表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/155

36話 バケモノ

 

「カーラ! 私の本気を見せてあげる!」


 …遂にきます。ようやくセイラさんがスキルを使ってくださる雰囲気です!今度こそ、お願いしますよ!


 そして、私の期待通り、セイラさんの背中に光が集まり、何かを形作っていきます。これはもう、確定です!遂に見れますよ!


 ………………。


 ………何故か、集まる光が体に近づくほど、どんどん黒くなっている様に見えますが。きっと私の目がおかしいのでしょう。『堕妖精』だからといって、黒である必要はありませんからね。


「見なさい、カーラ!これが『堕妖精』の羽根よ!」


「か…かっこいい!!!え、何それ!凄くかっこいいよ、母さん!それに凄く綺麗だよ!!!」


 ………はい、封印確定ですね。


 一切の光を通さぬ様な黒い羽根…。とても美しく見えますが、それはセイラさんが美人だからです。私には絶対に似合いません。…カーラなら似合ってると言ってくれそうですが、カーラの感性は私とは違いますからね。


 …はぁ。『浮遊』もダメなのですね。ちょっと堕ちちゃっただけで酷い仕打ちです。本当に酷いですよ。どうして私ばかり…。


 ……はぁぁぁぁ。何か甘いものが食べたいです。早く終わりませんかね?もうどうでも良いですし。


「じゃあ行くわよ、カーラ!」


「うん!!!」


 あー。2人共楽しそうですね。本気を出せて嬉しいセイラさん(戦闘狂)と自分よりも強い相手が居て嬉しくて堪らないカーラ(戦闘狂)。…何処が楽しいのでしょね。


「どうしたのよカーラ!もっと本気を出しなさい!」


「ほ、本気だよ!寧ろ本気以上だよ!」


 …やはり、スキルを使ったセイラさんのスピードは段違いに上がっていますね。本当に何なのでしょうね、あの人は。私よりもよっぽどバケモノだと思いますよ。間違いありません。


「嘘ね!顔に出てるわよ!どうして隠すのよ!」


「あ、いや…。隠してるんじゃなくて、ボクの力じゃなくて…その…」


 んー。これはなんとも言えない空気ですね。もっと拮抗した戦いがしたいけど、これ以上私の力を借りるのが悔しいと思っているカーラ。その分かりやすい顔を見て何かを隠していると感じたセイラさん。


「せっかくこんなに楽しくなってきたんだから、本気を出しなさい!」


「うぅぅ…。………メ、メイ。…そのぉ。前にメイの力を借りた時は、もっと凄かったよね。だから、えっと…」


 ……苦悩していますね、カーラ。


 前回私がバフを掛けてしまった時は、カーラ対レミコ様含む天使さん達。ですが、今回は1対1です。何とも言えない気持ちなのでしょうね。しかも、レベルが自分よりも低いと把握している相手に。


 …はぁ。まぁ、カーラは頼みづらそうですが、私はカーラと違って、どちらでも良いのですけどね。カーラが少しでも私の力を欲していると言うのであれば、与えてあげますよ。…もう面倒くさいですし。


『速度上昇』


 攻撃力と防御力はカーラの方が上でしょうし、これだけで十分です。


「あ、ありがとう、メイ。ごめんね」


「今日だけですからね」


「うん!次は絶対に母さんを超えるから!」


 ……つまり、『今夜も枕投げをしよう』って意味ですかね? 私の今日のストレスを、カーラにおもいきりぶつけて良いと言う事ですね。ありがとうございます。今日だけは、たっぷりと相手してあげますよ。今夜は私が満足するまで寝かせませんからね。


「母さん、待たせたね。もう負けようが無いから!」


「…えっと。…あの娘の力だったのね。…なんかごめんなさい。…本当にとんでもないバケモノなのね」


 ………ん?…今、ボソッと変な事言いませんでしたか?


 …どうしてでしょう。物凄いバケモノのセイラさんに私がバケモノと呼ばれた気がしましたよ。


 …きっと、私の耳がおかしくなったのでしょうね。私がセイラさんにバケモノ呼ばわりされるなんて、あり得ませんし。…あり得ませんよね?


 ………はぁ。


 …まぁ、どちらが本当のバケモノかなんて、私の前で繰り広がられている攻防を見れば、一目瞭然なのですけどね。素の私では目で追うのさえままなりません。私がバケモノだと言うならば、あの2人は超絶バケモノですね。


 …はぁ。早く終わりませんかね。カーラのスピードをセイラさんと拮抗する程度のしたのは失敗でしたよ。



 ♢♢♢



「メイ、あったわよ」


 私がカーラとセイラさんの戦いを見るのに飽き飽きしてきた頃合いで、ソフィーちゃんとシルフィアさんが戻ってきました。どうやら、無事に『聖剣』を見つけてくれたみたいです。


「ありがとうございます!見つかって良かったです」


「え、えぇ。…そうね」


 ……どうしたのでしょうか?ソフィーちゃんの返答の端切れが悪いですね。


「何かあったのですか?」


「…肉片がね」


 んん゛!?


 …え?


 …肉…へ…ん!?


「あらあら。ソフィーちゃん、メイちゃんが変な誤解をしてそうよ」


「え? …どういう事ですか、ソフィーちゃん」


 まさか、私は嘘を吐かれたのですかね?あのソフィーちゃんに。


「ふふっ。メイの顔が面白い事になったわね。『聖剣』の通った跡の端に肉片が残ってたのよ。ドラゴンとかドラゴンの」


「あぁ。そういう事ですか。私はてっきり……」


 はぁ、良かったです。嫌な心配をしてしまいましたよ。ドラゴンなら問題ありませんね。


 ……ん?


 ……あぁ。そういう事でしたか。


 私は知らないうちに魔物討伐をしていたのですね。お山2つ分以上の。『聖剣』がどこまで飛んだかは分かりませんが、肉片が残っていたという事は、お山を越えた先でも魔物を倒しながら飛んでいったという事でしょうね。


 …あの山に居た魔物の肉片が残っているとは思えませんし。


 これが、私が急激にレベルアップしたカラクリなのでしょうね。レベルアップ量的に、私はドラゴン30〜40匹分くらいの魔物を倒したのでしょう。…いや、あの人を倒した分の経験値もあるので、もう少し少ないかもしれませんね。


 …はぁ。素材が無いので、お金が貰えないのが残念です。肉片を拾いに行きたいとは思いませんし。


「そんな事より、あれは止めなくて良いの? …止めれるとは思えないけれど」


「…あらあら。セイラちゃんもカーラちゃんも、凄い顔ねぇ」


 ソフィーちゃんは…いや、シルフィアさんさえも、顔が引きつる程、とんでもない戦い。もはや、殺し合い。


 2人が剣を交える度に発生する突風。


「良いのですよ。死にさえしなければ、私達で回復出来るので」


「…それもそうね。あんなに楽しそうなカーラの邪魔は出来ないわ」


 寧ろ私が心配なのは、回復させた事で第2回戦が始まらないかという事ですけどね。…まぁ、私がバフを完全に解除すれば出来ないとは思うのですけどね。…カーラに泣きながら頼まれそうですけど。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ