27話 暴走
セイラさんは、カーラのお父様がカーラを呼んだ事で、カーラの顔を凝視しました。
「え?カーラ? …カーラ!!カーラなのね!!」
そして、セイラさんはカーラが自分の娘だと気づいた様で、カーラの名前を呼びました。…レミコ様に抱きついたままですが。
まぁ、いくら自分の娘でも、1113年ぶり?のレミコ様と、せいぜい十数年ぶりの娘では感動度合いが違うのですかね?カーラのお父様も一緒に居るという事は、会おうと思えば会いに行ける状況だったと思いますし。
…それでも、カーラが少しだけ不憫に思ってしまいますね。
「…えっと、母さん。…なの? …生きてたんだね」
「え?生きてるわよ? …あ!…いや、あのね。カーラにも本当の事を伝えるべきだったんだけど、生きてるのに死んだ事にしたら、誰かに聞かれた時にカーラが対応に困るかなって。カーラは嘘が吐けないから」
セイラさんは、一瞬、何を言っているのだろうかという顔をしましたが、自身が死んだ事にしていた事を思い出したかの様子で、あわあわしながらカーラに言い訳を述べました。
きっと、何かしらの理由で、死んだ事にするしかなかったという事なのでしょうね。そして、カーラの為に嘘を吐いていたと。カーラは昔から素直で嘘が吐けない性格だったのでしょうからね。
「よく分からないけど、母さんが生きてて嬉しいよ!」
「私も会えて嬉しいわ!大きくなったわね、カーラ!」
…良いですね、感動的な再会。…と思いたいのですが。
「…そう思っているのなら、娘を抱きしめるくらいしたらどうなのですか?」
そうなのです。レミコ様の言う通りですね。相変わらずセイラさんは、レミコ様に抱き付いたままですからね。
「いや、ですけど、私は今、レミコ様に抱き付いているのですよ。こんな幸せは一秒でも長く感じたいのです。カーラには…もう少ししたら会いに行く予定でしたし!!」
「それでもです。離れてください」
「嫌です!もう少しだけ!」
♢♢♢
「改めて、私はユリアール・セイラよ。ニーズの妻でカーラの母親。そしてレミコ様を愛しているわ!」
レミコ様に、ほっぺをつねられて少し涙目のセイラさんは、堂々と二股宣言の自己紹介をしてきました。それと、カーラのお父様はニーズというお名前だったのですね。知りませんでした。
「あらあら、セイラちゃんはニーズちゃんを愛すると誓ったわよねぇ。嘘だったのかしらぁ?」
「…誰、この子。なんでその事を…。はっ!ズバリ、カーラの娘ね! …お相手は…そっちのピンク色の髪の娘…いや、そっちの小さい娘かしら?」
…何を言っているのでしょうか。小さいとは私の事でしょうか?失礼だと思いますよ?
まぁ、シルフィアさんみたいに可愛い娘が娘というのは悪くない気もしますが、元神官様なので畏れ多いですね。
…しかも、カーラは満更でも無い顔をしていますし。ソフィーちゃんも。…ソフィーちゃんはカーラの嫁なので、その一点だけは間違いないですけど。
しかし、セイラさんの暴走は、それで収まらず…。
「…まさか、レミコ様じゃ無いわよね?もしそうだったら、娘でも許さないわよ?」
「あらあら。セイラちゃん酷いわぁ。私の事を忘れてしまったのかしらぁ? あの時は協力してあげたのにぃ」
「…え?」
シルフィアさんは、わざとらしくそう言い、悲しそうな顔をします。シルフィアさんは姿が生前とかなり違っているので、普通は気づけないにも関わらず。
まぁ、シルフィアさんもそれが分かっている様子で、直ぐにいつも通りの優しい表情に戻りましたが。
「…誰なのよ。あの時っていつ?」
「…あらあら」
…シルフィアさんは『あの時』と濁していますが、おそらくセイラさんが死んだ事にした時ですよね?そこは私でさえ予想がつきますよ。
…いや、私が予想出来たのは、シルフィアさんが元神官だと知っているからだからかもしれませんね。カーラのお母様ですし、その前提が無いと分からないかもしれません。
ですが、『堕妖精』という事は、『賢者』の称号を得ていたという事ですよね?だったら、頭が良さそうなイメージがありますけど。たとえ、カーラのお母様であっても。
…いや、違いますね。『賢者』は関係ありませんでした。私は頭が良く無いですもんね。怖がるソフィーちゃんを守るだけで貰えましたし。
賢い者と書いても、所詮は称号ってだけですし、賢いとは限りませんもんね。私が『聖女』っぽくないのと一緒で。つくづく思いますが、私には似合わない称号ばかりです。
「セイラちゃん、私の名前はシルフィアよ。私も『天使』になって新しい生を頂いたのよぉ」
「「「え⁉︎」」」
そして結局、セイラさんはシルフィアさんの正体が分からず、ネタバラシをしてしまいました。
そして、家族みんな仲良く驚きました。
…いやいやいや、おかしいですよね?どうしてカーラまで驚いているのでしょうか?ランキングが楽しみすぎて、教会でソフィーちゃんとシルフィアさんが会話しているのを聞いていなかったのでしょうか?
…カーラならあり得ますね。カーラですから。




