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メイちゃんが大魔王になるまで  作者: 畑田
4章

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32話 自己満足

 

 私はレミコ様に問いました。もう戻れないのかと。


 私がそう聞くと、レミコ様は更に険しい表情になり、なかなか口を開いてくれません。


 …これは、無理という意味なのでしょうか。そんな事ありえませんよね?1100年以上生きている本物の大天使様なのですから…。


 ですが、結局レミコ様はなかなか答えてくれず、その前にカーラが口を開きました。


「…メイ、一体どうしたの?そんなに深刻そうな顔して」


「…少し。…いや、物凄くいじめられたのですよ」


 …そう。私はいじめられたのです。これはいじめ以外の何者でもありませんから。


「…そう、なの? …メイをいじめるなんて、凄い人が居たんだね?…ボクが倒そうか?メイより強いなら無理かもしれないけど」


 …はぁ。何を言っているのでしょうか。ですが、カーラは優しいですね。私が言った事をそのまま受け止めて、私の為に何かしようとするなんて。


 …まぁ、単に戦闘狂と言ったら、それまでですが。相手が分かるならカーラに倒してもらえるのですけどね。


「…メイよ。『堕天使』が『天使』に戻る方法が存在するとすれば、堕ちた原因を排除…元に戻せば、称号も戻るかもしれません。前例はありませんし、マリヤ以外に生きている『堕天使』は存在しないので、確認しようがありませんが」


 …つまり、マリヤさんは魔王さんと離婚すれば『天使』に戻る可能性があるという事ですかね?…さすがに、試してもらう訳にはいきませんけど。他に『堕天使』さんが居ないなら、どうしようもありませんね。


 …あまり考えたくはありませんが、言い方的に他の『堕天使』になった人は殺してしまったって事ですかね?…私も以前、マリヤさんに殺されそうでしたし。


 …はぁ。ですが、この可能性に縋るしかありませんね。それ以外の方法は思いつきませんし。


 …ですが、絶望的ですね。お山2つって、どうやったら復活するのでしょうか?


 …サクラさんの魔法で戻りませんかね?…さすがに無理ですよね。


「…ねぇ、メイ」


「はい?どうしました?」


 どうしたのでしょうか。カーラが少しそわそわしています。戦いたい衝動が襲ってきたのですかね?ずっと見ていただけですし。


「…えっと、メイの翼が黒くて可愛い翼に戻ったって事?」


 ………私は喧嘩を売られているのですかね?なんだかカーラが嬉しそうです。


「…そうですよ」


 今はその解決法を考えているというのに、どうしてカーラは嬉しそうにするのですかね?やはり、喧嘩を売られていますね。


「そうなんだ!良かったね、メイ!」


「良くありませんよ!」


 これはもう、怒って良いですよね?もう怒っていますけど。


 カーラは私の涙を見たくせに、そういう事をほざくのですね。…カーラに悪意が全く無いのは分かりますが。


 …はぁ。


「カーラ、私は純白の翼を手にいれる為に天界に行っていたのですよ。それは理解できていますか?」


「…え、うん?」


 …理解していない様ですが、続けましょう。カーラでも少しは理解してくれる部分があるかもしれませんし。


「そして、やっとの思いで手に入れたので、戻ってきました」


「…うん」


 …やはり、理解してくれないでしょうね。カーラは最初から漆黒の翼の方が可愛いと思っていますから。私の気持ちなんて、理解できないのでしょう。


「私は、カーラ達に会いたくても我慢して、翼が変化するまで天界に居たのですよ。明日になれば翼が純白になる。そう思いながら何日も何日も」


 最初は、1週間くらいなら…と思いつつ、明日こそ、明日になればと。諦めようかとも思いましたが、日にちが経つほど、今までの我慢が無駄になる気がして。


「私は、カーラやサクラさん、キャルシィと会いたいのを我慢して5年も耐えて、ようやく手に入れたのですよ?」


「え!うん!にひひっ」


 …ん?


 カーラは私の話を聞いていないのですかね?急に気持ち悪く笑い出しましたよ。頭がおかしいのですかね?私の苦労は笑うほど面白いのですか?ふざけているのですか?


「…カーラ、ちゃんと私の話を聞いてくれていますか?」


「うんっ!メイもずっとボクに会いたいって思ってたんだよね!」


「…まあ、そうですね」


 そこは否定しませんが、カーラはそこしか聞いていないのでしょうか。大事なのは、そこでは無いのですが。


「いひひっ、嬉しいな!メイはボクの事が大好きなんだね!」


「……好きですよ。カーラもサクラさんもキャルシィも。だから会いたいのを我慢してまで手に入れた純白の翼が、漆黒の翼に戻ってしまったと言う話で…。ちょっ、何なのですか急に!」


 すると、何を思ったのか、カーラは急に私に飛びかかってきました。


 何なのですかね、本当に。慰めようとしている訳ではなさそうですけど。


 私はカーラを押し除けようとしますが、離れてくれません。


「メイ!嬉しいよ!ボクもメイが大好きだよ!」


「…そうなのですね。離れてください」


 そんな事言われなくても分かっていますよ。…つまり、カーラは私の話を切り取って良いように解釈したのですね。


 …はぁ。私はカーラの気持ちを分かっていますが、カーラは私の気持ちを分かってくれません。


「カーラ、よく聞いてください。カーラは漆黒の翼の方が良いのかもしれませんが、私は純白の翼の方が良いのです」


「うん、メイはどっちでも可愛いよ!でもメイには黒の方が似合ってるよ!」


 …………え?


 ……そうなのですか?


 私って、純白より漆黒の翼の方が似合っているのですか?


 …え?


 …カーラの好みってだけですよね?…まぁ、他の人に確認すればカーラがおかしいだけだと分かりますね。


「…レミコ様、私には漆黒の翼の方が似合っているのですか?」


 カーラの戯言ですが、間違っているという確証が欲しいですからね。


「…まあ、どちらかと言えば…ですが」


「んな!」


 まさか、レミコ様までカーラと同じ感性とは…。レミコ様も感覚がおかしかったのですね。


 …あと、この中で私が漆黒の翼を出しているところを見た事があるのは、シルフィアさんだけですね。さすがにシルフィアさんは違いますよね?


「…えっと、シルフィアさんはどっちが似合うと思いますか?」


「あらあら。カーラちゃんが言う通り、メイちゃんはどっちでも可愛いわよぉ。まぁ私は黒い翼のメイちゃんを見慣れてるから、黒の方が違和感が無いかしらねぇ」


「んなぁぁあ!!」


 …そ、そんな。


 …え?という事は、この5年間は私の自己満足だったという事なのですか?


 いやいやいや!違いますよ!


 あ!サクラさんは漆黒よりも純白の翼の方が良いと言ってくれましたから!


 …あ、ですが、それはサクラさんが翼を得られるならどっちが良いかという話でしたね。…そういえば、私は誰からも純白の翼の方が似合っていると言われた事がない気がしてきました。


 …違いますよね?私には漆黒の翼の方が似合うなんて嘘ですよね?


 ……………。


 …いや、私は何を無駄な考えをしているのでしょうか。私自身が純白の翼の方が似合っていると思っているなら、それで良いではありませんか。他の人がどう思っていようと、関係ありません。


 私には純白の翼の方が似合います。それで良いではありませんか。


 …はぁ。話が無駄に逸れてしまいましたよ。もうこの話は止めましょう。


「レミコ様、あの山はどうやったら戻りますか?」


「…数百年か数千年か経てば、自然と回復すると思いますよ」


 …はい、詰みましたね。


 …いや、詰んではいないかもしれませんけど。私はいつ死ぬか分かりませんし。


 …はぁ。もう最悪です。みんなが私には漆黒の翼の方が似合うなんて言いますし、戻せる見込みがありませんし。


 …一旦忘れましょう。後でサクラさんに相談しますかね。サクラさんが、この世界で一番頼りになりますし。



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