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33話 自慢

 

 私は、翼の事は一旦保留する事にしました。


 考えたく無いという気持ちが大きいですが、それ以外にも問題がいくつもありますからね。そもそも、レミコ様が分からない時点で、私如きが分かる訳ありませんし。


 では、先ず…。


『回復』


 私は、今まで放置していたマーディルという人に回復魔法を掛けました。


 決して、このまま回復させずに死んでも良いと思っていた訳ではありませんからね。回復させる余裕もタイミングも無かっただけですから。


「…メイよ、回復させる気はあったのですね」


「ありますよ。事故とはいえ、私に原因が少しありますし」


 ほんの少しだけですが。


「え?事故?メイがやったよね?」


 ………。


 カーラは何を言っているのでしょうね。あれは事故ですよ。攻撃の余波でダメージを受ける程、あの人が脆かっただけですから。ほとんど私のせいではありません。


「…はっ! …ここは。…ひぃい、バ、バケモノ!!」


 …どうしたのでしょうかね。起きるなり変な事を言っていますよ。一体誰のことをバケモノだと言っているのでしょうかね?カーラですかね?


「メイ、ついにバケモノって呼ばれちゃったね」


 …カーラは嬉しそうに、そう言います。何が嬉しいのでしょうかね。まぁ、カーラならそう呼ばれても嬉しいかもしれませんが。 


 …はぁ。


 まさか、カーラを差し置いて、私がバケモノだと呼ばれる日が来るとは思いませんでしたよ。私は普通の女の子のつもりなんですけどね。…気持ちだけは。


「レミコ様、あの人に『妖精王』の称号が戻っている事を教えてあげてください。そして帰ってもらってください」


「そうなのですか?見てみますね」


 私の称号が失われたという事は、私の次にレベルの高い『妖精』の称号を持つ人が『妖精王』になるはずですからね。この数分の間に他の『妖精』さんがレベルを抜いていない限り、あの人がまた『妖精王』になってしまったと思います。


「本当ですね。…マーディル、帰りなさい」


「…は?」


 …レミコ様、もう少しちゃんと説明してあげましょうよ。私の事をバケモノだと思ってしまうくらい混乱してらっしゃる人に、その言葉だけで現状を把握できるとは思えませんよ。…まぁ、別に良いですけどね。後はレミコ様に任せましょう。私が行っても余計にややこしくなるだけですからね。なにせ、バケモノと誤認されていますから。


 さて、次ですね。


「カーラ、どうしましょう。『聖剣』がどこかに飛んでいってしまいました」


「…いや、どこかに飛んでいったんじゃなくて、メイが投げたんだよ?」


 ………。


 どうしてでしょうか。カーラが先ほどから冷たいです。まるで私が全面的に悪いみたいではありませんか。


 あの人が怪我をしたのは、あの人が脆かったからで、『聖剣』が飛んでいったのは、あの人が全力で来いと私を煽ったからです。あの人が私に全力で来いと言わなければ、私はその辺の石でも投げて勝っていたでしょうし、あそこまでの大怪我は負わなかったと思います。だから悪いのは殆どあの人であり、私は殆ど悪くありませんよ。せいぜい1割くらいです。


 まぁ、それを説明したところで、カーラなら『その辺の石で勝てるなんてメイは凄いね!』とか言うと思うので、言いませんけど。


 ……はぁ。


「カーラ、『聖剣』がどこに有るか分かりませんか?一応『勇者』ですし、感じ取れたりとか…」


「そんな能力ないよ。メイに出来ない事がボクに出来る訳ないじゃん!」


 ………何を言っているのでしょうかね、カーラは。カーラの中で私はどんな存在になっているのでしょう。まるで私が万能みたいではありませんか。カーラの方が私よりも優れているというのに。


 例えば…………。


 …………。


 あ、剣術とかですね!…まぁ、バフを使えば無理矢理勝つ事は出来ますけど。後は…料理とか…優しさとか?身長とかお胸の大きさも負けていますね。


 …なんだか、考えれば考えるほど悲しくなってきました。もう考えるのは止めましょう。


「ソフィーちゃんにも分かりませんか?『魔力感知』のスキルとかで」


「…そんな事しなくても、あの先にあるでしょ」


 そう言って、ソフィーちゃんは抉れた山を指差しました。


 …確かに、ソフィーちゃんの言う通りですね。『聖剣』が通った後を追えば見つかりそうです。分かりやすく地形が変わっているでしょうし。あの先に海とかがあれば別ですが。


「探すなら私も手伝うわよ」


「え!ありがとうご……自慢ですか?」


 ソフィーちゃんは、私がお礼を言おうとすると、見せびらかす様に翼を出してきました。


「え?メイも持ってるでしょ?色が変わったとか言ってたけど、なくなってはいないのよね?」


「…ええ、まあ」


 …私はソフィーちゃんにケンカを売られているのですかね?そんな可愛い翼を出しておいて、私に漆黒の翼を出せと言うなんて。間違いなくケンカを売ってきていますね。


 …はぁ。


「…『聖剣』は任せますね」


「えっ、どうしたのよ急に」


『聖剣』を探しに行くなら私が行くべきですが、今はソフィーちゃんと並びたくありません。そもそも、私は早く飛べませんし、低空飛行しかできません。怖いですからね。まぁ、走れば良いだけかもしれませんが、隣で翼を見せびらかされるのは凄く嫌ですし。


「あらあら、じゃあ私と2人で探しに行きましょうか」


「え、あ、はい」


 私の気持ちを組んでか、シルフィアさんがそう言いました。シルフィアさんは私が飛び回れないのを知っていますからね。さすがはシルフィアさんです。


 …まぁ、結果的にシルフィアさんにまで純白の翼を見せびらかされる結果になりましたけど。


「メイは行かないの?久しぶりにメイの可愛い姿が見たいなぁ」


 ……そして、またしてもカーラにケンカを売れれてしまいました。


 …はぁ。


「カーラはセイラさんと戦わなくて良いのですか?その為に来たんですよね?」


「あ!そうだった!母さん、ボクと戦って!!」


 やはり、カーラは戦闘狂ですね。簡単に話をそらす事が出来ましたよ。これでカーラが、私の翼の事を完全に忘れてくれますね。


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