年は修行出来たかもしれないのに。ほんの10日前なんて、タイミングが悪すぎるだろ!


 …ん?


 …ちょっと待て。つまり、サクラは魔王殿と10日も過ごしていたという事だよな?


 俺は、急に嫌な予感がし、サクラを見た。


「…サクラ。…ランキング見せてもらえるか?」


「…見たいんですか?」


 サクラは、俺の言葉に対し、申し訳なさそうに返答した。


 …正直、見たくない。サクラがこんな返答をすると言う事は、つまり、そういう事だろう。


 だが、見ない訳にはいかない。例え、サクラとの差が縮まっていなかったとしても。


「…見せてくれ」


「…分かりました。ですが、落ち着いて、ゆっくりと見てくださいね」


「…あ、あぁ」


 そして、サクラは一枚の紙を取り出し、俺に渡してきた。


 …今の会話で覚悟は出来ている。どうせ、サクラが一番強い。そして、レベル差も縮まっていない。2年前は230程の差があった。つまり、今もそれが変わらずサクラのレベルは430ほどまで上がっている可能性が高い。



 1 サクラ 451 『大賢者』  



 ……は?


 …見間違えか?


 俺は、そう思い、目を擦ってもう一度見た。



 1 サクラ 451 『大賢者』  



 ………なんでだよ。…おかしいだろ。


 …いや、魔王殿が帰って来たんだ。…これくらい。


 …………はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。


 俺は、今までに無いくらい大きなため息を吐き、心を落ち着かせた。


 …これは…まぁ、仕方ない。仕方なくはないが、仕方ない。次だ次!



 2 ユリアール・カーラ 432 『勇者』  



 …まぁ…な。ここまではギリギリ許容範囲だ。次だ次。


 以前のランキングから考えれば、次はユリアール領主で『大賢者』のサイコス殿。ここから下が俺が住んでいる場所だ。



 3 メイ 398 『堕天使』『堕妖精』



 ………は?


「ちょ、ちょっと待て、サクラ。どうして魔王殿がランキングに復活してるんだ。それに何だ、この称号は!」


「あー。話すと長くなるのですが、まぁ、魔族もみんなランキングに表示される様になったって事です。称号は…メイちゃんですから」


「…まじかよ。何でもありだな、魔王殿は」


 …はぁ。


 …くそっ、そんなの聞いてないぞ。つまり、魔族次第で俺のランキングは、以前見た時の6位よりも下になっているかもしれないという事か。


 …いや、確実になっているな。先程のサクラの言葉から察するに、それは間違いない。そうでないと、サクラが、落ち着いて、ゆっくりと見れなんて言わないからな。


 …はぁ。


 …もう誰が来ても驚かねぇよ。



 4 ユリアール・セイラ 390 『堕妖精』



「はあぁぁぁぁぁあああ?!?!?!」


 いやいやいやいや…いやいやいやいや!!


「…サ、サクラ。ユ、ユリアール前侯爵夫人は亡くなられたはずだぞ?」


「あぁ。カーラのお母様は生きてらっしゃいますよ」


「……そ、そうか」


 …そんな事あるのか?俺は葬儀にも参加したんだぞ?


 ………次だ次。考えるのは後だ。



 5 ドラディニエル・オッディウス 367 『魔王』



 …ん?『魔王』?


 …あぁ、そういえば、魔王殿から『魔王』の称号が消えていたな。この魔族が、新しい『魔王』か。


 …367。…強いな。



 6 ドラディニエル・マリヤ 358 『堕天使』



 …『魔王』と性が同じ。…『魔王』の親族か?


 …次が7位。そろそろサイコス殿(ユリアール侯爵)だよな?



 7 ユリアール・ソフィー 343 『大神官』



 …ん?


 …ちょっと待てよ。


 …は? 神官殿? …ん? 『大神官』?


 …後だ、後。



 8 ユリアール・サイコス 231  『大賢者』



 …ふぅ。ようやくか。次が俺だな。


 …俺だよな?



 9 ユリアール・ニーズ 225  



 ……は?


 …前ユリアール侯爵?


 …は?


 …………次だ次。



 10 キャルシィ 203  『賢者』



 ………………。


「キャルシィィィィィィィイ?!?!?!」


「にゃ?!?!」



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